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陳さん語録<後編>「トラブルになったら“遊び”にしちゃう」

KEYWORD 陳清波

先月、93歳で永眠した陳清波プロ。日本のゴルフ界をリードしてきた陳さんの“研究成果”を長年取材してきたゴルフライターの塚田賢氏に書き綴ってもらった。

TEXT/Ken Tsukada PHOTO/Tadashi Anezaki、Tsukasa Kobayashi、本誌写真部 THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

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  • 今年1月、93歳で永眠された陳清波プロ。日本のゴルフ界をリードしてきた陳さんだが、「私もまだ、わかっていません(笑)」と晩年になってもゴルフの勉強、研究に余念がなかった。そんな陳さんの“研究成果”を長年取材してきたゴルフライターの塚田賢氏に書き綴ってもらった。 TEXT/Ken Tsukada PHOTO/Tadashi Anezaki、Tsukasa Kobayashi、本誌写真部 TH……

「18ホール全部で頑張ったらね、頭から煙が出てくるよ。
トラブルになったら遊びにしちゃうの」

18ホールも回ると1ホールか2ホール、必ずトラブルになるホールが出てくる。そんなとき陳さんは遊びのホールにする。

「遊びというと何か変な表現だけども、このホールは捨てちゃおうと、ボギーでいいやって考えるわけね。だから絶対に無理しないの。すると気楽にプレーできるから、意外と次のホールがバッチリやれるんだね。

それを頑張って頑張ってボギーを出したら、次のホールもまたボギーになるんだよ。頑張っただけのものが出てくるかというと頑張りが裏目に出たりするんだねえ」


「ゴルフはミスのゲームなんだから、
ミスしても堂々としていればいいのよ」

ミスはみんながやること。だからミスしても恥ずかしがらず、慌てずに。ボールを林の中に打ち込むと、クラブを持って走っていく人が多いけれど、心臓バクバク状態でボールを打ってもまたミスが出るだけ。だから陳さんは「そんなことやめなさい」と。

ボールを曲げても「テンポやリズムといったものを絶対狂わせないように、いつもと同じ速さで歩く」ことを陳さんはいつも勧める。

「バンカーショットほどフットワークを使うショットはないの。
手打ちでいいなんて、私は教えたことないよ」

昔からグリーン周りのバンカーショットは手打ちでいいと言われてきた。しかし陳さんに言わせると逆。

「どんなに短い距離でも手打ちじゃボールは上がらないよ。フットワーク使わなくちゃ砂の重さに負けてヘッドが抜けないんだ。それにフットワークを使わないとダウンブローは成立しないの。バンカーでは砂の面より下にヘッドを打ち込まなけりゃいけないんですから、普通のアプローチショットよりもっとフットワークを使わなくちゃいけないんだよ」

「高い球は誰でも打てるんだ。でも低い球は打てないの。
だから低い球を打つのが本当の、そして最高のテクニックなんだね」

陳さんは、ロフトの多いクラブほどしっかり打たなくちゃいけないと忠告する。ボールを拾うように、あるいは掃くような感じで打とうとするとダフリとハーフトップが多くなるから、しっかりダウンブローに打つべきだと。

「ダウンブローに打つとはハンドファーストで打つこと。ダウンスウィングをグリップエンドからリードしてきて、手がボールの上を通り過ぎてからヒットするのがハンドファーストですから、ロフトが立ったインパクトになるわけ。ウェッジが9番とか8番とかにね。だから低いボールが出るんだ。これはボールをつかまえた証拠よ。つかまえたらなんでも細工できるから強いんだよ」

「低いボールを身に付ける練習は練習場の
2階打席でやるに限るんだよ。1階じゃ難しい」

陳さんの真骨頂となる弾道の低いボールはどこでどうやれば身に付けられるのか。その答えがこれだった。

「2階打席なら下に空間がありますから低いボールを打っても安心なんだよ。打ち方を教えれば覚えが早いし、すぐ身に付くの。1階打席はボールが地面を這うように飛んでいくためトップボールを打っているように感じるんだね。だから、なかなか低く打てないし身に付かないんだ」

低いボールは、ウッドもアイアンもボールを低いティーでティーアップして、ボールの先のマットをソールで削るように打つこと。左への体重移動をしっかり行いながらクラブをダウンブローに振り、ハンドファースト状態でインパクトすることで打てるようになる、と陳さんは説明する。

陳清波の1Wスウィング(2016年・85歳)

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陳さんは80歳を過ぎてもグリーン周りからランニングアプローチでボールをカップに寄せる練習をよく行っていた。

「ウェッジからロングアイアンまでいろんなクラブを使ってさ、同じ場所からボールをキャリーさせる距離とランで転がる距離をしっかり計算しながら打つわけ。ボールはね、上げるより転がすに限ると思うよ。ま、それがゴルフの原点だしね」

陳さん、なかなか蘊蓄のあることを言う。もっともっと話を聞きたかった……。

月刊ゴルフダイジェスト2025年4月号より