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【ゴルフせんとや生まれけむ】伊藤剛臣<前編>「神戸GCでうっかりマナー違反。ラグビーでは一度も怒らなかった平尾さんが…」

ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、 元ラグビー選手の伊藤剛臣氏。

実家が柔道の道場をやっていたのですが、ゴルフ好きの父親が道場にネットを張り、そこで毎日のように球を打っていたんですよ。それで、僕も小学校の頃から父親のアイアンを持ち出して遊びで始めました。クラブを握った最初といえばそれになりますかね。

ですから、もともとゴルフには興味を持っていました。でも、日本ではなかなかやる機会がなくて。確か30歳になる少し前くらいでしたか、日本代表のニュージーランド・オーストラリア遠征に連れていってもらったときが海外でのコースデビューです。ニュージーランドだったかオーストラリアだったかはもうすっかり忘れてしまいましたが、何しろ子どもの頃、道場のネットで打っていたというひそかな自信があったわけですよ。なのでドライバーで思いっ切り飛ばして、みんなをアッと言わせようとしたら見事に空振り! 大笑いされたことだけは今でもよく覚えていますね。

本格的にゴルフを始めた頃、僕は神戸製鋼に所属していました。ちょうど日本選手権を7連覇した最も強かった時代でした。当時のチーム仲間にも元木(由記雄)をはじめとしてゴルフ好きがたくさんいたので、ラグビーの合間に時間を見つけては一緒に練習に行ったりコースを回っていましたね。そのなかでも一番のゴルフ好きは平尾(誠二)さんじゃなかったですかね。ラグビーに関してはいわずと知れた天才的なプレーヤーでしたが、ゴルフも天才的な感じがあった。よく誘ってもらって平尾さんとラウンドしました。

神戸といえば、日本のゴルフの発祥地、神戸ゴルフ倶楽部がありますが、そこに連れていってくれたのも平尾さんでした。その頃の僕はそこが日本最古の由緒あるゴルフ場だなんて何も知らなくて……。クラブハウスは至ってシンプルですしカートではなく歩きだし、「ああ、随分と簡素なゴルフ場だなあ」と思っていたんですよ。しかも、ここでは詳しくは言えませんが、マナー違反をやらかしました。すると、平尾さんが「剛臣! お前、ここをいったいどこだと思ってるんだ!」と怒る怒る。ラグビーでは平尾さんに怒られたことは一度もないんですが、この時の平尾さんは厳しかったですね。

平尾さんはゴルフのプレー中はミスをすると感情をむき出しにしていました。ラグビーの試合中に平尾さんが感情を表に出したところは見たことがありません。いつもクールで沈着冷静。ところがゴルフではあの平尾さんが感情をもろに爆発させてしまうんですから、すごいスポーツですよね。

名門ゴルフ場といえば、こんなこともありました。高校1年生でラグビーを始めた僕は3年生の時に高校日本代表に選ばれたんです。初めての海外遠征はスコットランドでした。記憶は全くないのですが、どうやらその時、セントアンドリュースオールドコースに観光で行っているみたいなんですよね。ゴルフ好きな父親にセーターのお土産を買って帰りましたから。ゴルフにハマっている今考えると、めったに行けないコースを何でもっと目に焼き付けておかなかったのだろうと残念で仕方ないんです。

>>後編につづく

伊藤剛臣

いとう・たけおみ。1971年生まれ、東京都出身。ラグビー元日本代表。法政大学3年時に大学選手権優勝。神戸製鋼、釜石シーウェイブスでナンバーエイト、フランカーとして活躍。代表キャップ62。現在はサラリーマンとラグビー解説者の二足のわらじ

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月26日号より