【ゴルフ初物語】Vol.76 “初心者の増加”に対応すべく1926年『ゴルフ用語辞典』が発行された
コロナ禍でゴルフを始めた人も多いが、最初は膨大なゴルフ用語を覚えるだけでも一苦労。ゴルファーが増え始めた1926年、煩雑なカタカナのゴルフ用語を初心者ゴルファーにも分かりやすく伝えるために『ゴルフ用語辞典』なるものが発行されていた。
ゴルフの普及に貢献
「外国伝来のスポーツ中ゴルフには殊に多数の言語がそのまゝ用ひられてゐます。それ等を総て邦譯することの適否得失は一朝にして決しますまい。それはともかくとして最近初心者が急に増加しましたので用語の辞典があれば便利であろうとの聲を屡々耳に致します」という著者の序文から始まる『ゴルフ用語辞典』。
発行されたのは1926年10月。この年の7月には第1回日本プロゴルフ選手権が開催され、関西では宝塚GCが3ホールで開場。九州でも雲仙に次ぐ2番目のゴルフ場、福岡GC大保コース(古賀GCの前身)がオープン。関東では武蔵野CCが会員の増加を理由に、千葉の六実へ移転と、ゴルフが徐々に日本に広まり始めた頃だった。著したのは伊藤長蔵。伊藤は日本のゴルフ草創期に活躍した大谷光明の弟、大谷尊由と英国に渡りゴルフに親しみ、日本初のゴルフ雑誌を創刊。プレーヤーとしては第1回関西オープンに出場し6位。廣野GC造成時には現場監督を務め、日本ゴルフ協会の創設にも参画している。
ルールやマナーだけでなく、用具についても言及され、例えば「クラブ」の項目には「球を打つ用具の総称。クラブの種類甚だ多し」とあり、「用具の長さ及び重さはプレーヤーの體格及び技倆に依って定まる。使用の数も亦各自の随意なるも最少七本、多くて十四五本とす」となっている。クラブの本数が14本以内と定められたのはUSGAが1938年、R&Aが1939年からなので、当時はまだ本数制限がなかったのだ。「不完全な貼は後日訂正増補致します」と序文に記されていた通り、翌年には第二版を発行。第一版の仮名使いや解説を修正するとともに60語を増補し、よりわかりやすい内容に改定された。
著者の伊藤長蔵はのちに「ゴルフドム」と改題される日本初のゴルフ雑誌「阪神ゴルフ」を1922年に創刊。廣野GC造成時には現場監督を務め、日本のプロゴルファー第1号の福井覚治とともに別府GCを設計している
週刊ゴルフダイジェスト2022年3月1日号より
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