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【名手の名言】杉原輝雄「本当の我慢は、ここがチャンスだというときに心を逸らせない我慢である」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は約50年にわたり現役を貫き“日本プロゴルフ界のドン”と呼ばれた杉原輝雄の言葉を2つご紹介!

身長162cmの杉原は青木功(183cm)、尾崎将司(181cm)ら大男を相手にレギュラー54勝を挙げた(写真は1982年フジサンケイクラシック)


苦しいときの我慢は普通の我慢
本当の我慢は
ここがチャンスだというときに
心を逸らせない我慢である

杉原輝雄


杉原はツアー1の“飛ばないプロ”として有名だった。しかし並み居る飛ばし屋たちを尻目に54勝を積み上げ、永久シードを獲得。1997年に前立腺がんと診断されたが、現役にこだわり手術はせず、ツアーには積極的に出場した。

そんな勝負師の“我慢の哲学”が表題のそれだ。

苦しいときに我慢するのは当たり前。それよりチャンス到来というときに心を逸(はや)らせ、焦って自滅しない我慢が、本当の我慢だというのだ。

相手を意識するなといっても、優勝争いのときなどそうもいくまい。相手がミスしたときなど、「よーし、ここで引き離すチャンスだ」と意気込む。

しかし、そうすると自分まで相手のミスにつきあってしまうことが多いという。そこは逸る心を抑えて、自分の普段のプレーをする。克己心でそうする。

それが杉原流の“我慢”なのである。


“後の先”をとって勝つ

杉原輝雄


杉原は飛距離のハンディを持ちながらも、全盛時代はAON(青木、尾崎、中嶋)という才能豊かな3強を向こうに回して、永久シードを獲るほどの実績を残した。

表題の言葉はそんな非力な杉原の“小よく大を制する”秘訣の一端である。

杉原は飛ばないので2打目以降、当然一番先に打つ。そのとき、自分の技術を駆使して必ずグリーンに乗せておく。乗らないまでもパーにできるエリアに置いておく。相手を上回るスコアは必要ない。並ぶだけでいいのだ。

これを連続すると、飛ばし屋ほど焦って崩れてくる。というのも、飛ばし屋は飛んだという優越感があるので、同じスコアだと損をしているという気持ちになるからだ。しかも持つクラブが2~3番手違うとすればなおさら。

これが“後の先”をとっていき、相手の優越感を逆手にとって、小が大を食う戦法だと杉原は言っていた。“後の先”とは剣道や柔道などで使われる用語で、相手が先に仕掛けてきたのを逆手にとって反撃に転じる様を指す。まさに飛ばし屋の大男たちを柔よく制していたといえよう。

アプローチ、パットの技術も卓越していた杉原は、“グリーンの魔術師”などとも称され、勝負強さは天下一品。その存在感で“日本プロ界のドン”と呼ばれた。

左ひじを曲げたままインパクトする「五角形スウィング」で正確無比なロングショットを放った

>>杉原輝雄のスウィング連続写真をチェック!

■杉原 輝雄(1937~2011)

すぎはら・てるお。大阪府生まれ。茨木CCに就職し、夜間高校に通いながら研修生としてゴルフを覚える。小柄で飛距離が伸びず苦労したが、両腕の五角形を保ったまま手首を使わない独特の打法で、正確無比な技術を手に入れていく。レギュラーツアー54勝、海外(香港オープン)1勝、シニア6勝、ゴールドシニア2勝を挙げている。永久シードも獲得。1997年に前立腺がんと診断されたが、現役にこだわり手術はせず、ツアーには積極的に出場。2010年4月29日、中日クラウンズに出場し、同一大会連続出場の世界新記録を樹立

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