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【ゴルフ初物語】Vol.77 溝は「ない」ほうがスピンがかかる!? 40年前に発売された「溝なしアイアン」

クラブのフェースには当たり前のようにスコアラインが刻まれているが、大胆にもその溝をなくしたアイアンが40年近く前に発売されていた。

摩擦でよりスピンがかかる

2010年から、いわゆる“新溝ルール”が施行され、一般のアマチュアも2024年から“旧溝”のクラブは競技等では使えなくなる。古いクラブを愛用している場合は注意が必要だが、そんな心配は無用のアイアンが40年近く前に誕生していた。

そもそも、フェースの溝はスピンをかけるためではなく、水滴や芝の影響を受けたときにスピン量が減ることを抑える目的で配され、いわばタイヤの溝のような役割を果たしている。ボールにスピンをかけているのは溝ではなく、フェース面の平らな部分とボールの摩擦。もし溝がなく真っ平らなフェースだったら、ボールとフェース面の接触面積が広くなり、スピン量は増える。そこで1983年夏にダンロップから発売された「DDHシルバー・エックス」アイアンは、溝のない「ゼロラインフェース」を採用した。謳い文句は「ツーピースボールに最適」。ちょうど、その前年に国産2ピースボールが登場し、2ピース全盛の時代へと移り行くときだった。

この溝なしアイアンは「ボールを高く上げて飛ばし、ボールを止める」というテーマに沿って研究されて生まれ、測定データでは、溝ありが5210rpmのところ、溝なしは5620rpmと7.9%もスピン量が増加。バックスピンがかかる分ボールが高く上がり、さらに低重心、ワイドソールでより高弾道に。その結果、それまでのアイアンで2ピースボールを打った場合と比べ、約2〜5%も飛距離が伸びたという。そして飛びすぎるため9番とPWのキャリー差を解消する目的で10番アイアンを追加。3番〜10番、PW、SWの10本セットで16万円だった。だが、このアイアン、翌年には姿を消している。実際のコースで使用する際には水滴や芝がボールとフェースの間に挟まるため、十分なスピン量が得られないケースが多かったのだ。

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月8日号より

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