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【間違いだらけのゴルフ英語】<後編>スライスライン、アゲンスト、ショットインイーグル…通じない英語はこんなにあった!

普段当たり前のように使っているゴルフ用語だが、中には日本でしか通じない“和製ゴルフ英語”も少なくない。引き続き、ゴルフ英語研究家の村越秋男さんに教えてもらおう。

TEXT/Toshiaki Muraki

解説/村越秋男

むらこし・あきお。30年以上PGAツアーの放送を英語音声で視聴し続ける、正しいゴルフ英語の研究家。「世界に通用するゴルフ英語596選」など著書多数

>>前編はこちら

スコアアップといえば、日本ではスコアがよくなることとしてよく使われている言葉だが「日本とアメリカでは、アップ・ダウンが完全に逆の意味になります。『ハイスコア(high score)』は悪いスコアで、スコアが72から75や80に増えることをアップ(up)すると言うんですよ」(村越)

カタカナ化することで日本語となり、日本語の語感で「アップ」「ハイ」がプラスのイメージを持つようになったのだという。「ゴルフネットワークを視聴できる環境にある読者は、30分でもいいので副音声で本物の英語の中継を聴いてみていただきたいですね」

ゴルフはグローバルなスポーツだが、外国人と円滑なコミュニケーションを取るためにも、海外で一切通じない和製英語ではなく、正しい表現を知っておけば、いざというときに役立つだろう。

和製ゴルフ英語③
スライスライン/フックライン

スライスとフックは空中を飛んでいくボールの現象であり、パットがスライス・フックはしない。グリーン上でも左右に曲がる現象として使われるが、これは誤った表現になる。いわゆるフックラインは「right to left break」。「右から左への曲がり」という意味になる。いわゆるスライスラインは「left to right break」。「このパットはスライスするでしょう」は「This putt will break left to right.」

和製ゴルフ英語④
アゲンスト/フォロー

向かい風、追い風を指す表現だが、これは「英語として通じない(理解されない)造語」の例。確かに「against」は「〜に逆らって」を意味する前置詞だが、名詞的には使わない。英語ではプレーヤーが主語となり、いわゆるアゲンストは「hit into the wind(風に向かって打つ)」と表現する。追い風の場合は「hit with the wind(風とともに打つ)」となる。名詞では向かい風は「head wind」、追い風は「tail wind」と言うが、ゴルフではめったに使わない。


和製ゴルフ英語⑤
オーバードライブ

これは「英語の意味を誤解・誤用している表現」。英語の「overdrive」にある「over」は「〜し過ぎ」というミスの意味を含んでしまうため、車に当てはめるとスピード違反になってしまう。ゴルフで「overdrive」を使うと、「飛ばし過ぎ」て「グリーンを飛び越した」「フェアウェイを突き抜けた」というミスショットの表現になる。「他人よりボールを遠くに飛ばす」表現で用いるのは「outdrive(アウトドライブ)」

和製ゴルフ英語⑥
フェアウェイキープ

「フェアウェイをキープする」を英訳すると「keep the fairway」だが、この英語表現は「フェアウェイを維持管理する」という意味になり、これはゴルファーではなくグリーンキーパーの役目である。日本でいう「フェアウェイをキープする」の正しい英語の表現は「hit the fairway」で、「グリーンをとらえる」も「hit the green」。「フェアウェイキープ率」と言う代わりに「フェアウェイヒット率」と言えばいいだろう。

和製ゴルフ英語⑦
ビッグスコア

海外参戦中の日本人選手が、60台前半の好スコアで回ったときに使う「big score」。だが村越さんはこの表現を聞いたことがないという。「ネットで『big score』と入力して出てくるのは、『タイガーが80を打ったらbig scoreになる』『アニカ・ソレスタンムが94のbig scoreを叩いた』といった悪いスコアの話です」。日本では「big」「high」をいい表現で使いがちだが、どちらも「score」につけると大叩きになってしまう。

和製ゴルフ英語⑧
シングル

“single golfer”という英語の意味は「1人で回っているゴルファー」で、ハンディキャップの話ではない。ハンディキャップの意味で使うときは「single digit」(digitは「桁」)と言わなければならない。また、アメリカ人は「ひと桁」ではなく“He is handicap 8.”といったように具体的な数字を言う。「彼はシングルだ」を“He is single.”と表現すると、「彼は独身だ」という意味の英語になるので注意が必要だ。

和製ゴルフ英語⑨
ショットインイーグル

「パー4の第2打、パー5の第3打がそのままカップインしてイーグル」という意味だが、英語では「hole out eagle」と表現する。1月のPGAツアー開幕戦のザ・セントリー最終日、パー4で松山英樹が第2打をカップに放り込むイーグルを奪取。その映像をアップしたゴルフチャンネルのユーチューブのタイトルは「Hideki Matsuyama HOLE OUT EAGLE」だ。「日本でのホールアウト、『18ホールのプレーを終えて上がる』も間違いではありません。でも『ショット・イン・イーグル』は誤りです」

和製ゴルフ英語⑩
ドライバー・イズ・ショー
パット・イズ・マネー

日本でもっとも有名なゴルフ格言の1つになるのだが、全英オープン4勝の経歴を持つ南アフリカ出身のプロゴルファー、Bobby Locke(ボビー・ロック)の言葉を改ざんしたのだという。「彼が言った“You drive for show, but putt for dough.”を日本人にもわかるように、誰かが勝手に書き替えたものと言えるでしょう。第一、英語として正しい表現ではありません。本物の文章は、『ショウ』『ドウ』と格言らしく韻を踏んでいる点が格調高い」。「dough」は「パン生地」を意味する英単語だが、俗語では「カネ」を表す。

週刊ゴルフダイジェスト2024年2月25日・3月4日合併号より