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【ゴルフ野性塾】Vol.1789「インパクトの音を聴け」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

「優先順位、
何事に於ても

何が大切であるかの認識は必要と思う。優先順位持たずに生きるは平衡感覚、欠落して歩くと同様の危うさ持つと私は考えた。日々の生活を維持し得る基本姿勢と価値観、多くを必要とはしないが、それでも3つ4つは必要だ。『そんなもの要るかい!難しく生きるつもりなら要るかも知れんが俺はイヤだネ。優先順位なんてもん、学校で教わった事、あるか? ないぜ。学校で教えるのは生きる上に於て最も必要な基本の知恵と知識だけだろうが。算数でも国語でも英語でも社会理科でもみんなそうだ。要らないネ』と考える人もいるだろうが、その反発、生涯押し通せるものなら押し通してみるがいいと思う。押し通せはしない筈だ。人と人、人と世間、何で強く繋がっているかと申せば価値観だ。そして価値観は優先順位を求める。旨い物を食べたければ、好きな事をやりたければ優先順位持つべきと思う。一日3回の食事、梅干し1個をおかずとして生きたければ優先順位は要らぬが、果して梅干し1個で過せるか、私は難しいと思うがな」
「坂田プロ、優先順位持たぬ人っているのですか? 私は出会った事はありませんが」
「いる。嫉妬心強く持つ者程、優先順位稀薄だ。お前さん達は嫉妬心弱きが故に一週に1度、この場に集っている訳だろうが。そして、お前さん方の上司の嫉妬心の弱さ、大きな幸運じゃあった。感謝すべきは己の身の幸運。粗末にするなよ、出会いの幸運を」
「理解出来ているつもりです。理解出来ていなかったら週に1度の集い、続く事は困難でしょうから。我儘18名、上司運、極上の者ばかりです。最近、感じるんですが、職業運、上司運、人間運に恵まれているなとの想い、強く持つんです。これ迄、そんな想い持つ事は一年に1度か2度の事でした。やっぱり坂田プロの影響なのでしょうか?」

球の真下を叩き、音を見つけた。


「疑問が疑念に変れば不満生じるが、疑問が新たな価値観育むのであれば疑問は好奇心を生み、向上心を生むものとなる。ゴルフ然り。上達する上で何が大切かと申せばインパクトの音だ。今年の2月から練習場通い始めたが、最初の練習球数は150球だった。そして今は300球。この夏、300球の練習、1回も休まずに続ける事出来れば年末には400球打てるスウィングと体力、持てると思う。これ迄、スウィングの型、振りの感覚、体重移動と体の回転意識を求めて球打って来たが、インパクトの音への優先順位はその4つの後だった。いい球、いい振りを求めず、悪い球打たぬを目標の第一として打ち始めてからだ、リズムで250球打つ様になったのは。疲れが半分になった。そして、インパクトの音だけに集中する様になってから300球打てる様になった。昨日、初めて350球打った。76歳間近の爺様が練習中、1度も休まずの300球と350球だぞ。練習を2度か3度かに分けての350球であれば誰でも打てると思うが、1度の休憩もせぬ打席で300球打つのはなかなかに厳しいものだ。根気が要る。球打つ楽しさ持たねば出来ん事だ。今から暑くなる。途中、3度か4度の休憩は要ると思う。椅子に座り、水ペットボトル1本、お茶ペットボトル半分飲むつもりじゃいるが、今迄は休憩なしの300球だった。平成5年8月からテレビ熊本に一人語り一人打ちの『坂田信弘のゴルフ理論』なる番組を持つが、熊本空港CCでの6月の収録、ピン迄165ヤードのアゲンスト、6アイアンでピン周りに球は集った。飛距離も方向も5年前より上っているし、球筋もドロー球質だ。そして何よりもミスショットの数が減った。そりゃ若い時と較べりゃ飛距離落ちてはいるが、嘆く落ち様じゃない。60歳の頃よりは上だ。近い内、周防灘に行ってラウンドしてみる。30歳から50歳過ぎ迄過した周防灘だが、どの辺りにティーショット打ったかは憶えている。だから今と25年前を較べる事は出来る。そして7月下旬か8月上旬、鹿沼に行くつもりだ。研修生として1年、プロとして2年過した私のゴルフの故郷だが、50年前と今を較べたいと思う。今は50度ウェッジと9アイアン、6アイアン、3番ユーティリティを使っての一日300球の練習。リズムで打てば早打ちは出来る。30分で100球、1時間半あれば300球打てる。いい当り、いい球を求めず、ミスせぬスウィング求めて打って行けば、400球打てる日も来ると思う。インパクトの音だ。球の真下を叩いた時、自分の音を見つける事が出来た。75歳の音だ。フィニッシュは右肩、左肩、左肘迄一直線。スウィングの美はこの単純さに宿る。そりゃ75年も生きてりゃイヤな想い、辛い想いもあったと思うが、実はそのほとんどを忘れているのだ。いい想いも忘れ掛けている。在るのは現在だけだ。300球打つインパクトの音への想いが3カ月後に76歳になる私の優先順位一番だ」

「300球打ち続けて来て、スウィングで変った事はありますか?」
「ある。20年以上、トップ時の左の肘、曲げて打っていたが伸びた。50歳前からドライバー打つ時の左肘が曲り出し、アイアンも曲り55歳の頃には伸ばしても伸びん様になっていたが、トップで左手の甲を張り、左腕を飛球線後方に突き出す様になってから左腕は伸びた。これで振りの感覚、単純化した。ドライバーもアイアンもだ。そしてトップ位置はショートスウィングのトップ位置近くになり、フィニッシュ位置は高く大きくなった。インパクトの音を求める様になってからの変化だった。ダウンスウィング、体重は左足踵への一気の移動だ。糖尿病の数値も良くなった。食事後、1時間半後の血糖値は103から200迄の間。悪い数値じゃない。血圧は正常。やっぱり練習はすべきだと思う。だって私の職業、戦歴はトロフィーのある試合の優勝は一つだけの三流半だが、昔も今もプロゴルファーだもんな。錆びついた体・技・心だが、錆落しの300球じゃない。新たな体・技・心との出会いだ。リズムで打ち、球の真下を叩き、己のインパクトの音を作りにいけば錆落しの練習なんかにはならぬ。ラウンド時、持つはドライバーからサンドウェッジ迄、マジェスティ。パターは貸クラブを借りてのコースラウンド。そこだけは一期一会だ」

「面白いですネ。周防灘のラウンド、見学する事は出来ませんか?」
「出来る。いい球求めず、可もなく不可もない平凡な結果、求めたゴルフ、見たけりゃ来るがいい。ただし、雨の時は中止だ」
「贅沢ですネ。スタートが簡単に取れない時代なのに」
「雨ん中のゴルフと女の嫉妬は嫌いだ。ところで女房殿をまた怒らしちまったよ」
「また、やりましたか!?」
この日、18名の前での話は長くなった。
以下、次週稿。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年7月18日号より