【笑顔のレシピ】Vol.119「3パットはダメ」「OBを打つな」そんな声掛けは無意味です
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
僕は練習中、基本的にはできることしか言いません。具体的な言葉だと、「振り切れ!」とか、そんな感じです(笑)。ラウンドレッスンでも同様で「曲げるな」とか「280ヤード飛ばせ」とは言いません。
なぜなら、それを求めたところでできないからです。今よりももう1段上のステップを目指してほしいときには、ちょっとレベルの高いことを伝えて発破をかけることもなくはないのですが、それは非常に稀です。
一般的なレッスンやコーチングは、できていないことを示してグイグイと引っぱっていくと思われがちです。確かにできないことを繰り返しているうちに、たまたまできるようになるかもしれません。
ただ、「できた」と「当たり前にできる」は違うのです。僕が重視するのは後者。10回中6回成功しているものを、9回そして10回へと確度を上げていく。そうしなければ試合では使い物になりませんし、身についたことにはなりません。
仮にまだできていないことを求める場合でも、努力次第で達成可能なことしか言いません。
よく親御さんがラウンド前のジュニアの選手に対して「3パットは絶対ダメだぞ」とか「OBはなくせ」と声をかけているのを耳にしますが、これは本人の努力だけではどうにもなりません。
僕は「OBは何発打ってもいいからとにかく振り切ってこい」というように送り出します。他のスポーツなら「全力で走れ」、「声をたくさん出そう」のような言葉になるでしょうし、勉強なら「解答欄は全部埋めよう」という感じでしょうか。これらはどんなレベルの選手でも、やろうと思えばできることです。
ただ最初は解答欄を全部埋めるのも難しい。僕の教え子も、全ホール振り切れずに戻ってきます。そこで、どうしてできなかったのかを問い詰めるのではなく、できるようになる方法を一緒に考えていく。親御さんたちにもそんな寄り添い方をしてほしいと思います。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年4月5日号より