【イザワの法則】Vol.48「コースで使える」技術は“遊び”の中で培う
練習場でもコースでも同じ球を打てるプロと、練習場でできたことがコースでできないアマチュア。両者は何が違って、どうすれば「コースで使える技術」が身につくのだろうか?
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
コースの様々な状況に対応するには
「イメージ力」が必要
「練習場シングル」という言葉があるように、練習場ではすごくいい球を打つのに、本番になるとその球が出なくなってしまう人がいます。もちろん、足元が平らで、セットアップの目印になるものが多い練習場と、必ず何かしらの傾斜があって、目標も自分でしっかり決めなくちゃいけないコースとでは、状況がかなり違います。言ってみれば、コースは応用問題の連続なわけですが、応用問題を解くには、まずは基礎力がどれだけ備わっているかが大事で、そのうえで「こうしたら多分こうなる」というイメージの力が必要です。
わかりやすいのは、たとえば林の中にボールが入ってしまったとき。木と木の間を通すとか、低い球で枝の下を通すとか、状況によってやるべきことは変わってきますが、「枝の下を通す」という練習を普段することはないですから、使う番手と打ち方によって出る球をイメージして、「これだったら枝の下を通せる」という、ある程度の確信が持てたところで実際にトライするわけです。ある程度の「確信」の目安は、大体「成功率7割」といったところでしょうか。今まで一度もやったことがない打ち方にチャレンジするのは、成功率がまったくわからない「ギャンブル」ですので、それだと、トータルで考えたときに「負け」が多くなり、スコアを縮めることは難しいということになります。
曲がるメカニズムがわかれば
曲げずにも打てる
アマチュアの方のプレーを見ていると、時々、その方向にそのクラブで打つのはちょっと無理じゃないかと思うような選択をして、結局失敗してしまうケースがよくあります。ただ、これはそれ以外の選択肢を持っていないからということも多いです。どういうことかというと、たとえば、フェアウェイからでも前方の木が邪魔になって、グリーンが狙いづらいということはよくありますが、そういうときに同じクラブでも高さを変えて打ったり、球を曲げて狙ったりという選択肢がないわけです。だから、イチかバチか、木の方向を目がけて真っすぐ打つしかない。練習のときに「遊び」のつもりで、いろいろな球を打っておくと、こういうときに役立ちます。
タイガー・ウッズが、グリーン周りで何気なくポンと球を打って、その球に次の球をぴったりくっつけるという「遊び」をやっている、わりと有名な動画がありますが、そういうことを普段からやることで、技術の引き出しはどんどん増えていきます。まあ、タイガーのアプローチは遊びというにはレベルが高すぎますが、たとえば練習場でわざと大きめのフック、スライスを打って、どれだけ曲げられるかという「遊び」なんかは、実戦的でかなり役立つ練習だと思います。大きく曲げることで、球が曲がるメカニズムがわかりやすいし、逆に曲がりを抑えるにはどうすればいいかということもわかってくるので、ぜひ試してみてください。自分の息子にも「球を曲げる練習をするといい」とずっと言っているのですが、ただ、実際にやっているところは一度も見たことがないですね(笑)。
「『遊び』の練習は気持ちに余裕を持って
楽しみながら取り組むべき」
“7割成功”の自信があればいける!
普段からわざと大きく球を曲げる練習をすることで、どうすればボールが曲がるのか、あるいはどうすれば曲がらないのかが実感としてわかり、コースでの様々な状況に対応しやすくなる(曲げる練習はアイアンで行う)。真っすぐ打つだけが練習ではない
伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2024年11月号より