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【ゴルフ野性塾】Vol.1826「プロは眼線で距離を作る」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

福岡の空、
曇っているのか

晴れてはいても霞み空なのか、近くのビルの姿は見えるが遠くの山の姿、消えている。
私の原稿書く場所は居間のテーブルなれど、ほぼ東向きの位置で書いて来た。
風がベランダの草木を緩やかに揺らす。
女房が20年かけて育てて来た草花である。
穏やかな風、吹いているのだと思う。
くまん蜂1匹、飛んで来た。
昨日も来ていた。
巣作りの為の視察飛来であろうか。

今日5月8日、水曜日。現在時午前11時35分。
これよりファックス送稿し、風呂に入る。
その後の予定は未定。

首筋の傾きを使えば難なく打てる。

コントロールショットが苦手です。60ヤードから80ヤードくらいの残り距離のとき、グリーンに乗せられません。フルショットで打てる100ヤードならPWで乗せられますが、80ヤードになると、なぜかダフリかトップになってしまいます。この距離を上手く打てれば、念願の100切りも実現できそうなのに失敗ばかりです。塾長、コントロールショットの上達法はありませんか。 (東京都・佐藤勇大・37歳・ゴルフ歴5年・ベストスコア102)


一つの理想、一つの実戦手段を述べる。
プロの領域で成功した者は共通の意志を持つ。
ティーに立った時であれ、第二打地点であれ、グリーン周りであれ、グリーン上であれ、失敗するのではとの気持ち、持ってはいない。
例え、失敗したショットであれ、失敗して5秒後には気持ちを切り替えている。
これは失敗ではない、少しスウィングリズムを狂わせただけだ、あるいはタイミングがズレただけだ、と。
失敗とゆう気持ちをはぐらかす様な意識の変化を出して来る。
見方を変えれば傲慢であり、図々しい変化なれど、この変化力持たぬとその一つの失敗がその後の重荷となって来る。

戦う上に於て連鎖は厄介な存在だ。
意識が失敗の連鎖を生む。
故に連鎖を止めるが為の意識変化は上レベルに立つ者程、得意とし、自然に身に備えて来しものである。
私は失敗を悔いた。
何故、失敗したのかと失敗の原因を探した。
それもラウンド中だ。
そして失敗してすぐの時にだ。

人の世、綺麗事で前に進む事は少ない。
清よりも濁の力、多く持つ者が前へ進む力を持つと思う。
理想は聴く耳に素直に入る。
なれど、進む足に力を与えるは脚の力である。
無益な殺生はいけないと理想は教える。
命を大切にと教える。
草木にも生き物にも命あり、と教える。
だが、生きるには殺生は必要だ。
その殺生が脚の力を生むと思う。

空気だけを吸い、水だけを飲み、太陽の光を浴び、月灯り星灯りを受けて、それで生きて行けるかと申せばノーである。

人類、皆、平和、と願う。
人類、皆、平等、と叫ぶ。
願うは尊い、叫ぶは立派だ。
だが、宗教の開祖が空気だけで生きたのか、願い、叫ぶだけで人の命は奪われなかったのか、教えて貰いたい。

眼線、遠くに置けば近くは見えない。
眼線、近くに置けば遠くは見えない。
人はそうやって己の心の中をコントロールして来た。
それが歴史の始まりだ。
私は失敗者である。
総てが中途半端であり、総てが理想的でも実戦的でもなかった。
私は評論家稼業は嫌いだ。
あと出しジャンケンみたいな論を述べての解説家面、好みはしない。

特に政治、経済の評論には眼も鼻の穴も耳も閉じたくなる。無責任過ぎる。
昭和59年5月、本誌でペンを持った時、覚悟した。
評論のペンだけは取るまい、と。
その覚悟で過して来た。

理想の力を信じないとは言わぬ。
なれど理想よりは実戦的な言葉を私は好んで来た。
ゴルフ一途なんて馬鹿な生き方であってなるものか。
起きて朝を食べ、練習して昼を食べ、練習して夜を食べ、女を抱き酒を飲み、眠りを得るのが球叩き稼業の基本。
女、抱いている時、ゴルフに有効となる体位、呼吸、愛の言葉、心情なんてありゃしない。
獣の欲望、本能ありゃいい。
恰好つける生き様、私は嫌いだ。
抱きたい、抱かせてくれ、が実戦の言葉であり、実戦の心情だと思う。

スウィングのスピード変化で距離を作れ、スウィングの大きさ小ささで距離を作れ、インパクトの力加減で距離を作れ、球筋で距離を作れ、スタンス幅、爪先ラインの向き様で距離を作れ、クラブフェースの開き様で距離を作れ、と教えるは理想でもあり実戦的でもある。
そうゆう面から眺めればゴルフは素直であり誠実な競技であろう。
政治、宗教を語る評論家よりは遥かに人間的とも思う。

なれど、貴兄に理想、実戦、併せ持つ打ち方は必要ない。
貴兄に必要なのは闘争心である。
分析する者、分析を好む者に欠けるは闘志。
闘志、強き者は分析を好まぬ。
食うか食われるかでなきゃ80ヤード、打てはしても寄せ切る事は出来ぬ。
失敗に食われるか、成功を食うかだ。

100ヤードないウェッジの距離、そこは変えずともよい。
90ヤードだとフルショットでは大きいし、サンドウェッジだと届かぬ距離。
100ヤード打つ時、貴兄はボールのどこを見ている。
真横か、眼では見えぬ地面寄りの底辺近くか、それともボールの真横から真上の間か。
プロのスウィング写真を見れば分る。

距離のコントロールショットする時、頭の傾き角度どの程度、変っているかを見ればいい。
首筋を真っ直ぐに立てているか、右に傾けているか、あるいは左に傾けているか。

結論を申す。
頭の傾き、100ヤードも30ヤードも同じの者はアプローチ巧者ではない。
無意識下、経験が生みし本能、この二つで傾きを変えている者はアプローチ巧者である。
傾き無視して、単にスウィングスピードで距離を打ち分けよ、スウィングの大きさで打ち分けよ、インパクトの力加減、球筋、スタンス幅等、クラブフェースの開き様と教えるは理想。

頭の傾き様をも教えるは実戦的。
本能が生みし打ち方である。
打ってみれば分る。コスリ球を打ちたければ、アドレスで頭を左に傾ければよい。
ドロー打ちたければ、頭を右に傾け、右顔面を右に回せばそれでドロー球は出る。
ボールの真上を眺めれば距離は落ち、真横を眺めれば距離は出る。

貴兄は首筋を使え。
あとは失敗を考えぬ図々しさ持てばいい。
プロの領域、傲慢は善き性格である。
傲慢が顔に出るか、言葉に出るか、態度に出るか、あるいは全く出ない出さない人間なのかは人それぞれ。
出さぬ者を善き人と世間は言う。そして好む。
それも一つの理想である。
面白い、面白いと思う。
貴兄の健闘を祈る。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2024年5月28日号より

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