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【たま~に80台で回りたいッ!】Vol.18「戦国時代の戦術から考える“ゴルフの撤退戦”」

飛距離が出なくても、練習量が少なくても、たま~に80台で回るゴルフは十分に可能! コラムニストの木村和久がシニアのための89ビジョンを指南。

ILLUST/Shinichi Hoshi

>>前回のお話はこちら

今回は戦国時代の戦術から、ゴルフの撤退戦を考えます。これは勇猛果敢なことをしろというのではなく、むしろ逆で「いかに叩かないで済ませるか」という考え、気づきの話です。

たとえば織田信長が浅井、朝倉連合軍に包囲されたときは『金ヶ崎の退き口(のきくち)』と言われ、速攻退却しています。逸話では浅井に嫁いだ妹のお市が戦勝祈願の名目で、信長に小豆袋を送りました。信長は両方がひもで結ばれた小豆袋を見て「これは袋のねずみ、逃げ道はない」と浅井の裏切りを悟り、撤退を決断したというのです。

というわけでまずはこれです。


ドライバーの撤退戦

ドライバーはスタートホールから活躍する頼もしいクラブですが、いきなり試練がやってくるときがあります。自分の経験上10ラウンドに1回ぐらい、ここドライバーで打つのか? というスタートホールに遭遇します。場の流れ、朝のスタートの盛り上がりに押されて、ドライバーを替えにくい。

もし他の短いクラブに替えたら「朝から何を狙ってるの?」「ひとりだけマジなヤツがいる」「和やかな空気読めない人ですね」と口攻撃がすさまじいです。

しかもスプーンで打ってOBになったらいい物笑いの種。難しいホールは、攻めるも引くも地獄です。個人的には、最近スプーンの練習をしているので、迷わずスプーンで打ちます。そこはやはり自分の信ずる道ですよね。

あとドライバーが満遍なく調子悪いときがあります。球筋が安定してない、左右どっちにもブレるとかね。それで案の定、OBやワンペナになったら、速攻替えて短いクラブで打ちますね。

これは武田勝頼が織田・徳川連合軍に惨敗した『長篠の戦い』を思い出してください。馬防柵(ばぼうさく)を前に騎馬武者は続々討ち死に。1回攻めれば無理ってわかるでしょう。けれど「三段撃ち」の鉄砲隊と誰も戦ったことがない。結果、武田は同じ戦術で何度も挑み、滅びたのです。

ドライバーを打って、明らかなミスショットをしたら、すぐ替えないと。ほかにもコースレイアウトに翻弄され、ショットが乱れる場合があります。そういうときも迷わずチェンジ。だから日頃、短いクラブでティーショットを打っておくのは大事です。これができれば、スコアアップしますよ。

林の中からの撤退戦

最近はドライバーの飛距離が衰えたのか、林の中の奥までボールが飛ぶことはなくなりました。とはいえ林間コースでのトラブルは、ビッグイニングにならないように心掛けたいものです。

林の中のボールはとにかく1回で出すのが鉄則。なるべくピン方向へ打ちたいとスケベ根性が出るから、さらに叩くんですね。真横に出せれば御の字、最悪後方に出しても構いません。

頭の中では、諦めずにいかにボギーを取るかを考えがちです。これが間違い。我々はボギーがパーです。だから1回林の中にボールを入れてミスをした。この段階でダボを取りにいく戦術に切り変えるべきです。

400ヤードのパー4で林に入れた。ボールを曲げたのですから飛距離150ヤードがいいところでしょう。そこから横にボールを出せば、残り250ヤード。これを2回で乗せる戦略が必要です。

運よくグリーンに乗ったとしてもスリーパットをすればトリプル。撤退戦は、最悪トリプルまで起こると想定して、ボールを林から出すことです。

突発性ミス、シャンクなど

ラウンド中いきなり、あり得ないシャンクやヒール球、チーピンが出る場合ありますよね。多くの人は持病を持っていて、しばらく落ち着いていたが、何かの拍子で出たのです。さあどう撤退するか?

これは問題が起きたクラブで、その日のうちは同じショットをしないことです。シャンク歴30年の私に言わせますと、もうその日は怖くて打てないですよ。

例えばSWで50ヤードを打ってシャンクをした。バンカーショットならともかく、アプローチは他のPWなどで打つしかないです。

いろんな過去のつらい思い出というか、その日に2回、3回とシャンクが続いたことがあるので、打たないほうが良いのかな、と。

身内のラウンドで叩いても笑ってくれるとか、昼休みに練習場でSWを打ってからならありです。

ゴルフはいかに傷口を浅くして撤退するか、これも立派なコースマネジメントですよ。

教える人/木村和久

「89ビジョン」をはじめ様々なゴルフの楽しみ方を提案するコラムニスト。ベストスコア75。01年鶴舞CCキャプテン杯優勝。ゴルフ歴は35年。現在は扶桑CCのメンバー

週刊ゴルフダイジェスト2025年7月29日号より