【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.151「アゲンストでこそ工夫は生まれる」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tsukasa Kobayashi
今、航空運賃がめっちゃ高なってますね。ちょっと前の3倍くらいになってないですか。僕らが初めて全英シニアオープンに行った2010年はイギリスまでビジネスクラスで45万円くらいで行けましたけど、今、そんな安いのないですからね。
ビジネスで130万、エコノミーでも80万くらいやって、この夏にイギリスに行った冨永浩が言うてました。冨永はトルコエアラインで、たまたまビジネスで80万という格安チケットで行けたと言うてましたけど、それでも10数年前のほぼ倍ですから。
これだけチケット代が上がると、プロは海外に試合に行くのも大変です。スポンサーがいて、チケット代などを出してもらえるならいいけど、自腹で行くとなるとちょっと行きにくいというのが正直なところですかね。
それでも試合で勝てればいいんです。今の試合は賞金が高いし、円安ですから外貨でもらえればかなりの高額になります。それに、全英オープンは予選落ちにも賞金を出していたそうですが、全英シニアも、僕らがマンデーを通って本戦に出れば、その時点でお金が出ていましたから、まったくの赤字ということにはなりませんからね。
それでもプロゴルファー、特に若くて力のある選手は、海外に行きたいいう気持ちは強くある思います。賞金額が高いというのもあるけれど、何より“挑戦欲”いうもんがそうさせるいうことでしょう。苦しい状況が人を育てる、これは間違いないことですから。
人類の歴史を見ても、めっちゃ寒かったから人間は火を活用する術を生み出して生き延びてきたわけです。苦しい状況があってこそ工夫によって生き延びてこられたんです。
ゴルフでも、アメリカのようにパワーで200何十ヤード先のターゲットに対してボールを止めないと通用せんとか、イギリスのリンクスのようにゴルフ場のなかに四季があるというくらい天候が大きく変わる理不尽な状況でプレーをせなあかんこともある。
でもそういう日本にはない状況で戦い、それに打ち勝ってこそ成長できるわけですから。“円安”というアゲンストに負けず、そういう挑戦はぜひやってもらいたいと思います。
「状況の“アゲンスト”に負けんよう、どんどん海外挑戦したらええんです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年10月31日号より