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【名手の名言】ファジー・ゼラー「Happy-go-lucky!」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は、マスターズチャンプにしてジョークの名手(?)としても知られるファジー・ゼラーの言葉を2つご紹介!


Happy-go-lucky!

ファジー・ゼラー


1979年、マスターズに初出場で優勝するという快挙を達成したファジー・ゼラーが、試合後、記者たちに囲まれて放ったフレーズである。

名言というよりゼラーの口癖のようなものだが、ゴルフのある面を言い当てている。

「Happy-go-lucky!」は「楽しくやろうぜ!」というような意味だが、陽気なゼラーは当時、全盛を誇っていた帝王ニクラスの求道的、重厚、厳かなプレーに違う意見を持っていたようだ。

「何も眉間にシワ寄せてやるだけがゴルフじゃない。もっと楽しくやろうぜ!」

ということだ。この年もニクラスは優勝候補の筆頭にあげられていた。その当てつけに言ったようでもある。

笑顔で楽しそうにやっても勝てるものさ。もともとゴルフは楽しいものじゃないか、ということをゼラーは言いたかったのである。

ついでに、ゼラーらしいもうひとつのエピソードを紹介しておこう。

1984年、全米オープンで最終日最終ホール、グレッグ・ノーマンと優勝を争っていたゼラーは、前の組にいたノーマンになんと白いハンカチを振ってみせたのだ。降参だよ、の意味で。

しかし結果はノーマンと同スコアで、次の日のプレーオフに勝ったのはゼラーだった。全米オープンのようなピリピリした緊張の雰囲気のなかで、そんなジョークをやってのけたのである。


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ファジー・ゼラー


往年の名手でジョーク好きといえば、リー・トレビノとファジー・ゼラーが双璧だろう。

陽気なのは両者とも共通するのだが、ジョークの質においては大分趣が変わるような気がする。

トレビノは他愛ないジョークを多発するが、ゼラーはともすれば皮肉と揶揄が混じることもある。

タイガー・ウッズが1997年のマスターズで初優勝を果たしたとき、ゼラーは次のような発言をした。

「来年のチャンピオンズディナーであの坊やにフライドチキンやカラードグリーンを出さないように言っておいてくれ」

当人にはそんなつもりは毛頭なかったというが、これが人種差別的な発言だと批判を浴び、ゼラーは謝罪を余儀なくされた。

それに対しタイガーは

「ファジーとはランチでしっかり話し合えた。もう終わったこと。長い目で見れば、ゴルフをより良いものにするためのきっかけになったといえるんじゃないかな」

と21歳とは思えない大人な発言でさらに株を上げたのだった。

ジョークも度が過ぎると思わぬ代償がつくことになる。表題のようなジョークならニヤッと笑う程度で済むのだが……。

■ファジー・ゼラー(1951年~)

ヒューストン大学を経て、73年プロ入り。翌年PGAツアー参戦。10勝を挙げている。その中には79年マスターズ、84年全米オープンのメジャー勝利もあって大物食いの印象が強い。マスターズでは、初出場者は勝てないというジンクスを初めて破った。また全米オープンでは優勝争いのなか、白いハンカチを振って見せるパフォーマンスも見せた。陽気なアメリカンとして知られる。