【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.169「習い事の流儀」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Yasuo Masuda
今後は、アマチュアの人と回る機会も増えると思うので、最近は、どんなアドバイスの仕方をすればいいんかなと、ちょっと考えるようになりました。
まあでも、ゴルフを教えるのは難しいです。ちゃんと教えてほしいという人もおれば、その一方で、えげつないレッスンがええという人もおる。そうかと思えば、普段は全然ゴルフせえへんからスクールに入って、そこでやるだけでもましやという考えの人もいてます。
むちゃくちゃ練習して下手になって、5年前のほうがよかったいう人も少なくないですね。トップからの切り返しでの手の位置とかフェースの向きとかがよくないと言われて、それを直すことをずっとやっとる。
でもね、トップに上げてからダウンスウィングまでは0.2~0.3秒の話ですからね。その間に何ができるんですか。ほぼなんもできません。そういう人は、ゴルフをもっとトータル的に考えたほうがええと思います。
自分のウィークポイントがアプローチやからといって、アプローチばかりやってもしょうがない。ドライバーを飛ばすことばかりやっても、コースには狭いホールもある。ゴルフはそういったものが全部つながっているもの。だからショットのコントロールもできて、でも振ったら飛ぶ。それでアプローチもそつがない、そういうふうになっていけばゲームが組み立てられるやないですか。
ゴルフのレッスンなんかも、習い事としてとらえてもらうとわかりやすいと思います。たとえば、お花を習いに行って、池坊の流儀はコレや、とかあるやないですか。花を生けることばかりやっていても免状をもらえんし、一度習いに行ったらめちゃくちゃ上手くなる、みたいなふうに思うんもまたちょっと違う。
ゴルフでも、ラウンド中にちょっとひと言ほしいいうのと、ちょっと奥田プロにゴルフを習おうかいうのは違うわけですよ。もちろん、僕に1時間習ったからといってすぐに上手くなるわけやないし、僕の教えたいことが全部わかってもらえるいう話でもない。やっぱりもう少し付き合ってもらわんと、ということになるわけです。
「一度習ったらすぐ上手くなる思うんは、やっぱり違います」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2024年3月19日号より