【名手の名言】小松原三夫「上半身を回すときは、背中の赤ちゃんをやさしくあやすようにね」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回はティーチングプロとしてお茶の間でも人気を博した小松原三夫の言葉をご紹介!
上半身を回すときは
背中の赤ちゃんを
やさしくあやすようにね
小松原三夫
長くゴルフを嗜んでいる人にはお馴染み、1970年代~80年代の伝説的ゴルフ番組「小松原三夫のゴルフ道場」。プロゴルファーでありティーチングプロとしても知られる小松原三夫がホストを務めたゴルフのテレビ番組で、小松原のゴルフ指導哲学を基に、初心者から上級者まで幅広い視聴者に向けたレッスン形式で進行され、多くのゴルファーから支持を得た。
番組では、小松原三夫が出演者や視聴者に対してゴルフ技術を直接指導した。スウィングの基本からショートゲーム、コース戦略まで幅広いテーマを扱い、実践的な内容が多かった。特に、視聴者が自宅や練習場で試せる具体的なドリルやトレーニング方法を紹介した点が好評だった。
また、単に技術を教えるだけではなく、小松原が長年培ったゴルフ哲学やマナー、スポーツマンシップも重要なテーマとして取り上げられた。ゴルフを通じて礼節や品格を学ぶ姿勢が強調され、ゴルフを「人生の縮図」として捉える小松原の価値観が色濃く反映されていた。「小松原三夫のゴルフ道場」は、日本におけるゴルフ人口の増加に大きく貢献した番組といえる。
さらに、その人気の源は、レッスンを表題の言葉のように日常のやさしい喩えで表現したことだろう。
「グリップはまな板で大根を切る包丁のように……」
などもその類。生っ粋の江戸っ子で、ベランメェ調をNHKのアナウンサーが使う敬語に徹底してふりかえた。師範代、大古清プロとのかけあい口調は流行語とさえなった。
日本プロゴルフ界を勃興させた、トラさんこと中村寅吉のいる砧コースで育ったが、腕前は天と地ほど。トラさんから「しゃべりがうめぇーし、人あたりも柔らけぇから女性教室でもやれや」と勧められたのがきっかけだったのだという。
小松原三夫は、ゴルフを単なるスポーツとして捉えるのではなく、「人生の縮図」として教えた。ゴルフには、人間の性格や生き方が表れるという考えを持ち、プレー中の態度やマナーを重視したという。また、ゴルフを通じて得られる仲間との交流や礼節の大切さを説き、ゴルフを愛する多くの人に影響を与えた。
「バラさん」と長く親しまれた小松原三夫の遺した教えや哲学は、現代のゴルフ指導にも脈々と受け継がれている。彼の指導スタイルは、単にスコアを伸ばすための技術を教えるだけでなく、ゴルフを通じて人間性を高めることに重きを置き、多くのプロゴルファーやアマチュアにとって今でも重要な指針となっている。
■小松原三夫(1917~2013年)
こまつばら・みつお。東京生まれ。1955年、プロゴルフライセンス取得。プロ修業した砧コースにはゴルフW杯に勝ち、日本ゴルフ界に君臨した中村寅吉がいた。この人には逆立ちしても勝てないと競技ゴルフをあきらめ、ティーチングプロの道へ。東京12チャンネル「小松原三夫のゴルフ道場」でブレーク。日常言葉でのやさしいレッスンでゴルフの大衆化に一役も二役も買った。ティーチングプロ一筋に生き、95歳で没。その通夜は番組スタッフの同窓会の様相だったという。