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【私の「とんぼ」愛】ブルボン小林<前編>「ゴルフ漫画としてというより、漫画として良い」

4月からのテレビアニメ放送を前に「オーイ! とんぼ」好きを自認する著名人の皆さんに“とんぼ愛”を語ってもらうリレー連載がスタート。第一弾は、コラムニストのブルボン小林氏。

イガイガは読者の“代理人”

――ブルボンさんはゴルファーではないそうですが、なぜ「オーイ! とんぼ」を読むように?

ゲームの影響ですね。昔のファミコンとかパソコンゲームは、必ずと言っていいほど、ゴルフと麻雀がラインナップされていたんです。僕の場合はパソコンでしたけど、ゴルフゲームがすごく充実していたんです。それでゴルフを知りました。

――そういう入り方でしたか。

実際にゴルフはプレーしたことはありませんが、ゲームを通じていろんなコースのことを知りました。栃木県の「ジュンクラシックCC」なんて随分回りましたよ(笑)。ゲームでパーを取るとキャディさんが「ナイスパーです」と言ってくれるんですが、バーディを取ると「ナイス、バーディでぇす」という、なんだか艶のある言い方に変わるんですよ。

――あはははは。じゃあ、バーディは取った経験があるんですね。

イーグルもありますよ(笑)。そんなわけで、ゴルフは半可通ではありますが、知識だけはあったんです。日曜の夕方のゴルフ中継をテレビで何の気なしに見ても、わかりました。あとは、漫画の『プロゴルファー猿』の影響も大きかったですね。

――ジャンルとして抵抗はなかったんですね。

『オーイ! とんぼ』は漫画コーナーに置いてなくてスポーツコーナーのゴルフ雑誌の横に置いてあったので、逆に「これは買いだ!」と思ったくらい。吉祥寺の書店で、まだ2巻が出た頃だったかな、買ったんです。読んだらすごく良くて。ゴルフ漫画としてというより、漫画として良い。なのにね、漫画評をしている同業者たちからは相手にしてもらえなかったり。彼らはいわゆる漫画誌しか読んでいないから……。ゴルフ誌に掲載されている漫画を紹介しても、半笑いされてる感じで。「そんなの差別じゃん!」と思ったことも。

――あら、そんなことが。

でも、新刊の帯を見ると「売れてます」みたいなことが出ているし、まあ売れているんだろうと。しかし、その読者はどこにいるのかなと思いながら(笑)……。いろんな人におすすめしても、共感してくれたのは麒麟の川島明さんぐらいだったなあ。でも、気付けば48巻まで出ている。しかも、中だるみがないのがすごい!

――普通、ちょっとありますよね。

それがほぼないんですよねえ。あとは、僕はゴルフをしませんけど、「とんぼ」には、すごく専門的なゴルフの解説が出てきますよね。イガイガが説明するじゃないですか。手をこうやるとこうなって、だからとんぼはどうのこうの……みたいな。そういう部分、僕は実はよくわからないんですよ。でも、それってほかの漫画でも同じなんです。読み飛ばせるのが漫画のいいところ。ものすごく難しい数学をテーマにした漫画もありますけど、数学がわからないから伝わらないかといったら、そんなことないでしょう。将棋はわからないけど将棋漫画は好きとか、漫画はそれが両立できるのがいいんです。でも「とんぼ」に関しては、まったくわからないわけではなくて、ほどほどにわかるのがまたいい。これは、ミラクルなんだな、セオリーじゃないことをしているんだな、とか。だいたい、イガイガが説明してくれるからですけどね(笑)。『ガラスの仮面』における北島マヤを見守る月影先生のポジションで。イガイガ、いいですよねえ。

とんぼの“超絶技”を理解できない読者でも、イガイガが解説してくれるのでポカーンとせずに済む。これぞ『ガラスの仮面』方式

――となると、好きなキャラクターを挙げてくださいというと、イガイガになりますか?

それは難しい。みんないいですから。キャラクターが魅力的なんですよね。ただ、ゴルフダイジェストの読者からしたらイガイガが、自らの“代理人”みたいな感じになるんじゃないでしょうか。中年で、夢破れはしたけれど、未来ある若者を見守る……オレ、みたいな。郷愁というのかな。あと、イガイガにはマチズモ(男性優位主義)みたいなものが、ありそうでない。一方、エリート少女のお父さんたちがモラハラ、パワハラをしていたりするでしょ。イガイガは自分の息子に対して、それで失敗していますよね。だから「もうしない」と決意している“理想の中年”というかね。“少女を見守る男”というキャラクターは、もしそこに、愛玩するような視点があったりしたら気持ち悪いことになってしまう。でも、イガイガだけじゃなく、とんぼを見守る村の人たちもそうですけど、そういった視点がないでしょう。だから、読んでいて心地いいのかもしれませんね。

――そうなんです。「オーイ! とんぼ」には、イガイガのほかにも魅力的な登場人物がいっぱい。次回、さらにブルボンさんに聞いていきます。

>>後編へつづく

ブルボン小林

ブルボンこばやし。1972年生まれ。「なるべく取材をせず、洞察を頼りに」がモットーのコラムニスト。さまざまなメディアで漫画評の連載を持ち、小学館漫画賞の選考委員も務める

週刊ゴルフダイジェスト2024年2月27日・3月5日合併号より

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