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【浦ゼミナール】Vol.23「“飛ばさない”アプローチは“飛ばし”と正反対の技術を使う」

身長171㎝で420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、飛ばしのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。「飛ばし」のイメージが強い浦だが、実はアプローチは飛ばし以上に自信があるという。構え方の基本第23回は、「飛ばし」とは真逆の「アプローチの基本について教えてくれた。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/THiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー

前回のお話はこちら

アプローチは「飛ばさない」技術

――前回はアイアンショットについてお聞きしましたが、今回はさらに短い距離、アプローチについて教えてください。まず端的に言って、アプローチと普通のショットの違いはどこにあるんでしょう?

浦 ショットとアプローチのいちばんの違いは、ファーストバウンドの落ち方を気にするかどうかだと私は思います。落としどころの傾斜とか落ちてからのラインなどを考えて、球の高さやスピンをコントロールするのがアプローチ。そこまで考えず、単純に距離ベースで打っていくのがショットです。だからこそアプローチには繊細な技術が求められるとも言えるし、そういった技術が発揮できる範囲の距離がアプローチだと言うこともできると思います。
また、ショットに求める結果はあくまで「及第点」で、外したときのことを考慮したりミスした場合の保険をかけますが、アプローチは基本的には「百点満点」を狙うもの。ミスしたときのことはあまり考えず、最高の結果を狙っていくという点はショットと異なると思います。

――なるほど。打ち方というよりは狙い方や攻め方が根本的に違うと。

浦 もちろん打ち方も違いますよ。アプローチは、できるだけ飛ばさないような技術をベースに打つもの。グリップはロングサムのパームで握り、ボールに近く立って、体重移動をせずに打つ。それによって再現性を高めるわけです。


【飛ばさないための握り】
グリップはパームのロングサム

飛ばしのためには、グリップは絶対にショートサムのフィンガーグリップがいいが、飛ばさなくていい、むしろ必要以上に飛ばしたくないアプローチでは、ロングサムのパームで握ったほうがいい

――ドライバーと正反対の技術というわけですね。

浦 そうです。インパクトの形を最初から作っておき、あとは上体の動きだけで球をとらえるので、飛ばすことはできませんが再現性は高い。でもショットもアプローチも、インパクト時の体の形はほぼ一緒。ちゃんと腰が回って、多少左に乗った状態で球をとらえなければクラブの機能は生かせません。だからアプローチはオープンスタンスなんです。
ショットはスクエアに構えたところから左に腰が回転してインパクトを迎えますが、振り幅の小さいアプローチにはその時間的余裕がないし、そうやってパワーを生む必要もない。だからインパクト時の腰の向きをアドレスから作っておくためにオープンスタンスで構えるんです。

この状態で構えて下半身を使わず打つ

大きく飛ばす必要のないアプローチでは、構えの段階からインパクト時の腰の向きを作っておく

「フェースを少し開いてハンドダウン」が基本

ウェッジは、飛びすぎないように少しフェースを開いて構えたうえで、手元を下げて相殺し、スクエアになるように構えたい。左の写真くらいがウェッジのスクエアだ。リーディングエッジを右に向けるとフェースが右を向くので、そのぶん少しハンドダウンに構えてフェースの向きを戻そう

下半身は一切使わずに打つほうがやさしい

――ではアプローチの基本的な打ち方を教えていただけますか。

浦 先ほども説明したとおり、下半身は使わずに上半身、具体的には胸郭より上の動きだけでスウィングします。その意味では、左足体重で、ベタ足のままスウィングするのが絶対的におすすめです。

――ベタ足ですか? アプローチでも下半身を使えという話はよく聞きますし、右ひざを送るようなアクションで打つプロも多いですが……。

浦 プロのようにすごい練習量や独自の研ぎ澄まされた感性があるならそれでもいいですが、おすすめはしませんね。下半身を使う人は、それによって生じるエネルギーを、ひじを抜いたりして相殺しているんです。これってかなり高度な技術ですよ。飛ばしたくないのにスウィングに飛ばしの要因を盛り込んで、それを消す別の動きまで入れて打つのは、正直言ってかなり難しい。20~30ヤードを正確に打つためにはデメリットしかありません。

――なるほど。では左足体重にするのはどうしてですか?

 腰の向き同様、インパクトの形をアドレスで作っておくためです。真っすぐ立った状態から左足に体重を乗せていくと、体の中心に対してボール位置は相対的に右になり、自然なハンドファーストになるはず。最初からこの形を作っておけば、スウィング中に余計な動作をする必要がないので、再現性が上がります。

――ハンドファーストにするのは、上から打ち込んでクリーンにとらえるためですか?

浦 うーん。最下点かその少し手前でインパクトしたいのは確かですが、少しニュアンスは違いますね。ウェッジをシャフトが垂直になるように構えると、バウンスがあるぶん少し刃先が浮きますよね。少しハンドファーストにすることでそれが解消でき、ソールのオイシイ部分も使えるようになる。クリーンに打つというよりは、むしろバウンスをうまく使うためですね。ちなみに左足体重の構えは、「左に乗る」よりも「右ひざを伸ばす」ことで作るのがポイントです。真っすぐ立って少し両ひざにゆとりをもたせた状態から、右ひざを伸ばすと体全体が左に傾きますよね。これが私がおすすめするアプローチの左足体重。これならスウェイしにくいし、ベタ足でスウィングしやすい。「左に乗る」イメージで左足体重を作ると、左ひざの上下動などが生じやすいんです。

――少しクローズスタンスっぽい感じになりますね。

浦 はい。曲がったままの左ひざが伸ばした右ひざより前に出るからです。この両ひざの向きが目標にスクエアになるように少し左を向いて構えるのがポイント。これもオープンスタンスになる理由の1つです。

右ひざを伸ばして立ち両ひざの向きをそろえる

ひざを少し曲げた状態で真っすぐ立ったところから右ひざを伸ばすと、左に体重が乗って体の中心は左にスライドする。最後に両ひざがスクエアになるように少し左を向こう。これで自然と少しハンドファーストな構えになる

「右ひざを伸ばし右かかとベタ足のまま打つ」

右ひざを伸ばした左足体重で構え、下半身は一切使わずに胸郭より上の動きでスウィング。浦さんの場合、これでキャリー40ヤードくらいまで打てるという

浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

月刊ゴルフダイジェスト2022年1月号より