【浦ゼミナール】Vol.28 「迷いは禁物! パッティングは“決めつけ”が大事」
身長171㎝で420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。第28回は、前回に続きパット上手になるための考え方や打ち方の工夫について話を聞いた。
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰
迷ったまま打つのは経験値にならない
――浦さんはパットが得意と自称するほどだそうですが、パター巧者になる秘訣はありますか?
浦 パットは、ちょっとしたコツで明日から突然うまくなるなんてことはありませんよ。でも上達していくために大事なことは「決めつけ」ですかね。
――決めつけ?
浦 ラインに迷った場合にも迷ったまま打たず、打つ前に自分ではっきりと決めてしまうこと。たとえばカップ1つ切れるかな、2つぶん切れるかな、と迷った場合にあいまいなまま打つのがいちばんダメなんです。わからなくても「ここはカップ1つぶん!」と決めつけてしまうことがとても大事。そうすれば自分がやることも、カップ1つ切れるラインに対して狙い、そこに打ち出すというタスクがはっきりする。もし外れた場合にも、読みが間違っていたのか、狙ったところに打てなかったのかといった理由がはっきりします。これが何よりの経験値になるんです。
――迷ったまま打つと、自分がやることも中途半端になってしまうというわけですね。
浦 そうです。結局「1つ半」みたいなラインを狙って、タッチもどっちつかずのような打ち方になったら、入ったとしてもなぜ入ったのか、外した場合にも何が悪かったのかわからなくなってしまう。
パッティングというのは、すべてのパットが本番であり、同時に練習なんです。これは人生最後のパットまでそう。読んで、狙って、打つという1つのサイクルを全部はっきりさせてあいまいな部分をなくせば全部のパットが自分の経験値になる。
――なるほど。その積み重ねこそがパター巧者への道ということですね。
浦 ボールの線を合わせるのも、本当はそのためなんですよ。打つ前に線を打ち出す方向に合わせてしまえば、それで方向という要因はもう決めてしまったわけですから、あとはタッチに集中できる。
ちなみにボールの線を正確に合わせるのって実はかなり難しいので練習が必要です。パターのヘッドを利用すると合わせやすいので、僕のやり方を参考にしてみてください。
個人的には、ボールの線を合わせると、うまく打てたときに線がブレずに転がってくれて「自分で入れた!」という実感があって好きです(笑)。
ボールの線を打ち出し方向にセットすることで方向を「決めつけ」る。パターヘッドを目印に向けて置き、ボールの線をそれと平行にそろえると線を真っすぐセットしやすいという
【ライン読みのコツ】
カップは手前側、奥側、そして「真上」から見る
浦さんはラインを読む際、カップの「入り口」側とその反対側からボールが転がっていく軌道をイメージすることに加えて、カップを真上から見て、カップの中心を通過するラインを想定することが大事だと言う
ラインを厚く読めば弱いタッチで打てる
――ラインを決めて狙っても、いざ打つとなるとそこでもミスが出てしまうのがアマチュア。大きく曲がるラインはとくに難しいです。
浦 それにはコツがあるので、じゃあそれをお教えしましょう。スライスラインは右手で、フックラインは左手で打つんです。これはタイガー・ウッズがジム・フューリックに「パッティングのコツを教えてよ」って言ったら「50万円で教えてやるよ」って言われたので50万円払って教えてもらった話らしいですよ(笑)。
――ええっ? それ、タダで教えちゃっていいんですか?
浦 特別ですよ(笑)。実はこの話のキモは、スライスラインはプッシュ、フックラインは引っかけで打てということなんです。
――どうしてですか?
浦 スライスラインをプッシュで打つつもりということは、打ち出すラインよりもさらに左を向いて構えるイメージになり、ラインをかなり厚く読むことになる。フックはこの逆ですね。
スライスラインって、ゆるみ気味になって右に外すことが多いじゃないですか。フックラインは左に見えるカップが気になって引っかけがち。だからそれを嫌がって、スライスラインで球をつかまえようとしたり、フックラインで逃がしたりしてしまうんですが、そういう「逆球」を打つのってよくないんですよ。イメージも狂うし、タッチもおかしくなる。
逆のことをやるくらいなら、最初から厚く読んでおいて、スライスラインはプッシュでいい、フックラインは引っかけでいいって思って打つほうがいいんです。
片手で打つ感覚というのも、右手なら押し出す感じ、左手なら引っ張り込む感じが出るので、逆球への保険になる。フューリックはそういうことを言っているんです。
――スライスラインは「球をつかまえて打て」って言われますが……。
浦 絶対ダメ。ラインを厚く読むということは、弱いタッチで狙えるということ。「しっかり打つ」とたしかにいい感じなんですが、それで調子が上がっていったときに、今度は合わせる動きが出てくるんです。これがパッティングをおかしくします。「しっかり打つ」は劇薬なんです。
――「弱く狙える」という発想はありませんでした。
浦 たとえば私は、スタートして3~5ホールくらいはできるだけ下りのラインが残るようにしますよ。下りのラインは打たなくていいからラクなんです。弱めのタッチでも上りみたいにブレーキがかかって止まってしまう心配がないから、弱めに打っておいて「届かなかったけどまあいいか」と気楽に2パットで上がれる。それを何ホールか続けている間にその日の距離感を作れます。強く打ったり合わせたりといった波がないから事故がないんです。
――パット巧者って、そんなことを考えているんですね。
浦 でも前回も言いましたが、最終的には練習量ですよ。今回も、私がやっていた「絶対にうまくなる」練習法を1つお教えします。1、3、5メートルをそれぞれ3球ずつ打つんですが、1メートルが3球連続で入ったら3メートルに、3メートルが3球入ったら5メートルに行くんですが、外れたらまた最初に戻る。これ、最後のほうには実戦さながらのプレッシャーがかかります。調子が悪いと何時間もかかるんですが、私はこれを日課にしていました。
浦さんは1、3、5メートルで練習したというが、自宅のパターマットなら1メートルと2メートルなど、できる範囲でいい。1メートルを3球連続で入れてから2メートルを3球連続で入れるまで続ける。途中で外したら1メートルの1球目に戻って最初からやり直しになるので、終盤はプレッシャーがかかる
月刊ゴルフダイジェスト2022年6月号より