【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.818「敬意を払った挨拶していますか?」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
今度2回目となる公式競技に出る予定です。初めて行くコースなので練習ラウンドのほか、いろいろな面での想定が必要と考えていますが、プロの方の場合はどのような事前準備をなさるのでしょうか?(女性・35歳・ベストスコア78)
プロの場合、毎年同じコースで開催されるトーナメントであっても、練習日にコースを回り例年通りのレイアウトのままかどうか、また今年のセッティングがどうなのか、必ずチェックします。
初めてのコースであれば時間をかけて入念なコースチェックを行い、プロとして準備作業に手抜きはありません。
練習ラウンドで何を確認しているのかといえば、コースの中で行ってはいけない場所を見極めているということでしょうか。
練習ラウンドでは気心の知れた仲間と仲良く回っているように見えるかもしれませんが、ホールごとに絶対打ってはいけないエリアをメモしています。
その内容は選手によって、球筋や飛距離によって、微妙に違ってくる可能性があるかもしれませんが、グリーン周りの行ってはいけないエリアは共通しているはずです。
これを見つけることが練習ラウンドでのもっとも重要な仕事です。
こうしたポイントをいち早く正確に見極めるのは、経験値などを含めたゴルファー力が決めると言っていいかもしれません。
プレーが始まる前に戦いは始まっているとも言えますよね。
行ってはいけないポイントですが、アマチュアの方はあのエリアはダメという感じでイメージしているようですがプロは違います。
あのエリアではなく“ココ”であって、もっと絞ってかなり明確にフォーカスしています。
そこがプロとアマチュアの違いと言えるかもしれません。
狙って攻めるというのは、そういうことなのです。
プロはスタートからホールアウトまで、可能な限り全ショットに神経を研ぎ澄ませ集中しています。
その緊張状態のまま1ラウンドをやり終えると3キロくらい体重が減るほど消耗します。
そんな集中度でプレーしているのがプロなのです。
行ってはいけない箇所のみならず、グリーン上の細かい形状と高低差、傾斜と芝目の方向をチェック。
ゴルフ場によっては、さまざまなデータを掲載したヤーデージブックを発行しているので、それを入手しておくのも賢い手と言えるでしょうね。
ここまではプレー上での事前準備についてでしたが、わたしが気になるのはマナーです。
まだ2回目の公式戦に出るということは、周りから注目されているということを忘れないでいただきたいです。
気を使いすぎてペコペコすることではなく、こっちから敬意を持って接する気持ちでいてほしいのです。
プロでも初めて同じ組になる先輩には、スタートのティーイングエリアで初めて顔を合わせないよう、前日のうちのどこかで、「一緒に回らせていただく○○です」と挨拶をするはずです。
こうした礼儀に関わることは、プロの世界だけでなくアマチュアでも同じことだと思います。
この間、あるベテランの男子プロが「向こうから来た新人がこっちに向かって軽く手を上げて挨拶してきたけど、どう答えていいかわかんなくて困ったよ(笑)」と苦笑いしていましたが、挨拶の仕方もすっかり時代が変わってしまっているのでしょうかね…。
コースのスタッフの方やキャディさんに対する接し方や、普段の振る舞い方も含めて、ルールとは違うマナーは、その場に遭遇した経験から学ぶのが一番。
そう考えると、プレー上の事前準備の方法と同様、自然に身に付けていくしかないのかもしれませんね。
「自分のことばかり考えないで、周りの空気を読むのも技術のひとつです」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号より