中空&ストロングロフトで飛んで、止まる。『スリクソン ZX4』アイアン
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はダンロップの『スリクソン ZX4』アイアンを取り上げる。
シャープな見た目の中空ヘッド
アイアンに飛距離は欲しいけど、形状はシャープなプロモデルがいいというゴルファーに向けた『スリクソン ZX4』。中空構造により、深重心・低重心設計が可能になり、ツアープロが好んで使う兄弟モデル『ZX7』よりも1番手飛ぶのに、球が上がって止まるを実現している。
いつもどおり、7番アイアンのヘッドとクラブを実測した。クラブ重量は416.1gと標準的だが、クラブ長さが37.125インチとやや長く、スウィングウェートもD2.3とやや大きいので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが273万g・㎠と大きくなり、本来はドライバーのヘッドスピードが46m/sくらいのゴルファーにとってタイミング良く振れる設計になっている。
Point.1 クラブ長が37.125インチとやや長め
Point.2 スウィングウェートがD2.3とやや大きい
Point.3 クラブ慣性モーメントが273万g・㎠と大きい
やさしく飛ばせるプロモデル
ヘッドの形状を見ていこう。スリクソンらしく全体的にオーソドックスで、同一シリーズの『ZX5』や『ZX7』に比べ、フェースが長く、ソールの幅も広い。またグースネックと中空構造ということもあり、形状だけを見てもやさしさが伝わってくる。そして、同一シリーズと同じく、ソール面のトウ~ヒール方向の丸みが少なくストレートなリーディングエッジが特徴だ。
実際に試打してみると、まず中空構造のユーティリティ的なプロモデルヘッドで、『ZX5』よりもさらにフェースが長く、かつアドレスでソールが少し見えるくらいソール幅も広くなっている。個人差はあるだろうが、グースネックということもあり、アドレスで球が上がりやすく、ボールを包み込むやさしさがある。試打クラブは7番で軽量スチールの「NSプロ 950GH neo(S)」が装着されていたが、適度なしっかり感でスウィングしやすい印象だ。
同一シリーズの2モデルよりもフェースのトウ側の高さが低いので、実測で62.2度のライ角度とアップライトだが、それよりフラット感が出ている。また、スコアラインの位置が少しトウ寄りなので、ボールをフェースのトウ寄りに置いて構えるゴルファーに向いているといえよう。“スリクソン”と銘打つプロモデルにしては、ロフト角が28.5度とストロングで、『ゼクシオX』でも採用されたHT1770Mステンレスのフェースは材質も打感も硬いが、球の弾き感は良く、スピンも少なめの中弾道で『ZX5』よりも明らかに飛距離が出る。また、『ZX5』や『ZX7』に比べてネック軸周り慣性モーメントが大きいので、ダウンスウィングでのヘッドの返りが緩やかで、アドレスでのフラット感もあり、球が左につかまりすぎない感じがある。ソールのバウンス角は非常に小さいので、ターフを取らないスイープなスウィングのほうがソールの抜け感はいいだろう。
ダンロップ
スリクソン ZX4
<試打モデルスペック>※メーカー公表値
●ヘッド素材/フェース/HT1770M、ボディ(#4~7)/SUS431
+タングステンニッケルウエイト、(#8~SW)/SUS431
●ロフト角/28.5度(#7)
●ライ角/62度(#7)
●長さ/37インチ(#7)
●シャフト/NSプロ 950GH neo(S)
●総重量/約407g(#5・S)
●価格/14万5200円(5I~PW)
クラブ&ヘッドデータ(7Iの実測値)
クラブ長さ | 37.125インチ |
クラブ重量 | 416.1g |
スウィングウェート | D2.3 |
クラブ慣性モーメント | 273万g・㎠ |
ヘッド重量 | 267.9g |
リアルロフト角 | 28.7度 |
ライ角 | 62.2度 |
フェースプログレッション | 3.5㎜ |
バウンス角 | 0.2度 |
重心距離 | 40.2㎜ |
重心深度(フェース面から) | 4.3㎜ |
スイートスポット高さ | 20.6㎜ |
ヘッド慣性モーメント(左右) | 2551g・㎠ |
ネック軸周り慣性モーメント | 6120g・㎠ |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年4月27日号より