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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.753「守りのゴルフが時として“攻め”になることもあります」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


シングル入りして競技で成績が出るようになってからは、ゴルフの怖さを知ったというべきか、少しでも狭いと感じたら刻むようになりました。攻めか守りか、気持ちの切り替えのアドバイスをお願いします。(匿名希望・39歳・HC8)


質問のお便りには、「以前は怖いもの知らずで、常にしっかり振り切れていたのに、このごろは大叩きはしなくなったものの、会心のスコアというのも少なくなった気がします」とも記されています。

ゴルファーは、ボールを真っすぐ、遠くへ飛ばし、さらに狙った場所へ思い通りの打球を打つことを目指して練習を積み重ねていくことが多いでしょう。

さらに飛ばすだけではなく、安全にスコアを作るためのプレーを選ぶようにもなる。あなたは自分でも認めているように、ゴルフの怖さを知ったということではないでしょうか。

確かにイケイケのときは楽しくてよいでしょう。しかし、コースにはたくさんの罠や危険が待ち構えています。

少し間違えば大叩きもある。それがゴルフというゲームの本質でしょう。

トーナメント中継などでも、パー5の2打地点の選手が2オンを狙おうとしているとき、アナウンサーが「攻めのゴルフで勝負に出ます!」と言うことがあります。

2オンを狙えば「攻めのゴルフ」で、アイアンで慎重に刻めば「守りのゴルフ」というわけですが、ほんとうにそうでしょうか?


2オンに成功すればイーグルの可能性も広がるし、第3打のアプローチを上手く寄せなければ楽々バーディとはいかなくなるのは確かです。

攻めたからといって必ずスコアが縮まる保証はないし、守りに入ったおかげで確実にパーが取れる確約もありません。

どっちの道を選んでも、その結果にリスクは付いて回るのです。

2オンを狙った代償が手前の池に入れてのダボになり、刻んでも3打目が寄せやすい距離とライならピタッと寄せてバーディになることもあります。

攻めと守りが逆転することは往々にして起こります。

問題はプレーヤーが状況をどう判断して、どんな選択をするかです。

攻めるか守るかというより、目の前にある条件をいかにしてクリアするかという考え方、すなわちショットマネジメントをするということです。

500ヤードくらいのパー5なら、必ず2オンを狙って攻めていったけど、今はそこまで積極的になれずに考えてしまう。

距離的には届くかもしれないけど、曲げれば右の池に入る恐れもあるし、ラフにつかまると次で寄せるのも難しくなる……。

ゴルフでなくても、さまざまな結果を予測して最悪の事態に備えるのが、リスクマネジメントというものです。

選択可能なショットの成功率などを勘案して判断を下す。そこには多少のギャンブル要素も加わってくるでしょう。

最終的に強気なチョイスと慎重な方策に分かれることはあっても、それがそのまま攻めか守りかに分類できるとは思いません。

いまは経験値によって集めた情報をもとに合理的な判断ができるようになった、と考えるべきじゃないかしら。

ゴルファーは経験を積むことで、内的外的要因を複合して頭に想定できるようになる。それがゴルファーとしての成長であり、円熟したプレーといわれるものです。

以前にもお話ししましたが、わたしの考え方のなかに守りのゴルフというものはありません。

そこには、自分の持てる技術をもとにした賢いマネジメントか、そうでない選択があるだけだと思います。

あなたは、「シングル入りしてから刻むようになった」と言っていますが、それはもしかしたら周りの目を気にしているから?

シングルなのに、みっともないゴルフはできない、と思っているとしたら気の回しすぎですよ。

シングルはこうあるべきなんて窮屈なイメージは忘れていいのです。

あなたにはあなたのゴルフがあるはず。

あなたが自信を持って下した選択こそが、攻めでも守りでもない、積極的なマネジメントなのですから。

「まずはやってみることです!」

週刊ゴルフダイジェスト2023年2月21日号より

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