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「足腰が痛い」「体がだるい」はなぜ起こる? ゴルフ後の疲労を軽減するストレッチ&食事術

長年ゴルフをしている人でも、ラウンド後に筋肉痛や疲労感に苛まれるケースも。決して激しい運動ではないゴルフで、なぜ筋肉痛になるのか? どうすれば疲労を軽減できるのか? 専門家に話を聞いてみた。

PHOTO/Yasuo Masuda ILLUST/Koki Hashimoto

解説/菅原賢

ゴルフ専門の会員制フィットネスクラブ「トータルゴルフフィットネス」の支配人でトレーナー。数多くのプロゴルファーを勝利に導いたゴルフフィットネスのパイオニア

年を取ると筋肉痛が出るのが遅くなる?

筋肉痛とは「不慣れな運動などによって筋肉が過度に収縮し、筋肉やその周辺の結合部分に炎症が生じている状態です」と、トレーナーの菅原賢氏。ポイントは“不慣れな運動”で、要は普段あまり運動しない人がゴルフなどで体を動かすと筋肉が炎症という“悲鳴”を上げるということ。筋肉痛に関するデータやエビデンスは少ないが、筋肉の痛みや疲労感という点も含めて深掘りする。

まず「年を取って筋肉痛が出やすくなった」とはよく聞くが……。「年齢を重ねるにつれ筋肉痛が出やすくなるというデータはなく、あくまで普段の生活様式・運動習慣によります。ただ、年齢を重ねると運動量が減るケースが多いため、その点から『年齢を重ねた人は筋肉痛が出やすい』とは言えると思います」(菅原氏、以下同)

ラウンド翌日ではなく、翌々日などに出ることがあるという人もいるが、この“時差”は「運動によって筋肉組織にわずかな傷ができ、それを修復するために炎症が起きて、発痛物質が血液中から放出されます。すると痛みや刺激を感じやすくなるんですが、運動習慣がなくなると、発痛物質の“センサー”が鈍ってくることも。筋肉の炎症は起こっていてもセンサーが働ないんです」と説明。

ちなみに、筋肉痛には速発性と遅発性があり、速発性は運動から12時間以内を指す。ラウンド後半の痛みなら速発性筋肉痛で「ラウンド中の過剰な筋収縮が原因と考えられます。例えば、過剰に腰を反ってしまったりスウェイしたりなど……」。プロゴルファーも速発性筋肉痛に襲われることがあるそうで「優勝を狙う位置にいたりすると、普段どれだけ練習をしていても体に余分な力が入ってしまうからです」

下半身の筋肉痛は
普段の運動が足りていない証拠

筋肉痛が出る部位についてはどうだろう? 最も(遅発性)筋肉痛になりやすいのは、筋肉を伸ばしながら力を発揮する伸張性(エキセントリック)運動とされる。「下り坂を駆け下りる」などは典型的で、ラウンド中の動きに該当する。「普段、歩く習慣がない人が、上ったり下ったりのコースでプレーすれば、ふくらはぎや太ももが筋肉痛になりやすい。下半身が筋肉痛になる人は、普段の運動が足りていないのではないでしょうか」。ラウンド中にしっかり下半身が使えている証拠では……と良いほうばかりに考えるなかれ。普段の練習やラウンドで下半身がしっかり使えていれば、そもそも筋肉痛にはならないはず。日々、しっかり歩くことを心がけよう。

上半身はゴルフで筋肉痛が出やすいが「例えば肩甲骨周辺は、力みや振り過ぎなどが原因として考えられます」。お腹は「腹筋は持久力に優れた筋肉(遅筋)なので、比較的筋肉痛になりにくい」。ゴルフでは「いいスウィングやストロークの表現として『お腹を使えた』と言うことがあるように、普段うまく使えていない筋肉でもあります。ここに痛みが出たというのであれば、それは“いい筋肉痛”とも言えます。痛みまでいかなくともハリが出たというような状態も同様で、いい傾向だと思います」

ストレッチ&栄養補給で
筋肉痛を予防

筋肉痛の予防のためには普段の運動強度を上げるのが基本だが「例えば、肩甲骨周りなら、ラウンド前のストレッチで違いが出ます。可動域が狭いと上半身がスムーズに動かせず固まってしまうので、ラウンド前に回旋系のストレッチでほぐします。下半身なら股関節周りがポイント。肩甲骨周り同様、可動域を広げる意識でほぐしてください」


ラウンド後は「酸素や血流量を増やすため、有酸素運動や温水と水に交互に入る交代浴などがおすすめ。ただ、実際はラウンド後に走るのは難しいですし、お風呂は施設の問題もある。現実的なのは、やはりストレッチです」

また、ゴルファーはコースから自宅まで運転して帰る人が多いだろう。「運転中は緊張するし、車内は冷房も効いている。すると、ロッカールームでのストレッチなどでほぐした筋肉がまた固まってしまいます。自宅に帰ってからも、ストレッチや有酸素運動、入浴、マッサージなどをしましょう」。有酸素運動は、その場ジャンプやその場歩き、踏み台昇降などでOK。

さらに、食事で積極的に取りたい栄養素はたんぱく質だ。「筋肉が収縮するにはたんぱく質が必須。一方で、運動により体内で炎症が起きている状態でもあり、それを抑えるためにはビタミンが必要で、野菜もたっぷり取ってほしい。豚肉と野菜たっぷりの豚しゃぶサラダなんていいと思いますよ」。栄養たっぷりの食事を取ったらしっかり睡眠を取ることも忘れずに。

そして最後に、この時期の筋肉の痛みについてもう一つ菅原氏から注意事項。「脱水による筋収縮は要注意。体内の水分量が低下し、筋収縮がうまくいかないことがあります」。この夏、高校野球の選手が足をつって担架で運ばれるシーンを何度かあったが、ゴルファーも無関係ではない。また、“つり”のような筋肉の痛みだけでなく「ラウンド後、『ああ、だるいなあ』という感じがしたら、脱水による症状である危険性があります。水分・栄養補給をしっかりすること、睡眠を取ることが大切です」

筋肉痛や疲労の持ち越しを避けるためのストレッチや入浴が翌日以降の生活の質アップにつながる。酷暑の過ごし方の参考に!

「ラウンド前」のおすすめストレッチ

①アイアンを上げて下ろす

肩幅程度のスタンスで立ち、アイアンの両端付近を持つ。ゆっくり頭上に持ち上げ、ゆっくり下ろす。3往復

②アイアンを持ち上げて左右に倒す

頭上に持ち上げたアイアンを左右それぞれに倒す。そのとき、上方の腕はなるべく曲げないようにする。3往復

③アイアンを持って上体をひねる

アイアンのグリップエンドとヘッド部分を押さえるように持ち、左右後方それぞれにひねる。3往復

④スクワット

足幅をドライバーのアドレス時程度に開き、アイアンを杖のように使いながら、ひざをゆっくり、なるべく深く下ろし、元に戻す。5回(アイアンなしでできる人は使わなくてOK)

⑤股関節回し

肩幅程度のスタンスで立ち、アイアンを杖のように使いながら、片脚立ちし、上げたほうの脚の股関節をグルグル回す。左右5回ずつ

⑥椅子に座って上半身を倒す

椅子に座り、脚を組む。上げたほうの脚に手を添えながら、お尻を支点に上半身をゆっくり倒し、元に戻す。左右の脚を替え、両方やる。左右10秒ずつ

「ラウンド後」のおすすめストレッチ

①脚を開いて肩を入れる

椅子に座り、左右の脚を大きく開き、両手は左右それぞれのひざに置く。左右それぞれの肩を体の中心に入れ込む。左右5回ずつ

②仰向けになり下半身をひねる

床に寝て、左右の腕を開き、肩の位置でキープする。片脚のひざを曲げ、下半身を反対方向にねじって10秒キープ。左右10秒ずつ

週刊ゴルフダイジェスト2025年9月9日号より