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【ゴルフ野性塾】Vol.1787「低く打てばスピン量は増す」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日6月14日、
水曜日。

現在時午後2時20分。
野性塾大濠公園の男達18名が会社を出て大濠公園へと向う時間が来た。
欠けはしない。増えもしない。
18名が待つ大濠公園内のスターバックス屋外のテーブル。
挨拶を受け、18名のそれぞれの眼を見て話し始めるが、いつも同じ眼の強さじゃない。
私は弱き者の眼を見て話し始める。その者に語り掛けて行く。
途中、眼の力は変る。弱まる時もあれば強まる時もある。
それでいいと思う。人、それぞれの時を過せばいい。
18人が好むは人情話と助平話。
人情話した後の別れの挨拶、声は強まる。私の失敗した助平話した時の声は小さい。
笑いを堪えているのだろう。
15階から眺めるビル建築のクレーン車、また増えている様な気がします。
体調良好です。

50度のウェッジで低く強く打て。

ボールにスピンをかけて、ピピッとブレーキがかかったように止まるアプローチに憧れます。あのアプローチは、どうやって打っているのでしょうか。どんな練習をすれば、スピンアプローチを覚えられますか。練習場のダンゴボールでその練習はできますか。(前回と同じ)(東京都・中野凌平・36歳・ゴルフ歴6年・平均スコア94)


ゴルフを指導する上に於て一番必要なのは何か。
筋肉と骨の相互機能への知識と思う。
スウィング指導以前の大切な事である。
ジュニア塾開塾時、私は子供達の怪我を怖れた。
面白ければ、そして面白さの中から快感生じれば子供も大人も球叩きを辞めはしない。
まず、練習の量が増え、次に質が変化する。
ただ、練習量増せば体への負荷は生じる。
疲れから生じる怪我、体の欲する動きを無視したスウィング、要するに無駄な動き多いスウィング、そして癖多きスウィング生じれば球叩く程に怪我は近付いて来る。
面白くなければ、加えて不快感生じれば人はクラブを持たぬと思う。
イヤな思いして球を叩く理由など、どこにもないからだ。
それでも練習せよと命じられれば練習への息苦しさ生じよう。
強制はよろしくない。
私は子供達に強制はしなかった。自由な気持ちで打たせた。

振り返れば坂田塾への誤解は多かった。
「何でもかんでも無料だなんて嘘っぱちだ。そんな夢みたいな塾、どこにあるとゆうのだ。ゴルフやるには金が要る。ただで出来るスポーツじゃないぞ。その金、塾が出す? やっぱり親じゃないか? 最後は高い金払って一件落着の塾だ。入るな。長続きする塾じゃない」
私は反論しなかった。
平成5年開塾、熊本の財界、平成6年開塾の札幌塾、いずれも地元企業人の支援、取り付けていたが、その事伏せての入塾選考会だった。
知らぬ人は反発した。
嫉妬した。
己に出来ぬ事をやろうとする者への反発と嫉妬は強かった。
私は反発と嫉妬を無視した。
反発と嫉妬に手を出せば反発と嫉妬は拡散する。
その事、女性との付き合いで学んだし、女性の体、大好きな父の教えでもあった。

父は和菓子職人。
現在も残る熊本の和菓子のルーツと言われる熊本の甘酒饅頭とマルボーロは父の創作菓子であった。
私は長男雅樹と長女寛子に言った。
「甘酒饅頭とマルボーロはお前達の爺チャンが作ったものだ」
今の時代に合う菓子とは想わんが、あの味と形の素朴さが終戦後の熊本で大受けした。
人、それぞれ、時、それぞれのものはあるが私の自慢だ、私の父の作った甘酒饅頭とマルボーロは。
私は和菓子職人の息子。それも長男坊だ。
プロゴルファーにならなかったら私は和菓子職人になっていたと思う。
雅樹と寛子はショートケーキを好んだ。人の世の好み、派手さを生むは世情と生活、フラットになった時と思う。
昭和53年と56年生れの雅樹と寛子は地味な菓子に興味は持たなかった。

私の母と女房と私の3人、九州オープン出場時の熊本のホテルの部屋で甘酒饅頭とマルボーロを食べた。
「いつかは消える菓子だな。それでも30年間、作られ続けてる菓子だ。親父の味だ。親父の生き様同様、素朴でいいじゃないか。ただ、親父は助平だった。3カ月に一度、3日間、二本木の遊郭に入り浸りだったからネ。お袋もそこだけは泣かされたネ」
「忘れたよ。いい事も悪い事も全部、あの世へ行っちまえば残された者の笑い話になってしまうんだよ。人間、死に時が大事と言うけど、安らかに逝ける人って少ないんじゃないかな。その安らかさが一番大事で大切な様な気はするけどネ」
母も逝った。
弟2人と妹も逝った。
今、坂田の直接の血を引く者は私一人。
父の言葉、母の言葉を想う。
75歳過ぎて76歳へ向う途中の身、父と母の言葉を想い出す。記憶から外れていた言葉だった。
父と母への近さを覚える。
近くなって来た。

今、練習場で1日250球の球を打っている。西新のゴルフ練習場、70ヤード迄の地面は芝生の大地であり、スピンアプローチ打つには最適の環境と想う。
我が身、幸運だった。
50度のウェッジと9アイアン、そして6アイアンと3番ユーティリティで打つ。
6アイアンで打つ球数が最も多く、50球は打っている。
貴兄の質問を受けて、サンドウェッジ、55度のウェッジ、50度のウェッジでスピンアプローチを打ってみた。
50度のウェッジで打てばスピンの量、増える打ち方出来る事を知った。
低い球を打つのです。
低く打てばスピン量は増す。
落ちた瞬間、落ちた地点から動かなかった球は50度のウェッジで打った球だけだった。
55度も60度のサンドウェッジも球は右か左へ曲って止った。
私にとってスピン生むには50度のウェッジが最善のクラブでありました。

貴兄は模倣せよ。
私の練習のやり方を。
50度で打て。
低い球を打て。
強く打て。
それでスピン量を増やす事、出来ると思う。
サンドウェッジでは打つな。
低く打っても回転量の少ない棒の球質出るであろうから。
私は6アイアンで子供達のスウィングを作った。
そして、パターとサンドウェッジと6アイアンでコースラウンドさせた。9ホール、50切れれば5本のクラブを与え、スコア3打縮めれば7本、その次にフルセット使用を許可した。
ゴルフ始めて2年弱で日本アマに出場する塾生が出た。
今、想う。
サンドウェッジでなく、50度のウェッジでラウンドさせていたら何が変ったのかを。
チップインの確率、高まっていた様に思う。
塾生全員にもっと攻撃的なゴルフ生れていたと思う。

貴兄への助言である。
50度を使え。
練習場のボールでも落ちて動かぬ球は出せる。
ただ、人工芝のフェアウェイであっても落ち際の球の質は見える筈。その落ちて動かぬ球こそ、素直素朴なスピンボールだ。
右か左へ弾かれて止る球を打っている内はまだまだと想う。
クラブヘッドのスピード不足だ。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年7月4日号より