Myゴルフダイジェスト

【わかったなんて言えません】Vol.52 今平周吾#4「ミスを引きずらないコツは“あきらめる”こと」

「ゲンちゃん」こと時松隆光がプロを招いてトークをする連載「わかった! なんて言えません」。ゲストは前回に続き、2年連続賞金王の今平周吾。今回のテーマはメンタルコントロールについて。

ホスト/時松隆光

1993年生まれ、福岡県出身。ツアー通算3勝。プロ10年目。テンフィンガーグリップで戦う。愛称は“ゲンちゃん

ご指名/今平周吾

埼玉生まれ。ツアー5勝。2年間の米国武者修行を経て2011年プロ入り。27歳67日での複数回賞金王はジャンボ尾崎を抜いて最年少記録

前回のお話はこちら

時松 今平さんの何がすごいかというと、毎試合のようにトップ争いに絡んでくる順位にいる。僕には到底マネできません。だって、予選落ちなんて、3年半なかったわけで。

今平 いやあ、僕からすると、上位にはいても勝てないということは、まだまだ上手くないんだなと。勝つ人が上手い人だから。

時松 いやいや、2年連続賞金王が、それ言います?

今平 19年も2勝止まりだったし、18年は何度も優勝争いしたのに1勝しかできなかった。正直、悔しかった。コンスタントに上位にいることより、優勝しないと名前が残らないでしょ。

時松 名前を残す?

今平 試合会場に行くと、過去の優勝者が称えられている。たとえば19年にダンロップフェニックスで勝てたとき、国内選手はもちろん、タイガー・ウッズや世界のスーパースターが名前を連ねていて、そこに入れたというのがすごく嬉しかった。いくらトップ争いをしても、優勝しなければそこには残れない。だからもっと勝ちたいんです。

時松 より高みを見ている感じが、さすがっす! 今平さん、プロになったときから目標は賞金王だったんですか?


今平 いや、目標は、1試合でも多く勝つこと。それに、海外で活躍すること。

時松 ただ、2回も賞金王になってみると、もう1回! って思うものですか?

今平 それはある。最初のときは、まったく気にせずに戦っていたけど、2回目のときは、終盤戦で狙っていった。もちろん、今年も狙える位置に最後までいたいと思うし、3季連続賞金王のためにはやっぱり、もっと勝つことだよね。

時松 さて、今平さんに聞いておきたかったことが。プレー中、いつも平常心を保てているように見えるんですけど、実際にはイライラすることとか、あるんですか?

今平
 しょっちゅうイライラしてるよ(笑)。柏木(一了)さん(専属キャディ)に聞いてみたらわかると思うけど、失敗が続いたときなんか、ブツブツ文句を自分に対して言ってる。

時松 外からだと、まったくそんなふうには見えないっす。だってプレー中、表情がずっと変わらないじゃないですか。

今平 そうかなあ。僕から見ていると、源ちゃんのほうが、メンタルが強そうに思える。だって、ブツブツ言ってないじゃん(笑)。

時松 僕は、舌打ちっす(笑)。ミスショットすると、ついつい「チッ!」って出ちゃうんですよね。出ません?

今平 舌打ちはしない(笑)。だけど源ちゃんでさえ、イライラしているんだね。

時松 イライラしてしまうと、いいことがないのはわかっているんです。だからこそ、今平さんにメンタルコントロールについて聞きたかったんです。

今平
 日常的にはイライラしない性格ではあるんだよね。怒ることなんてほとんどないし。

時松 確かにそんな感じです。

今平
 だけどゴルフってスポーツだと、イライラするなというのは難しい。イライラしないことに努めるよりも、スッパリとあきらめちゃうことかな。

時松 スッパリとあきらめる?

今平 
ショットでミスしてボギーを叩いてイラッとしたとしても、そのホールをこうしておけばバーディだったのにと振り返るよりも、仕方がないとあきらめてしまう。僕はなんでも結構あきらめが早いほうだから(笑)。

時松 なるほど。「あきらめる」って、悪いことばかりじゃないんですね。

「イライラしないことに努めるのは難しい。瞬間的にはイラッとしても、次のホールへ歩いている間にあきらめてしまえば、また新たな気持ちでティーショットに向かえます」(今平)

今平 たとえ瞬間的にはイライラして、心の中で自分に厳しい文句を吐いたりしてしまっても、次のホールへ歩いている間にあきらめてしまえば、また新たな気持ちでティーショットに向かえる。ミスを長々と引きずってしまうほうが、傷口を広げてしまうから。

時松 確かに、次のホールのティーインググラウンドに立っているのに、前のホールのミスを悔やんでみても、もう取り返しつかないですね。

今平 
ゴルフである以上、ミスをすることも仕方がないし、それにイライラすることも仕方ない。ただそれをスッパリとあきらめてしまうことで、できるだけ次のショットは平常心で臨めればいいよね。

時松 2年連続賞金王の言葉は重いっす。それはショット単位、ホール単位だけでなく、試合単位でも言えることかもしれないですね。1試合予選落ちしても、なるべく早くあきらめて、次の試合には平常心で。それが、コンスタントに上位にいられる秘訣なのかもしれないですね。

今平 コースの好き嫌いや、調子の良し悪しは多少あっても、メンタルのせいで大きな波はつくりたくないよね。

時松 スッパリあきらめることの大切さ。今回も、いい言葉をいただきました!(つづく)

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月19日号より