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【ゴルフ野性塾】Vol.1813「理想を求めるスウィングには型を教える」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

スウィングの
風は聞いた。

年齢64歳の風だった。
悩みは多い。
悩みの総て、消し行くは難しいと思う。
宗教は悩み、苦しみ、悲しさ、辛さ、飲み込んで行けと教えた。
それが心の安らぎに繋がる手段と教えた。
死を怖れる人は愚直な迄の素直さで教えを信じた。
歴史は教える。
宗教の肥大は愚直な素直さから始まった、と。
宗教にも階級は生じる。
矛盾は多い。
しかし、愚直さが矛盾を抑え付けて来た。

私は宗教を持たぬ。
信じるもの一つあっての幸せならばそれでいいではないか、と思いて己の宗教を語る人の話を聞いて来た。
ゴルフに宗教はないと思う。
己のやってる事を否定しなければ球は叩けるものだ。
ゴルフ始めて1年、己の練習を否定する気持ちは生じよう。
稽古事、鍛錬事、継続事、肯定するには時間が要る。
ゴルフやるにはお金が必要だ。
時間も要るし、練習とコースラウンドの環境も作らねばならぬ。
その環境、幸運あらば与えられるが、現在の多くのゴルファーにその幸運はないと思う。
だから30年前よりゴルフ出来る環境は狭まっている筈。

今、男子プロと女子プロのツアー状況が比較され、男子プロの将来、危惧されているが、その危惧失くす手段は練習場とゴルフ場の姿勢変えれば解決出来る。
野球の大谷翔平、将棋の藤井聡太、ボクシングの井上尚弥を出せばいい。
それで変る。
ジュニアゴルファーの減少、嘆く人は多いが、ジュニアゴルファー増えたとてゴルフ人口変える様なパーセントは出ないと思う。
練習場、ゴルフ場、クラブメーカーの売上げ、何も変らずだ。
大谷翔平、藤井聡太、井上尚弥の一人が出ればいい。
練習場、ゴルフ場、一年通して無料の開放あれば環境は変る。
親の負担、少なくなれば子供はゴルフを知る。
親の負担、ゴルフやるお金と練習場、ゴルフ場への送り迎えだけでも大変なのに、他にお金掛かるとなれば親は子にゴルフやれとは言えないだろう。

山頂の石は転がり続けて、ブツかり合って小さく砕け、海に達する頃には砂となる。
山頂の石が河口の砂となるが、河口の砂を山頂の石と為すことは出来ぬ。
頂点を作れば底辺は生れるが道理。
大谷翔平、藤井聡太、井上尚弥は頂点に位置する者。天才である。
今、男子ゴルフ界に大谷翔平、藤井聡太、井上尚弥はいない。
ゴルフ理論然り。
球を飛ばす時、何を優先順位の先端に置くかで生れるものは変って行くと思う。

手先で振るな。左肩で始動せよ。


人、単純と複雑を持つ。
64歳の方に3回の素振りして貰った。
一致の風はなかった。
最初の力加減7割の振りが起こす風の方が強く、目一杯の振りの後の3度目の振り7割の風の方が弱かった。
理想を求める気持ち強ければ最初の振りが強く、実利を求める気持ち強く持つ人は3度目の振りに強い風起こすが、理想求める人には型を求め、実利求める人には位置求めるが最善の指導と思う。
64歳の風は理想求める風だった。
すぐに指導に入った。
球打って貰う必要はなかった。
素振り3回で64歳の方の性分と体の欲すスウィングは把握出来た。

「バックスウィングが素直な上がり方じゃなかった。左肩も左腕もクラブヘッドにも小さな曲り生じていた。曲り正すのはスピードだ。自転車乗ってるとき、真っ直ぐ走るにはある程度のスピードが要る。ゆっくりと走ったんじゃ蛇行生じる。ハンドルのバランス取るが為に蛇行だ。筋力弱き人程、ゆっくり走ると体全体に余分な力が入り、蛇行走りとなる。筋力衰えた人、筋力弱き女性、そして筋力発育途上の子供はバックスウィングスピードは上げた方がいいと思う。ゆっくりとバックスウィングすれば蛇行生じる故にだ。ピュッと上げる必要はない。左肩主体で上げて行けば真っ直ぐな動きのバックスウィングは出来る。逆に筋力強き人、鍛錬出来てる人はゆっくり上げて行けばいい。64歳の御仁に教えた。スウィング始動は左肩でせよ、と。腕、手先で振るな、と」

「その方は変りましたか?」

「変った。彼は己の変化を理解出来なかった。球1球、打って貰った。強い球、真っ直ぐの球が出た。彼は驚いた。私の悪い癖だ。余分な一言が出る。私は64歳の方に言った。アンタに才能あると思うな。アンタを変えたのは私の才能だ。そこを勘違いするなよ。彼は分っています、と言った。感謝してます、とも言った。嬉しそうだった」

「指導はそこで終ったのでしょうか? 素振り3回の指導でそれ程の変化あれば坂田プロの指導、一日100名は受けられます」

「面倒だ。アンタ方とのコーヒー飲む時間、面倒さないから週に一度の時間が続いている。面倒と思ったら終りの時だ」

「その日、遠い日である事を祈っております」

「今日、明日じゃない。でも突然の可能性はある。ここのコーヒーに飽きたら終りだ。話し疲れ生じても終りだ。ここへ来るのが面倒と思った時も終りだ。終りの時、幾つかあるが今はここのコーヒー旨いし、アンタ達との時間、楽しくもある。心配はするな」

「有難うございます。質問していいでしょうか?」

「何だ?」

「実利求める者の指導、位置と仰いましたが、教えて戴けませんか? 私は実利を好む者です。ゴルフと対人関係に関わる様な気がして仕方ありません」

「フィニッシュの位置だ。フィニッシュの型ではないぞ。理想好む人はトップ位置の型を作ればいい。左手首真っ直ぐにして左手の小指、薬指、中指を掌に丸め込む様にして左手の甲、張れば左肘は伸びる。そして、コンパクトなトップ型は作れる。そして実利の位置の作り方だ。私はゴルフと社会生活、共通ありと思う者ではない。ゴルフを最も語れるのはゴルフを生業(なりわい)とするプロゴルファーと思うが、プロゴルファーの社会人資質、威張れたもんじゃない。だからゴルフを語り、指導し、ツアーで戦う中で、俺は一人前の男と威張る者見るのはイヤだった。やっぱし謙虚が美しい。虎の威を借りた存在は傲慢だ。そんな組織、そんな人間とは距離を置いた。今日は喋り過ぎた様な気がする。熱い紅茶貰って来てくれんか。砂糖要らずのミルク在りだ」

新しき年、変らぬは冬の気配、本物になって来た事だけか。
以下、次週稿―――。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2024年1月23日号より

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