【ゴルフイップス解体新書】#4 <自己暗示型>“思い込み”が体を動かなくする!?
忌まわしい「イップス」の原因と対処法について、メンタルコーチの石井亘氏が徹底解説する「ゴルフイップス解体新書」。イップスには大きく分けて3つの原因があると石井氏は分析するが、そのひとつが「自己暗示型」。このタイプは比較的すぐに治る可能性があるというが、その真意とは?
GD 今回はイップスの3つの原因のひとつ、「自己暗示型」について詳しく教えていただければと思います。
石井 わかりました。正確には「マイナスの自己暗示型」という呼び方が良いと思っています。
GD マイナスということは、プラスの自己暗示型であれば問題ないということですね。
石井 はい。ですがマイナスとプラスは表裏一体。ところでGDさんは催眠術にはかかりやすいほうですか?
GD 催眠術? うーん、かけられたことはないですが、かかりにくいんじゃないかと思います。疑い深いほうなので。でも、催眠術とイップスに何か関係があるんですか?
石井 はい。我々の脳は、催眠とか暗示というものにかかりやすい性質があり、にわかには信じられないようなことが現実に起こります。よくテレビで催眠術にかかる映像がありますよね。
GD 体が石のようにカチコチになったり、嫌いな食べ物が美味しく感じたり、というアレですね。面白いのですが、心の中ではどうせヤラセだろう、と思いながら見てしまいます。
石井 催眠にかからないタイプですね(笑)。確かにヤラセにしか見えないこともありますが、あれって本当に起こっているんです。
GD え? 本当に体が硬くなったり、味が変わったりするんですか?
石井 はい、催眠にかかると、体は本当に硬くなるし、酸っぱいレモンも甘く感じるのです。
GD 白いものも王様が黒と言えば黒になる、みたいな……。絶対君主たる王=脳を操れれば、国民=肉体をも操ることができるというわけですね。
石井 壮大な話になってきましたね(笑)。でも本当にそうで、「短いパットを打つときに自分の手は動かない」と自分に強く暗示をかけていると、本当に手が動かなくなっても不思議ではありません。
GD つまり自分で自分に催眠をかけてしまっているわけですね! だから「自己暗示型」と。
石井 お守りや風水アイテム、パワーストーンなどを、ついたくさん買ってしまうようなタイプは、こうした自己暗示にかかりやすい傾向にあります。
GD 運気のいいアイテムを身につけていればいいことがある。これはプラスの自己暗示ということですか。
石井 そうです。自己暗示は諸刃の剣。プラスの自己暗示はいいパフォーマンスにつながる可能性もありますが、マイナスの自己暗示はその逆。最初はたまたまショートパットで手が上手く動かなかっただけだったのが、短いパット=手が動かないという負の暗示を自らかけ続けることで増幅し、本当に動かなくなってしまう。これが自己暗示型イップスの正体です。
GD お、恐ろしい……。でも、前々回のお話で、自己暗示型のイップスは比較的治りやすいとおっしゃっていました。
石井 そうなんです。目には目を、暗示には暗示を、ということで、こういうタイプは催眠療法系のセラピーを受けると、簡単に克服できてしまうケースがあります。
GD そいういうことでしたか! あ、でも私は催眠にかかりにくいタイプということは……。
石井 はい。残念ながらGDさんは催眠療法では治りません。
GD 無念……。
石井 イップスの原因が100%自己暗示によるものであれば、催眠療法系のセラピーによって短期間で治る可能性は高いのですが、イップスはトラウマ型や神経不全型など、いくつかの原因が組み合わさっているケースがほとんどなので、催眠療法を受けて一時的に効果があったとしても、根本的な解決にはならないことが多いです。
GD 以前シニアの奥田靖己プロが、パターイップスにかかったときに、ワラにもすがる思いで著名な催眠術師のもとを訪れたとおっしゃっていました。でも試合に出たら、1番ホールのグリーン上ですでに手がブルブル震えていたんだとか。
石井 私が指導したプロも、やはり催眠療法では治らなかったといいます。プロや上級者のイップスは、「メンタルモデルの神経不全型」というパターンが多いと思いますね。
GD イップスの原因の3つ目ですね。次回詳しくお聞かせください!
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石井 亘
いしい・わたる。ゴルフ好きのメンタルコーチ。「本来の力を発揮させる!」を信条に、20年にわたり、プロやテスト受験生、アスリート、音楽家、医師、経営者、中高生など1000人近くを指導。「メンタルトレーニング石井塾」主宰