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森守洋「レッスンは受けるな!」Vol.8 “感じる”を知る日本人は実は一番ゴルフに向いている

KEYWORD 森守洋

堀琴音、柏原明日架、香妻陣一朗ら多くのプロを指導する森守洋が、自身が行きついたゴルフスウィングの本質を語り尽くす。

PHOTO/ARAKISHIN

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File.8
海外で日本人が戦うこと


自分のスタイルを変えてしまうから上手くいかなくなる

国内ツアーも開幕しましたが、今年も男女含め多くの選手が海外でプレーします。昨年のLPGAでの山下美夢有選手や岩井姉妹選手らの活躍から見ても、今年もさらに期待が高まりますが、よく耳にするのが「日本人選手のレベルが上がった」などの言葉です。

もちろんレベルが上がっていることは間違いないことだとは思います。でも僕は10年以上前から日本人選手のレベルが低いから海外では通用しなかったとはまったく思っていません。むしろ世界で日本人が一番ゴルフに向いているのではないかと思っているほどです。

日本人のどこがゴルフに向いているのか。日本には昔から禅や古武術のように感じる文化が根付いていて「感じる(feel)」という部分を大事にしてきました。さらにゴルフは道具を扱って行うという観点からいっても“感じる”ことはとても大切な要素だと思っています。

データや数値がダメなわけではありませんが、道具を効率良く扱うためにはそれだけでは足りない。刀や包丁など引く動作に慣れ親しんできた日本人は、その足りない部分をDNAレベルで持っているということ。モノを速く振ったり効率良く道具に力を伝えたり。それが「日本人は手先が器用だ」という表現に繋がっているのかもしれません。

ではなぜこれまで日本人選手は海外で活躍できなかったのか。それはアイデンティティによるものだと考えています。アイデンティティとは直訳すると「自分は自分である」というような意味ですが、自分のスタイルを崩してしまうから結果通用しなくなるんです。海外に行って「この球筋だと通用しない」とか「やっぱり完璧なドローが打てなければダメだ」とか思い始めて、自分の強みを捨ててしまう。これまでの日本のゴルフ界の歴史を振り返っても、自分のスタイルを崩してしまいやむを得ず撤退してきた選手は多くいます。

ただ今のままでは通用しない、といったことを言い始めるのは、実は周りの人間です。海外で通用するかどうかは、自分の周りにどういうスタッフを抱えているかが大きく関係していると思います。人間は周りの人の影響を受けやすい生き物だから、すごいものを見るとどうしても「技術が足らない」とか「経験が足りない」とか言い始めるわけです。香妻陣一朗選手がLIVツアーで堂々と戦えたのは、紛れもなく周りのスタッフが良かったからだと思います。

ずっと通用すると周りが言い続け、ポジティブに支え続けなければ、やっぱりホームの選手には勝てないわけです。WBCでのイチロー選手や大谷翔平選手ではないですけど、むしろ大したことがないくらいの気持ちでいけば技術的に通用しないことはあり得ない。LPGAで日本人選手が活躍できるのは彼女たちが自分のスタイルを崩していないからです。

付け加えるとあれだけ日本人選手が参戦することで、日本でやっている環境というか感覚で戦えていることも、異国の地での試合であろうと気持ちが左右されないという意味で追い風になった部分はあります。

また、女子は海外で通用するけど、男子は通用しないなんてことも言われますが、松山英樹選手はマスターズに勝っていて通用していますよね。だからアイデンティティの勝負になるわけです。もし堀琴音選手が今後海外に挑戦したいと言うことがあったら、もちろん後押しはします。でもスタイルを変えて飛ばそうとしたり、球筋を変えようとしたりはしません。今の飛距離で今のスタイルで戦うことを徹底してもらいます。

10ある能力を3しか出せない選手と5ある能力を5出し切れる選手なら5の才能の選手のほうが勝つわけです。世界で戦うには、自分を持ち続けることと周りの正しいサポートが必要になるということです。


マスターズ覇者である松山英樹選手を筆頭に日本男子だって十分海外で活躍できるポテンシャルはある

解説/森守洋

もり・もりひろ。1977年生まれ。静岡県出身。堀琴音、柏原明日架、香妻陣一朗ら多くのツアープロを指導。原理原則を謳い文句にゴルフスウィングの核心に迫る

週刊ゴルフダイジェスト2026年3月31日号より