【キミこそ王子だ】Vol.280 中2で300Y超え!? 個性的スウィングながら規格外の飛距離を誇る名古屋の大器
雑巾王子こと武市悦宏プロが、全国の有望なジュニアゴルファーのもとを訪れ、大人ゴルファーにも役に立つゴルフのヒントを探る当連載。今回の王子候補は愛知県出身、名古屋市立守山北中学校2年、松山茉生くん。7月末に行われた「中部ジュニアゴルフ選手権」で優勝した、彼の魅力は驚異的な飛距離。武市がその秘訣を語る。
今回の王子候補
松山 茉生くん
まつやま・まお ●主な戦歴/2022中部ジュニアゴルフ選手権12~14歳の部 優勝 ●ベストスコア/63(烏山城CC) ●練習/毎日300~400球2~3時間 ●トレーニング/冬場にランニング5キロ
「ゴルフやったら、ゲームセンターに連れていってあげる」
トップアマの父親は、5歳の息子を、甘い言葉でゴルフに誘った。
エサに釣られた茉生くんは、そのままゴルフにハマり、中学2年生で「中部ジュニアゴルフ選手権」を制するまでに成長した。
父親の作戦、大成功である。
しかも、スウィングがスゴイ! 取材に訪れた武市は、しばらく口をあんぐり開けて茉生くんが放つ球に見とれていた。そして、興奮気味に、「こんなに飛ぶ中学2年生はいまだかつて見たことがない。何から何まで規格外だ」と叫んだ。
「ゴルフはお父さんに教わっているの?」
「はい。でも細かいことはあまり言われません。とにかく、振りやすいように振れ! と」
茉生くんには3つ上の兄がいるが、彼に飛距離で負けたくない一心で振っていたら、いつのまにか“飛ばし屋”になっていたという。
「ヘッドスピード58m/s、ボール初速85m/s、飛距離340ヤードぐらいは出てるんじゃない?」
「さすがにそこまでは(笑)」
「あくまでボクの目測だけど、ケタ違いであることは間違いない」
武市は「飛距離だけ切り取ったら、国内ツアーでは間違いなくトップクラス。世界にも引けを取らない」と断言。
その秘訣は何なんだろうか?
「茉生くんのスウィングは、いい意味で個性的。でも、飛ぶ要素が凝縮されたスウィングであることは確か。まず注目は高さ。彼は、右ひじがフライングエルボーで、トップがめちゃくちゃ高いのが特徴。高さが増せば、重力を活用できて、クラブの落下速度が増すからね。もうひとつ注目したいのは回転速度。アドレスからトップまでは右足体重で、そこから一気に左のお尻を引くようにしてボディターンをし、左足体重でインパクトする。その速度がめちゃくちゃ速い。右から左に体を揺さぶる体重移動とは種類が違うけど、体格の良さを生かしたスウィングだよね。だから、パワーを余すことなくボールに乗せることができる」と武市は解説する。
いわゆる“レイドオフ”“シャロースウィング”といった、世界の主流とはまったく違うスウィングなので、周りの有識者から「見直したほうがいいのでは?」とアドバイスされることもあるそう。ただ、「これはこれで、全然アリ!」というのが武市の見解だ。
「クラブは気持ちよく振るのが一番だよ。多少個性的に見えるけど、インパクトでフェース面はほぼスクエアだし、これだけヘッドが走ってるんだから何の問題もない」
「はい。ボクも気持ちよく振ったほうがいいです」
「そうだよ。バッバ・ワトソンだって個性的なスウィングだけどメジャーチャンプになれるんだから。これからも自分の感性を信じて」
中2なので、これからいろいろな壁にぶち当たるかもしれないが、恵まれた体格と、飛ばしのセンスは、彼をきっと助けてくれるはず。
「またまた、“松山”が世界で有名になっちゃうかもね」と期待を寄せる武市であった。
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月23・30日合併号より