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【ゴルフ野性塾】Vol.1795「無心で打て。無欲で打て」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

夏の雲は上下の
高さを誇り、

秋の雲は、左右の広がりを持つと思う。
今日8月23日水曜日の福岡の空、高さもあれば広がりもある夏と秋の狭間の雲が浮ぶ。
現在時正午を少し過ぎたばかりの零時15分。
雲の色、幾つも連なる気温33度の空。
風はない。
女房殿が購入して来たベランダの小さな樹木の葉、ピクリともせずだ。
雷の音、遠くで鳴っている。
雨、降る前兆か。
昨日22日、野性塾大濠公園18人衆とコーヒー飲んだ。
集いの場所は福岡市中央区赤坂門交差点近くのホテル1階レストラン。
コーヒー飲むだけでも歓迎される有難きレストランである。
18人と私の集いの時間は30分から40分。

逆は真なり。右眼線でダフリは直る。


「福岡はいい街だ。寛大さと人の優しさ、どこの街角にも漂っているからな。この寛大さと優しさ、当り前と思っちゃいかん。何事に於てもそうだが、当り前と思った瞬間から痛い目に遭う。ゴルフ然りだ。
 寄せがピタッと寄ってパーパット50センチ。50センチであれば、よし、このホール、凌いだ、と思うだろう。だが、50センチのアドレスに入った瞬間、ラインに迷う事がある。そして外す、50センチをだ。自己嫌悪と情けなさ、己の油断に腹が立つ。後悔がグーッと湧き出す。己とゴルフがイヤになって来る。たかがゴルフなれど、この時ゴルフは己を否定して来る。かと言って50センチを慎重に読めば読む程に50センチに寄せたアプローチに己の技への疑念生じる。もっと寄せられなかったのか、50センチの距離、40センチであれば外すのではないかの不安、生じはしなかったのに、と。
 稽古事、鍛錬事、継続事、戦い事は体・技・心の手順求められると思うが、悔いを感じるは心だけだ。体と技は悔い知らぬ領分。50センチを充分と思うか、不足と思うかでその後の成長と結果は変る。50センチで充分。次のパーパット、外しはしないと思えば充分と思う距離、50センチから60センチ、そして70センチへと変って行く。これが自信の延長であり、確信の徳俵の高さとなって行くのだ。50センチを不足と思えば気持ちは60センチに向かぬ。40センチに向く。そして、40センチを不足と思う。そうなりゃ自信なんて儚きものよ。確信を生む事もなく、徳俵となる事もない。
 今に生きよ。今を否定するな。楽観的肯定はいけないと思うが否定も駄目だ。今を然り気なく過せばいいと思う。物事を難しくするも楽しくするも気構えと覚悟次第だ。今を否定せず、楽観的肯定もしない。今はあく迄も今この時だけだ、の想い持てば、少ない曲りで生きて行けると思うぞ。この想い、嫉妬心持たず、人様の眼線、気にせず、よくも愚直、悪くも愚直に生きて来た76歳の男の想いだ」

「今日の坂田プロのお話、コーヒーの香り強いと感じております。今日、私はアイスコーヒー飲んでいますが、ホットコーヒー、それもブレンドなしのコーヒーの香りを感じています」

「香りか。ただ、ゴルフは音だ。昨日の練習、ミスショット減って来ていると思った。私のミスはコスリ球70%、残る30%はダフリ15%、ヒッカケ15%と思うが、ヒッカケ球が減って来た。ゴルフはインパクトだ。インパクトの力の入れ様、体重位置、体の動きのバランスとインパクト姿勢作る要素は幾つもあるが、一昨日迄はボールの真下を叩く意識でスウィングして来た。だが昨日、ダフリ球3球出た。続けてだ。
 私は、逆は真なりと考える事の出来る人間だ。私は意識の眼線を右にズラした。常識であれば、ダフリ阻止したければインパクトポイントをダフリの距離だけ左へズラすだろう。私は右へズラした。右へのズラし、常識ならばもっとダフると考えるところだ。私は球の真下を叩く意識を右へと移した。それでダフリは消えた。昨日250球打ったが、150球近い球、一発のダフリも出なかった。
 ダフリを意識しての練習なんかしない。ミス球想定の練習もだ。シャンクを意識すれば突然のシャンクは出る。練習で大切なのはミスを想定しての練習しない事。無で打てばいい。無とは無心、無欲、無意識、無想、無我の5つの無打ちだ。ハンディ18であれば打てる心の領域と思う。ハンディ19迄であれば考え、悩みて打つ必要もあろうが、ハンディ18に達すれば5つの無打ちが要ると思う。
 一気にシングル入りするには無打ちは必要。ゴルフはどこかで苦しの時期と出会う。その時期、無難に通り抜ければ幸せなれど、無難に通り過ぎるは難しい。無が要る。何も考えず、結果を怖れず、結果を想定せずの愚なる心構えだ。子供の遊びには愚が宿る。大人の遊びにも愚は宿る。大切なのだ、愚は。愚直、愚鈍の愚、素朴で素っ気なしの愚じゃある。
 60歳過ぎれば愚を持つ覚悟が要る。60歳過ぎて大きい翼は広げられぬ。小さい翼だ、60歳過ぎし者の翼。70歳になればもっと小さい翼で充分。お前さん方は若い。一番の年長者、50歳前後と思うが、今は大きな翼で生きて行け。年取る程に学ぶ事は多くなるぞ。今、私の想い、若い頃、私が考えていた事とは逆の事が起きているのだ。その事に気付けば生涯学習の言葉も出て来る。老いる事を怖れるな。老いは変化であり、変化の先に進化在りだ。70歳に達すれば喜びが待つぞ。
 インパクト時の眼線、ほんの少し変えるだけでダフリ球出なくなった。今、福岡の夜、午後の10時過ぎても30度下りはしない。暑い。でもな、300球の球打てば、その300球のどこかで暑さ忘れて打っていた事に気付く。その時が無の球打ちだ」

「坂田プロの5つの無ですネ。遊びを大切にします。無欲であればと考えます」
「集中すれば時は早まる。無は集中を強める。今日はこれで終りだ」

18人全員、座る私に一礼して去って行った。
8月も終りに近い。
ただ、暑い日は続きそうだ。
体調良好です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月5日号より

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