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【ゴルフ野性塾】Vol.1827「呼吸で振れば、スムーズに動ける」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

研修生時代、
プレーの遅い

時期があった。
考えるな、すぐに打て、と教えられた。
先輩研修生に幾度も注意を受けた。
早く打とうとした。
だが、打てなかった。

「それだけ遅いと研修会に出た時、困るぞ。皆、お前の3分の1の時間で打って行く。ゲームには流れがある。自分一人がプレーして行くんじゃない。3人で回るのであれば3人で作り行く流れがある。4人なら4人の流れだ。1人が遅いと一緒に回る者が迷惑する。前との距離は開く。後ろの組にはくっつかれる。一緒に回る者は急ぐ。焦る。一緒の者のリズムが崩れる。ゴルフの基本は気配りだ。迷惑掛けてはいけない。ましてやプロを目指す研修生ならば誰よりも早くプレーすべきだ。遅過ぎる」

今でも覚えています。
鹿沼CC南コース6番のティーグラウンド上でした。

吸いの息で始動し、吐きの息で振れ。

アドレスから始動するきっかけがわかりません。ゴルフを始めた頃はそれほど長くはなかったのですが、友人から「アドレスで30秒くらい固まっている」と指摘されます。構えたら、すぐに始動するにはどうすればいいでしょうか。(愛知県・加藤勇真・35歳・ゴルフ歴6年・平均スコア100)


呼吸が最善のスウィング始動手段と思う。
ゴルファーは皆、初心の時を持つ。
獣もそうだと思う。
一匹狼と言うが、最初から一匹狼で生きて来た獣はいない筈。
親に育てられ、周囲に育てられて一匹狼の生き様に入っている。
人間もそうだと思う。

如何に生きるかを教わりながら日々を過し、過去と現在から教わり、組織の中に入り、自分の領域を生み出して行き、結果として一匹狼の評を得る。
一人で生きて来たと豪語する人間、どこから一人で生きて来たのかを聞きたい。
生まれた時からと言う者はいないだろう。
18歳になった時か、組織から独立した後か、それでも世間の中で生きているのだから、真の一匹狼と主張するには無理がある。

プロ野球、プロゴルファーの中には一匹狼を自負する者もいたが、要は干渉を嫌い、自己責任を主張する事の出来る成績優秀の時にいる者の自己認識と自己評価に過ぎぬと思う。
周りの干渉を嫌う一匹狼の時期、そう長くはない。
そして周りは迷惑する。乱す物が多い。

一匹狼を自負する者は沈黙すればいい。
結果を残し、あとは語らず、態度謙虚であればいい。
そうなると周りは一匹狼に好意を持つ。
中途半端な成績で、一言多く、批判否定多き態度だと周りは乱れる。
己を育ててくれた組織とその寛容と忍耐に対してだ。

私は平成5年にジュニア塾を作った。
塾生は塾を離れた後も坂田塾出身と言った。
親の勧めと親の指導でゴルフを始め、一人で上手くなり、一人でプロになり、一人で生きて来たと主張する嘘つきは一人もいなかった。
塾の組織と塾の人材が子供にゴルフを教え、育てた。
そして基本のスウィングと基本の思考、塾生以外の友を得た子供達は塾から離れて行った。
巣立ち、旅立ちの時であった。

坂田塾が誇れるのは嘘つきを一人も出さなかった事である。
人は己に損があると思えば事実を隠す。
それは己に対する嘘であり、事実に対する嘘であるが、嘘は性格と生き様を歪めると思う。
私はそうゆう人に出会った。
気の毒な人と思った。
周りは知っている。
本人が気付かぬだけだった。

坂田塾出身者に嘘つきは一人もいない。
塾出身者は皆、私の前に立つと塾出身者です、塾生でしたと大きな声で言って来る。
私の眼を見て、背中を伸ばした塾生姿勢でだ。

記憶せぬ者が多い。
トップスウィングしてみろ、と言う。そこで分る、塾生だったとゆう事が。
立派なショートスウィングのトップ型であった。
私の教えたものが生きている、残っていると思った。
嬉しかった。

塾8カ条――。
隠し事をするな。
嘘をつくな。
挨拶は相手の眼を見てせよ。
礼状を書く。
約束を守る。
毎朝、国語と英語の単語の書き取りをせよ。
スコア誤記をするな。
コースラウンド時、一時間前に練習に入り、ラウンド後、日没が来る迄、コースを離れるな。

私は総て塾生の中に残っていると信じる。
間違った教えではないと思う。
正しいか、正しくないかは8カ条の逆を考えればいい。
隠し事をする、嘘をつく、挨拶しない、礼をせぬ、約束は破る、国語は日本国の言葉、英語は海外に出た時に必要な言葉、スコア誤記せよ。
その8項目、やれば損するだけだ。
その時は損しなくても、後々、
損するだろう。
評価も落ちる。
やっていい事は一つもない。
塾生の中に8カ条は残っていると思う。
私も塾も間違ってはいなかった。
街中で出会うショートスウィングは嬉しい。

人、一匹狼ではない。
我儘は駄目だ。
身勝手も駄目だ。
眼がある。耳がある。口がある。鼻がある。手も足もある。
この世で生きて行く手助けとなるものばかりじゃないか。
粗末にしてはならない。

私は塾生に呼吸のスウィング始動を教えた。
塾生の体に教えた。
教わった塾生、何を教わっていたのか、気付いた者は一人もいなかったと思う。
気持ちも体も素直であればいい。気持ちか体のどこかに教えは残る。

貴兄は呼吸で球を打て。
アドレスで一度、息を止め、バックスウィング始動は吸いの息で始め、トップで一度止めに入り、ダウンスウィングからフィニッシュ迄、吐きの息で振り切るのです。
そして、フィニッシュで止め、3秒のフィニッシュ静止。
その後、スウィングを崩し、息を吸う。
この時の吸える空気の存在には感激するばかりである。
呼吸で球を打てばスウィング始動は早まります。
50球打って貰えれば変化は生まれましょう。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2024年6月4日号より

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