【陳さんとまわろう!】Vol.258 私のアドレス。教えたくない秘密の構え方なんです(笑)

ドローボールが持ち球の陳さん。多くの人とは違ったアドレスでの立ち方をしているという。
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

左肩を目標に向けて
構えていく
――ドローヒッターの陳さんに、フェードボールを打つときの立ち方やボールの位置、ティーアップの高さについて前回話してもらいました。今回は通常の立ち方を紹介してもらいましょうか。
陳さん はい。私の立ち方はみなさんと違っていると思いますがね。みなさんはボールと目標を結んだ線に両足の線を平行に合わせることから始めるんでしょ。ボールの先に目標の目印になるスパットを見つけて、そのスパットとボールを結んだ線に平行に立つ。そうすることで目標にスクエアに構えたことになるって考えているみたいですからね。
――そういう方法で構えるのがいいと、昔から多くのプロの方から指導されて育ちましたから(笑)。
陳さん アハハ……。でもそうやって構えると私はボールが打てなくなるんだ。私はボールの先にスパットなんて見つけないし、だから平行にも立たないの。じゃあどうやって立つんだ、構えるんだっていったら、目標にスタンスの線を合わせて構えるんだね。いやいや、スタンスの線というと誤解が生じるかな。正確に言えば肩の線。左肩を目標に向けて構えるの。そうすると打てるんだ。自信を持ってドローボールが打てるわけよ。
――それは初めて聞く立ち方、と思う人が多いんじゃないですかね。
陳さん そうでしょ。本当はこれ、他言したくない秘密の構え方なんだ(笑)。でも私がレッスンする生徒さんたちには教えますよ。生徒さんにはクラブをスクエアグリップで握って、ドローボールが打てるように教えている関係で、この立ち方は必須ですからね。
――ボールと目標を結んだ線に平行に構えるとボールが打てなくなるという理由は?
陳さん それはね、平行に構えると目標に対して体が開いて立つことになるからなんですよ。私は持ち球がドローボールなんですから、目標の少し右にボールを打ち出す必要があるんだ。それなのに目標の左を向いて構えたらどうなる? ボールの打ち出す方向と構えがメチャクチャになっちゃうじゃない。だから打てなくなるんですよ。
――平行に構えると体が開くというのはどういうことなんでしょう。
陳さん 足元で平行に合わせると、ボールと体の幅をそのまま目標まで持っていきがちだからですよ。ドライバーの場合、ボールと目標を結んだ線と両足の線との幅が1m20㎝ぐらいあるでしょ。この幅をたとえば250Y先でもそのまま作る人がほとんどだと思うんだね。そうするとそれは250Y先ではボールと目標を結んだ線より1m20㎝の何倍もの幅が開いていることになるんですよ。だから目標のずいぶん左を向いて構えていることになるんだ。
――目標とボールを結んだ線とスタンスの線を2本の線路と考えると、250Y先では先細りになって幅が狭くなりますね。
陳さん はい、狭くなる。でも平行に構えた人が、1m20㎝幅をそのまま目標に持っていったら、先細りじゃなくて先太りで構えることになるんだ。これは目標に対して体を開いて構えることになるじゃない。これじゃあドローボールを打つ私にはとても打てる構えじゃないわけよ。だから私は左肩が目標を指すように立つの。これ、簡単なようでいて、案外難しいみたいよ。

陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2025年3月号より