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【シミュレーションゴルフ最前線】<後編>TGLだけじゃない! 中国に全天候型の大規模なバーチャルゴルフ場が誕生していた

現在、シミュレーションゴルフにもイノベーションの風が押し寄せ、本物のコースに近づきつつある。インドアゴルフの最先端の取り組みについて、GOLFZON社の山本裕士氏に聞いた。

PHOTO/Takanori Miki、Getty Images

リアルとバーチャルを合わせた「TGL」。この新しいゴルフのスタイルを一般人が体験する日はまだ先だと思っていたが、中国ではすでに一般向けにこのスタイルが始まっているという

>>前編はこちら

昔からある練習場は老朽化や設備投資の問題から、盛況であってもやむなく閉場を選択するケースが近年増加。GOLFZON社によると、19年から23年の間に全国で141施設、1施設40打席として約5640打席も減少しているという。一方、コロナ禍による助成金や若年層のゴルフブームもあってインドアゴルフの需要は年々高まっており、同じく19年との比較で、23年まで473施設も増えたというが、打席数の限られるインドアだけあって、1施設4打席として1800打席程度しか増えていない。

現状、都心のアウトドア練習施設はとくに週末になると待ち時間ができるほど混み合っており、打席数は需要に追い付いていない。そのため、これからもっとインドアゴルフスタジオの需要は増えていくと分析していると、GOLFZON社の経営管理室副室長の山本裕士氏は語る。

「弊社が調査したところ、インドアの利用者の属性は20代の若年層が、ゴルフ場やアウトドア練習場利用と比較すると多いことがわかりました。おそらく初心者の方や自分で車を持っていない方が多いのではないかと推測しています。自宅から近いという理由や、プレー時間の短さなど、利便性から選ばれているのではないでしょうか。これから熱心な若いゴルファーを育てていかなければいけないという、業界全体の課題があるなかで、シミュレーションゴルフは若年層ゴルファーにマッチするのではないかと考えています。 

シミュレーションゴルフにも練習に特化したものとラウンドに特化したものの2種類があります。日本では練習に特化したもののほうが市場は大きい。でもこれからもっとラウンド特化型が認知されていくはずですし、アウトドア練習場の打席数の減少と、インドア施設の打席数の増加を比較すると、まだまだ打席数が足りていない。需要と供給の観点からも、これからもっとシミュレーションゴルフの打席数が増えていくはずです」 

「ゴルフは自然の中でプレーするのが一番気持ちいいですが新しいゴルフの楽しみ方もあります」

タイガー・ウッズとローリー・マキロイが創設した「TGL」が今年から始まり、バーチャルとリアルを融合した“新しい”ゴルフのスタイルが提唱されたが、この動きは日本よりも海外で急速に広まっており、日本でのシミュレーションゴルフ認知はまだまだ遅れているという。

「世界各国のゴルフ人口とゴルフ場の数を考えたとき、一人当たりのコース数は日本は比較的多い。つまり実コースでラウンドするのに恵まれた環境だといえます。そのため、日本では韓国のようにインドアゴルフが“一つの文化”となるのは難しいとも予想しています。ただ、地方のガソリンスタンドの一角、商業施設の一角や空き店舗を使うなど、新しいタイプのインドアゴルフ施設が広がっていく可能性はあります。 

GOLFZONとしても、これまでにないゴルフプレー体験を提供すべく、中国の天津市に、日本の幕張メッセのワンフロアほどの大きさの中に、18台の『TWOVISION NX』を導入して18ホールを造った施設ができました。グリーンから5〜10Yまで来ると、スクリーンが自動で上がり、グリーンとグリーン周りの環境が登場します。そこからは、実際にカップインまでプレーをし、スコアを競います。リアルでも従来のシミュレーションゴルフでもない、新しいタイプのゴルフの楽しみ方がすでに始まっているんです」(山本氏)

街中のゴルフ場よりも狭い敷地内ででき、かつ猛暑や雨など天候に左右されず快適にプレーができる。さらに歩く距離も短いことから、高齢者などにも利点が多い。

「世界的な温暖化によって、日本でも夏場のラウンドは厳しくなってきています。昨年も気温によってはラウンドを許可しないコースも出てきていますし、猛暑によってグリーンの芝などの被害も出てきている。ゴルフ場の環境も年々変化していくなかで、新しいゴルフのスタイルにもっと意味が出てくるはずです」(山本氏)

従来のシミュレーションゴルフを超えた新しいゴルフ体験。近いうちに日本でも体験できる日が来るかもしれない。

中国天津市に誕生した
最先端バーチャルゴルフ場「CITY GOLF」

天津市に誕生した「CITY GOLF」。シミュレーションゴルフを搭載した18打席が用意され、そのスクリーンの後ろにグリーンやバンカーが配置されている。それぞれ形状やアンジュレーションが異なり、10Y以内に入ると「TGL」のようにレーザーでボール位置が指定され、そこからプレーを再開する。日本の会員権と同じシステムが取られており、1Rのプレー料金は約1万円。GOLFZONではこの取り組みを世界中に広めていく予定だという

週刊ゴルフダイジェスト2025年4月1日号より