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ゴールにたどり着く道は“ひとつ”ではありません

TEXT/SHOTANOW

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

「理想のスウィング」は、選手によって違います。それは骨格や筋力が人それぞれで、リズム感や力の出し方にも個性があるからです。だから、個人的にはこれを目指せば完璧という「誰にでも合う理想形」というのはないと思います。

そしてスウィングと同じく、「成長の過程」にも理想形はない。持っているポテンシャルや置かれた状況、性格などによって成長の仕方は変わってくるのです。

でも、以前の僕は、みんなが同じような道をたどって成長すると考えていました。基礎をマスターし、応用的な技術を順に身につけていく。その過程でスウィングやコースマネジメントなどの自己理解を深めていく、と。そんな理想の一本道を描いていましたが、実際には選手の成長スピードはバラバラ。できる子とできない子の差はあるし、こちらの思い通りに次のステップに進まないこともザラでした。

僕は、スウィングは人によって違うと分かっていたのに、成長の過程は、みな同じと思っていたのです。でも、僕の思っていたタイミングや順番でなくても、着実に成長する子たちを見て「決まった道はない」ということに気づけました。

いま、僕がコーチをしている梶谷翼はオーガスタ女子アマを制したトップレベルの選手ですが、自分のスウィングに特にこだわりを持っていません。試合後に振り返りをすると、攻め方や考えていたことについては話しますが、自分のスウィングについて言及することがないのです。

以前の僕であれば、このレベルなら自分のスウィングの理解度を高めなくてはいけないと思ったかもしれません。でも翼は、コースに出れば形ではなく攻め方やゲームメイクしか考えていない。それが彼女のゴルフで、そのなかでもしっかりと成長することができています。

目の前のできたほうがいいことにとらわれず、どこを目指しているのかを頭に置き、本人に合った形を探してあげるのがコーチの役割だと思っています。

「スウィングの形」も「成長の過程」も人それぞれでOK(PHOTO/Takanori Miki)

青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2021年5月4日号より

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