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【パットの打感研究】タイガー・ウッズが愛し、スコッティ・キャメロンがこだわる至高のパター素材GSS。ジャーマンステンレスって一体なんだ?

タイガー・ウッズのパターといえば「 ニューポート2 GSSプロト」。メジャー15勝のうち14勝を挙げた、まさにエース中のエース。形状はオーソドックスなピン型ですが、私たちがゴルフショップで手にするパターと決定的に違うのが、ジャーマンステンレスという鋼材(スチール)を使用していること。ジャーマンステンレス…いったいどんな金属なのかご存知ですか?

ジャーマンステンレス製パターの市場価格は、なんと数十万~400万円オーバー

憧れのプロと同じクラブを使ってみたくても、ドライバーやアイアンは同じスペックでは打ちこなすのは困難。でもパターは違います。

石川遼のエースパター「オデッセイ ブラックシリーズ iX#9」や渋野日向子の「ピン シグマ2 アンサー」など、私たちアマチュアだって、彼らとまったく同じクラブを使うことができるのです。

でも、2019年のマスターズで劇的な優勝を飾り、ZOZO選手権でPGAツアータイ記録の82勝目を挙げた、タイガー・ウッズが使用している「タイトリスト ニューポート2 GSSプロト」となると話が違ってきます。

ニューポート2はスコッティ・キャメロンの定番モデルであり、多少デザインが違うとはいえ、タイガーと同形状のクラブを手にするのは難しくありません。問題は使われている素材です。

タイガーと同じパター、同じ打感を感じてみたいけれど…

タイガーのエースパター「タイトリスト ニューポート2 GSSプロト」

私たちが、ゴルフショップで見かけるスコッティ・キャメロンのパターに使われているのは、多くがSUS303と呼ばれるステンレス。SSSと刻印されているモデルもあり、ご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。

でもこれは、タイガーのエースパターに使われているGSS(ジャーマンステンレススチール)とは、まったく別物。

GSSが何かは後述しますが、GSSを使ったパターは非常に珍しく、スコッティ・キャメロンやピレッティなどほんの数社が製造していますが、その価格は数十万~400万円ほど。

フェース面はツルツルで、タイガーのパターに近いタイムレス ニューポート2。値段は80万円!

もはやコレクションの対象に近く、コースで気軽に使うには相当な勇気が必要です。

同じステンレス製でありながら、一桁ではきかない価格差。その違いはいったい何なのでしょう。

ステンレスとは「ステン・レス」さびにくい鋼鉄のこと

そもそも、ステンレス(SUS)とは、”Staine less steel”のことで、”Stein less”=「さびにくい」”Steel”「鋼鉄」。つまり「錆びにくい鋼鉄」のこと。

おおざっぱにいうと、ステンレスとは主成分の鉄にクロムを12%以上添加した高合金鋼(特殊鋼)のことで、クロムを加えることで表面に酸化膜ができ、鉄よりも錆びにくくなっています。

ちなみにアイアンでよく使われる軟鉄もその名の通り”鉄”ですが、

軟鉄は成分の99%が鉄で残り僅かが炭酸マンガン等…。

ステンレスは成分の75%が鉄で残りがニッケルクロム等となっています。

ジョーダン・スピースは打感の軟らかい軟鉄製のキャメロンを愛用

鉄の含有量が多い軟鉄はその名の通り打感が軟らかく、含有量の少ないステンレスは硬くなります。

ではステンレス製であればどれも同じかというと、ことはもう少し複雑です。

ジャーマンステンレスってなんだ?

現在、多くのパターに使われているステンレスはSUS304とSUS303です。

ホームセンターなどで切り売りされているステンレスの丸棒の多くはSUS304で、耐食性に優れているので腐食(錆び)が問題になる環境に適しています。

しかし、SUS304は削った面が硬化するという特性があるため、鋳造(溶かしたステンレスを型に流し込んで成型)には適しても、削り出しには適していません。

一方SUS303は、SUS304に硫黄やリンを添加して削りやすくしたもので、耐食性は304に劣りますが、塊から削り出しやすくフェース面の細かなミーリングなども施しやすい金属です。

キャメロンに代表される一体成型の削り出しを売りにしたパターの多くがSUS303を使っているのはこのためです。

こちらはSUS303の塊から削り出されたスコッティ・キャメロンの「ニューポート2」

ピンの先代Vault アンサー。こちらも素材はSUS303

ジャーマンステンレスもSUS303なのですが、問題は、このSUS(Steel Use Stainless)の部分。

日本ではJIS規格によって鋼種規格が定められていますが、アメリアではANSI、ドイツではDINと呼ばれる規格を採用しています。

これらの規格ごとにステンレス鋼に含まれる鉄分、炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄、ニッケルなどの割合が微妙に違うことから、打感や打音が違ってくると言われているのです。

ジャーマンステンレスは打感がいい?

タイガーの感じている”打感”はどんなものなのか…

ドイツ規格ジャーマンステンレスの打感は「硬くて軟らかい」プロ好み!

ジャーマンステンレスはその名の通り、ドイツ規格のステンレス。クロムの含有量が多く、硫黄成分が少ないため、日本やアメリカ産のSUS303よりも硬めになっているのだそう。

そのため、打感は硬く感じますが、ボールが吸い付くような感覚もあり、トッププロたちの言葉を借りると、その打感は「ソリッドでマイルド」とのこと。

「硬くて軟らかい」

何とも不思議な言い回しですが、その適度な硬さが、タイガー・ウッズをはじめ、PGAツアーの高速グリーンでプレーする選手たちに好まれる由縁なのかもしれません。

ジャーマンステンレス製パターを選んだトッププロ

リッキー・ファウラー
ニューポート2タイムレスGSS(スコッティ・キャメロン)

ファウラーのニューポート2タイムレスGSS

松山英樹
ニューポート2タイムレスGSS(スコッティ・キャメロン)

藤田寛之
スコッティ・キャメロン プロトタイプ

他にも、
ゲーリー・ウッドランド「ニューポート プロトタイプ」
アーニー・エルス「 Ca&Coニューポート2 GSS」
セルヒオ・ガルシア「 ニューポート2 GSS」
アダム・スコット「ニューポート2 GSSスラントネック」
宮里優作「Circa GSS」
など、多くのトッププロがスコッティ・キャメロンのジャーマンステンレス製パターを手にしてきました。

いつかは、タイガーをはじめトッププロと同じ打感を体験してみたいと思うゴルファーは多いのではないでしょうか。

非常に高価なパターなのでなかなか手にする機会がないのが、一番の問題なのではありますが……。