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ゴルファーの夏バテ防止に“ゼリー飲料”が効く! ただし「糖質ゼロ」にはご用心?

プロの試合を見ていると、ラウンド中にゼリー飲料を飲んでいる選手をよく見かける。コンビニやドラッグストアの棚を見ると、ゼリー飲料は10種類、20種類は当たり前の品ぞろえ。どれを選べばいいのだろう、そもそもランチ休憩があるアマチュアゴルファーにラウンド中の栄養摂取は必要なのだろうか。専門家に聞いた。

PHOTO/Hiroaki Arihara

解説/柴田麗(管理栄養士)

筑波大学大学院修士課程修了後、明治製菓株式会社〈現・(株)明治〉に入社。プロゴルファーの諸見里しのぶ選手、プロサッカーの酒井宏樹選手、元ラグビー選手の五郎丸歩氏ら、さまざまな競技のトップアスリートからジュニア選手まで、栄養サポート業務に携わる

スタート前、プレー中は糖質補給を!

アマチュアの1ラウンドがトータル5、6時間として、ハーフにはランチタイム1時間でしっかり食事。エネルギー不足になり得るだろうか?

管理栄養士の柴田氏は「朝ご飯を食べて、その後、1、2時間運転してコースに向かっているとなると、ランチ休憩までに体内のエネルギー源が使われているので、ラウンド途中にエネルギー不足になる可能性もあります」という。そう、多くのアマチュアゴルファーは早朝に起き出し、都内のゴルファーなら運転の時間も長い。さらに、これからの酷暑ラウンドでは体力の消耗も激しくなる。「カートに乗るのか歩きなのか、あとは腕前にもよるとは思いますが」(柴田氏・以下同)。確かに、暑いなかアイアンを数本持って走る機会が多いゴルファーなら特に“ガス切れ”は想定しておくべき。冷たいドリンク類とともにゼリー飲料を用意しておけば安心だ。

まず、なぜゼリー飲料がいいのか。「のど越しがよく、水分と同時に摂取できるのは大きなポイント。夏は食欲が落ちる人が多く、特に暑いなか、固形物を口に含みたくないという方も多いでしょう。ゼリー飲料は冷やしているケースが多いでしょうから、飲みやすく、ほてった体をクールダウンさせることもできます。同時に水分補給もできるので、固形物を食べ、スポーツ飲料を飲み……と繰り返すよりずっと楽ですよね」。ただ、ゼリー飲料を飲んで栄養補給するのと熱中症対策はまた別なので、その点はご注意を。

おにぎりやバナナは女子プロにも支持者が多い補給食だが「暑くなる時期は、どうしても傷みが心配になります。ゼリー飲料は衛生面という点でも優れていると思います」。もちろん持ち運びしやすいというメリットもある。


では、選び方のポイントは?「まず、商品名をチェック。そして、パッケージの裏の成分表示を確認してほしいです」。えっ、商品名?「エネルギー、エナジーチャージなどと書いてあるものは、スポーツ中のエネルギー補給向きと考えていいでしょう。逆に『カロリーゼロ』『糖質ゼロ』などとうたわれている商品は、スポーツ中のエネルギー補給には基本的に向きません」

そもそも、ショットしたり、歩いたりなど、体を動かすために体内で必要とされるのは糖質。脳の主要なエネルギーもまた糖質。ゴルフは体はもちろん“頭”を使うスポーツであり、エネルギー源として糖質は欠かせない。「カロリーゼロや糖質ゼロのゼリー飲料は、たとえばダイエット中の人が口さびしいとき、糖質は取りたくないが栄養摂取はしたいというようなときに飲むのがいいでしょう」。

「エネルギー」の文字に注目!

パッケージの裏面には1袋あたりの栄養成分表示がされているので、そちらもチェック。「カロリーは50キロカロリー以下のものから200キロカロリー近いものまでさまざまですね。たとえば、180キロカロリーだと『高いな』と思う方もいるかもしれませんが、朝食をしっかり食べられなかったという人はこれぐらいのものを摂取してもいいと思います」

ゼリー飲料はサッと飲めるので、自宅で朝食を食べる時間がなくても移動中に摂りやすいメリットもある。180キロカロリーならおにぎり1個程度だ。「成分表示でも糖質(炭水化物と表示されているケースも)をチェック。ここが『0』でないことが大切です」。運動時、体内にグリコーゲンという形で蓄えられているエネルギー源が使われており、それを回復させるために糖質を摂取することが必要。巷では糖質制限ダイエットが大ブームだが、筋力や集中力などゴルファーのパフォーマンスアップにつながる栄養素であることもお忘れなきよう。

摂取のタイミングだが「体内に常にエネルギー源がある状態が必要。スタート前に一気に飲むというよりは、ホールごとに口に含む、ちびちび飲む、という摂取法がおすすめです」。

ゼリー飲料の選び方のポイント
(1)ラウンド前はエネルギー補給系を

糖質が含まれているものを選ぶ。カロリーゼロ、糖質ゼロなどの商品はスポーツで体力を消耗する際には向かない。
(2)好みの味を見つける

味が好みでないと結局飲まない。「ゼリー飲料はあまりおいしくない」は過去の話。各種フレーバーを試してみよう。
(3)ラウンド後はプロテイン入りを

ゼリー飲料はラウンド前の「これから頑張るぞ」のときだけでなく「明日に疲れを残したくない」ときにもいい。

ラウンド後ならプロテイン入りを

最近のゼリー飲料は常温でもおいしく飲めるよう工夫されているものが多いが、冷たいほうがいいなら、凍らせたドリンクと一緒に保冷バッグに入れておく方法もあり。また、ゼリー飲料自体を「凍らせてOK」のものもあるので、そちらの表示もチェック。「凍らせてOK」と表示のないものは、溶けると水っぽくなってしまうのでご注意を。

「あとは味。これはけっこう大事な要素です。嫌いな味のものだと『栄養補給のため必要』と思っても結局飲まないもの。自分の好みの味のものを見つけておき『これを飲むと落ち着く』と思えるようになるといいですね」。栄養補給が気分転換になることもあるので、大叩きしてガッカリしたら、ひと口ふた口。それで「よし、次のホールも頑張ろう」と、気持ちを切り替えて。

では、ランチをしっかりとったゴルファーは、後半ハーフでは栄養補給の必要はなし?

「昼食の直後から栄養補給を始めてとは言いませんが、1時間以上経過したら、最終盤のホールのスタミナ切れを防ぐために、こまめにエネルギー補給をしていきましょう。そして、ラウンドが終わったときにこそ摂取してほしい栄養素があります。タンパク質です」

疲労回復に欠かせない栄養素だが、最近ではゼリー飲料でも商品名に「プロテイン」と入れ、タンパク質を摂取できることをアピールするものもある。成分表を見るとタンパク質が他のゼリー類と比べて多い。ということは“プロテイン系”ゼリー飲料は、ラウンド後に飲むのが良さそうだ。ラウンド後に飲んでいると「もうハーフ回るの?」と驚く手合いもいるだろうが、そんなときは「これで明日が違うから」と教えてあげようではないか。

酷暑ラウンドにぜひ試してみて。

「ゼリー飲料でも、ラウンド前に飲んだほうがいいもの、ラウンド後に飲んだほうがいいものがあります」(柴田氏)

ゼリー飲料以外で“もぐもぐ”するプロも多い

ちなみに、ゼリー飲料以外で栄養補給をしているプロもいる。たとえば、最近話題になったのが「リシャール・ミル ヨネックスレディス」最終日での勝みなみ。なんとイカの姿焼きをもぐもぐしているシーンがテレビに映し出されて話題になったが……。

「イカは低脂質でタンパク質が豊富です。リフレッシュのために、ラウンド後半やラウンド後にお薦め。もぐもぐと噛むことが気分転換になります」。噛むことは気分転換になるほか「脳の血流が良くなり、集中力維持にもつながる可能性があります。その点ではグミなどもいいですね」

噛むことがいいのなら、最近、健康志向の人に人気のナッツ類はどうか。「ナッツは良質な脂質が豊富ですが、エネルギー源となる糖質は少なめなので、ラウンド中のエネルギー補給としては向かないかもしれませんね」。そもそも手を拭いて小さなナッツを一粒一粒出していたら、スロープレー必至である。あとは「チョコレートは夏はどうしても溶けてしまうので……。そのほかなら、キャラメルやドライフルーツ、ラムネなどもいいと思います。ラムネのシュワッとする感じは気分転換にもなります」。ちなみにタイガー・ウッズはキャディバッグにドライフルーツを入れているという。

日本選手はおにぎりとバナナが定番

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月12日号より