【名手の名言】コーリー・ペイビン「ミスショットした瞬間には、まず最悪の状況を頭に浮かべるんだ」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は米ツアーで15勝、飛ばなくても勝てることを証明した知性派ショットメーカー、コーリー・ペイビンの言葉をご紹介!

ミスショットした瞬間には
まず最悪の状況を頭に浮かべるんだ
コーリー・ペイビン
この言葉を残したのは、“飛ばないプロ”として知られながらも1995年の全米オープンを制したコーリー・ペイビン。彼のこの一言には、結果に動じないメンタルコントロールの神髄が詰まっている。
ペイビンは175cm・70kgという小柄な体格で、飛距離が武器にはならない選手だった。当時のドライバー飛距離は約260ヤードと、ツアーの中では飛ばない部類。それでも15勝を挙げ、1991年には賞金王に輝いたという実績は、精密なショットと卓越したマネジメント能力の賜物だ。
なかでも彼の代名詞はフェードボール。ターゲットに対して狙った通りのカーブを描き、ピンポイントにグリーンを捉えるその技術は「針の穴を通す」と称されるほどだった。
1995年、全米オープン最終日、名門シネコックヒルズGCの最終ホール18番。228ヤードを残し、ペイビンが手にしたのは4番ウッド。ここで彼が放ったフェードボールは、ピンそば1.5メートルに着弾。これが勝利を決定づけるショットとなり、乾坤一擲の歴史的名場面として今も語り継がれている。
誰よりも安定感があり、技術に裏打ちされたゴルフを展開していたペイビンでさえ、もちろんミスはする。そのときには表題の言葉のように最悪の場面を予想しておくというのだ。そうすれば、もし最悪であっても落胆はしないだろうし、それより少しでも状況がよければ儲かったな、と思うはずであろうと。
これは、失敗に対する心の準備をするため。最悪のシナリオを想定しておけば、それより少しでも良い状況なら“儲けもの”とポジティブに受け止められる――これがペイビン流のメンタルマネジメントだ。
多くの選手がミスのたびに動揺する中、ペイビンは冷静さを保ち、次の一打に集中することで数々の勝利を掴んできたのだ。
ゴルフは失敗のスポーツとも言われる。一打一打の結果に一喜一憂せず、心を乱さず次に進む姿勢こそ、長く勝ち続けるための秘訣。「ミスした瞬間に最悪を思い描く」。それは悲観ではなく、むしろ前向きにミスを受け入れ、次に活かすための戦略なのだ。ミスショットの処理方法も心の持ちようで、プラスに転じさせられるのである。
ペイビンの言葉は、アマチュアゴルファーにとっても大きな学びとなる。次のラウンドでも、この言葉を胸に刻んでプレーしてみてはいかがだろうか。
■コーリー・ペイビン(1959年~)
米・カルフォルニア州生まれ。ジュニア時代、UCLAでも活躍し、82年にプロ入り。175センチ、70キロの小兵ながら、91年に賞金王を獲得し、95年には全米オープン制覇。最終ホールの2打目はゴルフ史に残る乾坤一擲のショットだった。フェードを武器にして米ツアーで15勝。2010年のライダーカップには、米国チームのキャプテンに選出された。