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16億円獲得のパトリック・カントレー「生涯癒えることのない傷」を乗り越え頂点に

プレーオフシリーズ最終戦ツアー選手権で優勝したパトリック・カントレーが、第15代年間王者に輝き、16億円超のボーナスを獲得した。ポーカーフェースの王者の知られざる物語とは?

10年前の全米オープンでローアマのタイトルを獲得したカントレーは、将来を嘱望される存在だった。3歳でクラブを握って以来、地元カリフォルニアでは負けなしの少年時代を送り、名門UCLA在学中にアマチュア世界ランク1位の座を55週守り抜いた。

輝かしい実績を引っ提げ12年にプロ転向。順調にキャリアをスタートさせるはずが、13年に背骨の疲労骨折が判明、長期戦線離脱を余儀なくされた。痛みを和らげるために渡欧し、治療に奔走。「自分が大好きなことができないストレスは計り知れなかった」

17年、ようやくツアー復帰を果たすも、実はその前年、思いもよらない悲劇が起きていた。帯同キャディで高校時代からの親友であるクリス・ロスが目の前でひき逃げされ、尊い命を失ったのだ。

それは2月の早朝。地元のレストランに向かうため通りを渡ろうとしたとき、少し前を歩いていたロスが車にはねられたのだ。救急車が到着するまで、カントレーは意識のない親友を抱きしめた。24歳で急逝した親友の姿に無力感を覚え、しばらくそのシーンが頭から離れなかったという。「100万分の1の確率で事故は起きた。あのタイミングであの場所にいた不幸。彼の死を乗り超えようと努力しているけれどきっと生涯この傷は癒えることはない」

それでも彼は前を向いた。次第に本来の実力を開花させ18年に初優勝。「ロスがいてくれたら……」と痛切に思った。

アマ時代競い合った1歳年下のJ・スピースやJ・トーマスには大きく水を開けられたが、ケガや親友の死を乗り超えたカントレーは、今季ツアー最多の4勝(通算6勝)を挙げ年間王者となり、ようやく年下のライバルたちの背中をとらえた。

次の目標はメジャー獲りだ。

米カリフォルニア出身の29歳。プレーオフシリーズ連勝で現在世界ランク4位(写真は2019年シュライナーズホスピタル。PHOTO/Tadashi Anezaki)

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号

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