【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.755「他人からの評価にはいいかげんな点もありますが、参考資料と思えば役に立ちます」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
自分はアプローチとパットが得意のつもりでしたが、仲間からは曲がらないのが長所だと言われます。自己評価と他人からの見方が違う場合、そのギャップは気にするべきなのでしょうか。(匿名希望・38歳)
わたしがプロ入りした当初、ソフトボールで国体に優勝した投手だった経歴があったことから女子プロ界にパワーの時代を呼び込む大型新人と騒がれました。
同時に判で押したように書かれたのが、「小技に難がある」とか「アプローチでポカをする」といった寸評でした(笑)。
当時の記者さんたちは、わたしのプレーをよく観察もせずに、ただ飛ばし屋のイメージを勝手に思い描いて、グリーン周りには問題があるだろうとばかり、面白おかしく書き立てていたのだと思います……ホント失礼しちゃいますよね。
確かに、自分の持っている技術や実力を本人が客観的に判断するのは難しいことかもしれません。
人は過大評価して慢心する恐れもあれば、反対に過小評価しすぎて自信が持てなければいつまでも結果が出ないこともあります。
それだけに、監督やコーチといった指導者による冷静で的確な評価がレベルアップしていくうえでの大きな道しるべになると思います。
でも、必ずしも他人の評価が正しいとは限りません。
プロ駆け出しだった当時、わたしにつけられたレッテルがいいかげんなものだったように、本人には納得できない評価もあると思います。
もし同時期にゴルフを始めた仲間がいたとして、競争相手だと思うことはあっても上達の早さや飛距離の差をそれほど神経過敏に比べたりするものでしょうか?
まして相手があなたのことを、そこまで気にしているのかしら?
誰もそんなにライバルだなんて思ってはいませんし、評価が自分の思い描くイメージと違っていたからといって気に病むことはありません。
まして日ごろから仲良くしているのに、容赦のない辛口な見方をする人はいないでしょうし、必要以上にヨイショして褒めそやすのも不自然。
たいていの人は、その人のゴルフの中にできるだけ「いいところ」を見つけて評価しようとすると思います。
そうは言っても、周りから自分がどう見られているかに影響されるのは、いわば人間の業ともいえる習性で気にするなといっても無理ですよね。
SNSで拡散・炎上するのが当たり前になったネット時代の今は、他人の評価から受ける影響が、昔と比べると厳しい時代になっています。
と、泣き言を言っても始まりません。
いずれにせよ、頼んだわけでもない自分に対する評価で、驚いたり傷ついたり、自信をなくしたりするのは災難でしかありません。
受け取り方次第と強がってみても、現に気持ちがふさいでしまうのは避けられない。
せめてできることは、思いもしなかった意外な評価から、参考にできる部分を探し出して、自分のために役立てることでしょうか。
アプローチとパットにこそ自信があったのに、いやキミの長所は曲がらないところだよ、と評価されているなら、少なくとも自分は相手よりドライバーが安定しているということか……そう解釈することで、自分のゴルフを改めて見直すキッカケになるかもしれません。
あなたのゴルフ、あなたのスウィングで理にかなった点や優れた点を維持し伸ばしていきながら、足りない部分を鍛え補っていく──それが練習の目的でしょう。
そして、その両方のバランスの上にこそレベルの向上がある。
そう考えると他人の評価は、自分にとってバランス配分を考えるための貴重な参考資料にはできそうですよね。
「強い選手ほど、考え方次第ですべてを好転させる」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年3月7・14日合併号より
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