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【バレルスウィング対談】「動きをシンプルに絞りこむからこそ、再現性とパワーを両立できる」糸山実×動作の専門家・池上信三

バレルスウィングの技術解説に続き、ここでは別アングルから「バレル」に光を当てる。提唱者・糸山実氏と動作の専門家・池上信三氏による対談によって、体使いの真理から飛ばしのメカニズムを明かしてもらった。

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara、Yasuo Masuda、yoshihiro Iwamoto、Takanori Miki、Getty Images THANKS/木更津GC

(写真左)糸山実 いとやま・みのる。野球のバレルスウィングをゴルフに取り入れ発信を行う。現在は臼井麗香を指導し復活に向けて奮闘中。YouTube「ミノルの気ままなゴルフ」も人気

(写真右)池上信三 1966年生まれ。特定の競技ではなくアスリートの動作をサポート。ミラノ・コルティナ五輪フィギュア女子の銅メダリスト中井亜美を中学1年生から指導。著書に「体育が嫌いな君たちへ」

飛ばしたければ「動かない」。樽を強固に保つ

池上 本企画のバレルスウィング。核心はどこでしょうか?

糸山 動きとして矛盾するように聞こえるかもしれませんが、「動かない」ということ。動きを大きくしすぎると、打点が体の前にあるのに横に動いてしまいゴルフが難しくなる。スウィングを司る骨盤が大きく動かないように「締める動き」が理想。これができると高いところから物(クラブ)が「落ちる」エネルギーが大きくなります。

池上 バレルとは「樽」のこと。体の胴体部分を一つの樽に見立て、スウィング中のズレを無くすことが何より大切です。糸山先生は、「締める動き」と仰っていますが、力学的に言うと「ベクトルの向き」の問題。良くないのはベクトルが外に逃げる形です。ベクトルを内側へ、狭いところをグッと押すようにすると、ズレがなくなって速度が出るんです。

糸山 その通りですね。スウィングの要は骨盤を中心とした動き。具体的には、テークバックからダウンスウィングまで、左右の股関節の「動きのベクトル」をどう制御するか。そのベクトルは内向きですから、ダウンスウィングで左のお尻は、右のお尻にぶつけるように「後ろへ引け」となります。後ろとは背中方向ではなく目標の反対方向。

池上 それは極めて理に適っています。「腰を回す」イメージではなく、股関節の動きのベクトルを両サイドから内側へ向ける感覚。左右から内側へ圧がかかってスパンと「弾ける」動き。例えるなら、親指と中指を強く擦らせて音を鳴らす「指パッチン」みたいな原理。だから、小さく鋭い回転を生むことができる。筋力に関係なくエネルギーを爆発させられます。

糸山 このコツをつかめば胴体がブレず、前傾姿勢も維持される。上から下へクラブが「落ちる」エネルギーが生まれ、ボールに「圧」をかけられます。

池上 その動きを完璧に体現しているのが、メジャーで活躍する大谷翔平選手です。彼の骨盤の回転はコマのように鋭く、半径が極めて小さい。大きな体重移動に頼るのではなく、骨盤の動きに独特の制限をかけて、出力を最大化させています。

池上 動きをシンプルに絞り込むからこそ、再現性とパワーが両立するわけですね。ここで、読者が胴体を樽化するためのアドバイスをするなら、アドレスで「背筋を反らない」こと。

糸山 確かに、背筋をピンと反って構えたがる人は多いです。

池上 ですが、背筋を反ると、反対側の樽の前面に当たるお腹側が緩んで腹圧が抜けてしまいます。腹圧が抜けると、上半身から骨盤の前傾を維持することができなくなる。結果として、樽そのものがゆがんでパワーが分散してしまいます。

糸山 樽がたわんでは動作が壊れ、再現性も下がってしまう。

池上 アドレスで腹圧を高め、樽を安定させる準備が大事だと思います。

糸山 わかりやすい助言、ありがとうございます! このまま話し続けたくなりました……。

中井亜美選手への指導を通じ、バレルとフィギュアとの共通点について、「①軸を通し内側に集約 ②体幹をバレル化し最速で回転 ③最短距離を意識 ④無駄な力を排し、余力を“狙い”へ活用 ⑤筋力強化よりも現パワーの効率向上を優先 ⑥高再現性の回転加速を追求する思想」と分析


糸山氏が指導している臼井麗香。「今年のオフから稲見プロの紹介で糸山先生に習い始めました。バレルスウィングに取り組んで15ヤードほど飛距離が伸びたのと、ミスで多かった右プッシュが激減しました。先生の教えとして、振り遅れないように左に回転するのではなく体を開く前に腕を下ろす動きを重点的にしています。この動きに取り組んでから下半身の動きに違いが出てきました。以前は切り返しで腰が浮き気味でしたが、低い位置をキープして深めに入れることができるのを実感しています」(臼井)

糸山氏が考案した素振り棒。野球のバットタイプと、面があるタイプで、動作の目的が変わる


週刊ゴルフダイジェスト2026年6月号より