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最長400Y超え! 世界のドラコンクイーンの腕の長さは? 握力は? 日本のドラコン女王が直撃取材

9月上旬、PLDA女子ドラコン世界選手権が日本で初めて開催された。世界のドラコン女王たちがそろって参加した大会に、日本の元ドラコン女王、齊藤かおりが参上。世界の飛ばしの秘密を探った!

THANKS/那須小川GC PHOTO/Yasuo Masuda

齊藤かおり(左)

1975年、岩手県出身。岐本金属所属。USLPGAティーチング&クラブプロフェッショナルA級。ドラコン日本大会10勝+1、世界大会6回出場。ゴルフ・飛距離を研究、追求、チャレンジ! 悩めるアマチュアも指導

今回の齊藤のターゲットは、世界大会で何度も優勝している2人、サンドラ・カールボーグ(スウェーデン)とフィリス・メティ(ニュージーランド)だ。

「“怪物”から学びたいんです」と会場で取り出したのは、メジャーと握力計。さっそく突撃だ!

身長、体重、靴のサイズは聞き取り、握力、手の大きさ、両腕の長さを計測した。“身体検査”を面白がってやってくれる2人。

「遠目で想像しかしてなかったんですけど、やっぱり平均の女子より握力があるし、手も足も大きく、リーチも長い。私は、飛ばしにおける握力の必要性に関して、グリップは強く握らないほうがいいけれど、ある程度握力がないとクラブが吹っ飛ぶと考えます。ものすごいG(重力加速度)を支える握力は必要だと。また、手や足が大きいと道具を支える部分や接地面が安定します。それにエネルギーは地面からもらうので、受けるエネルギーが単純に大きくなる。また、クラブの長さを1インチ伸ばせば7ヤード飛ぶとも言われてます。私は肩からがシャフトだと考えているので、やはりリーチはあったほうがいい。馬場咲希選手のように。でも、肩周りが硬く軸が安定しない人は手が長くても不利になるとは思います」

サンドラ・カールボーグ

1983年、スウェーデン出身。世界大会5勝。身長175㎝、体重74㎏、最長飛距離は401ヤード。ゴルフは祖父から教わった。プロ資格を持ち欧州ツアーに出場したことも。2児の母
●靴のサイズ/EU41(約25㎝) ●手の大きさ実測/19㎝ ●両腕の長さ/172㎝ ●握力/44.3㎏(右)

フィリス・メティ

1987年、ニュージーランド出身。世界大会3勝。身長182㎝、体重は秘密。最長飛距離は414ヤード(世界記録)。 「日本のタコ焼き、大好きです」
●靴のサイズ/US8(約26㎝) ●手の大きさ実測/19㎝ ●両腕の長さ/190㎝ ●握力/48.8㎏(右) ●二の腕周り実測/36㎝。「足幅が広いんですよ」(メティ)


ドラコンはロックンロール・オブ・ゴルフ

次にスポーツ歴や趣味、なぜドラコンを始めたのかを聞いた。

「ゴルフは12歳で始めた。ドラコンは08年、25歳のときから。昔から飛距離は出たので始めました。16年からはロングドライブに集中して普通の試合は止めた。ドラコンは“ロックンロール・オブ・ゴルフ”。音楽もあるし、アドレナリンも出るし、雰囲気もいいんです。趣味はスキー。家族と旅行するのが好きで、都市もだけど自然もビーチも好き。ゴルフにもよく行きます。昔は陸上(ジャンプ)や乗馬も。2人の子どもができてからはなかなかできないんですけどね。睡眠時間は8時間。子どもが2人いるので、主人や父がみてくれるときは寝られます」(サンドラ)

「7歳のときにゴルフを始めました。ドラコンは06年、18歳のときから。周りよりも体が大きい自分に母が勧めてくれ、大会に出て1位を取ったのがきっかけ。そしてアメリカのロングドライブの大会で10位以内入るチャンスがあると言われて参加したらとてもエキサイティングで! 毎年行きたくなりました。こういう大会があるのを皆に知ってもらい、広めていきたいです。スポーツ歴はネットボールというバスケットボールに似たスポーツです」(メティ)

話を聞いて「やっぱり!」と、嬉しそうにする齊藤。

「ジャンプの要素は飛ばしには絶対必要で、地面のエネルギーを道具に伝えるとき、足で蹴って受け止めることで何十倍にもなる。ドラコン選手はトップがどうしても大きくなるし、左足をヒールアップしている人は多い。競技ゴルフではヒールアップが少しズレると曲がるけど、ドラコンでは少しズレても大丈夫。B・デシャンボーもそう使い分けています。メティのネットボールはジャンプ力が必要ですし、サンドラの陸上ジャンプはもちろん、スキーで傾斜の重力に対してブレーキをかけるのはジャンプの動き。乗馬も太ももを締めるから体幹が強くなる。ここにも飛ばしの要素がありますよね」

では次に、勝つため、飛ばすためのポイント、トレーニング法を聞こう。

変わらぬ共通点
「土台を重視、捻転で振り切る」

「練習は、フィジカルの強化も、スピードとミート率の向上も全部必要です。ジムに行くことが大事。パワーをつけ、お腹(体幹)とお尻の筋肉を鍛えるんです。子育ての合間に体を強くするのが私流。勝つためには正確に真っすぐ飛ばすことが必要。試合中はいつも、とても興奮してやっています。でも子どもができて、あまり自分にプレッシャーを与えずに楽しもうと心がけています」(サンドラ)

「体全部を強くすることとマクドナルドで食べること(笑)。あとは骨をキープする。私は背骨を大切にしています。重い首を支えるのは背骨ですし。そして一番大事なのは、飛ぶ“飛球線”をイメージすること。打ち方はいろいろあるけど、イメージに合わせて集中することが大事です」(メティ)

「ねじって、ためて、ヒットする」(サンドラ)

長年2人のスウィングを見続け、憧れてきた齊藤が解説する。

ドラコン選手っぽくないスウィングだというサンドラは、「体の柔軟性で捻転をしっかり作り、粘ってタメて、当てて振り切る。だから、土台がブレないように体をしっかり鍛えるんです。体幹部とお尻が重要だと言っていますが、体幹軸でセットアップし、地面のエネルギーを右と左の骨盤で受け止め、自分の土台のなかで振り切るから、ものすごいスピードが出る。骨盤が低いまま動くから、地面に着いている足からみぞおちの下あたりの、いわゆる『脚』部分が安定する。だから正確にヒットできてフォローはすごく長く振り抜けます。そしてあとは、真っすぐ遠くに飛ばすことに集中しています」

ヘッドはキャロウェイ・ローグ。ロフト9度。シャフトはKINET・VELOCITYのX。最大HSは120mph(約54m/s)。クラブは天気によって変える。ラッキーカラーはピンク

「打ちたい球筋イメージに集中」(メティ)

完全なる飛ばし屋のスウィングだというメティは、「体全体を使って力強いけれど激しいスウィングではない。右側にパワーをタメて、右軸でクラブとの引っ張り合いを使い、ボールにぶつけていく。ホームランバッターと同じ。よく階段を走ったりスクワットをすると言っていました。ジャンプの要素を入れるんです。そして『背骨』を大切にするのも下半身を重視しているから。渋野日向子選手もトレーナーさんと取り組んでいますが、背骨には全部の神経がつながっている。首も支え、腰、足や腕、末端への伝達にもなる。年齢とともに筋量が減っても、その伝達がよければ上手くいく。背骨周りの筋肉のトレーニングが必要。ケガもしにくくなります。前転運動ができるかどうかでチェックしましょう。メティはボール初速がとんでもない。インパクトの分厚さ。その一押しでボールに“重さ”が出る。それは体格・体力からくる部分でもあります」

現在は3種類のヘッド(ロフトは6度と8度)とレーブのレボルバーとダイナマイト(SとX、重さと長さも数種)を組み合わせ、調子によって変える。鉛も自分で貼り微調整。最大ボール初速は180mph(約80m/s)

大型ヘッド、軽量化というクラブの進化とともに“ドラコンスウィング”も変化していると齊藤。

「いかに体で振るか。オーバースウィング気味に上げて、重いから自分で手をこねて球をつかまえにいく動きにすると、曲がったりスピン量が多くなる。試合で勝ち進むには、正確性と飛距離の両方が必要。海外選手は体は大きいけど技術も高く、スウィングも綺麗。道具の進化で、サンドラのように、足、体幹を使い、腕をシャフトのように伸ばして肩関節を使って打つ選手が出てきました」

それでも、変わらぬ共通点があるという。考え方がシンプルなこと。土台を重視して捻転差を使い、右脳を使って気持ちよくターゲットに振り抜くこと。

「日本のレッスンはブームに乗りがちですが、変わらない大事な部分は同じ。スウィングについて悩むのは楽しくもありますが、細かいパーツにとらわれすぎなくていい。基本を使い、自分に合ったことをやればいいんです。それにしても2人ともさすがトレーニングはしっかりと。サンドラは子どもがいても……すごいですよね」

クイーンたちから日本ゴルファーにメッセージをもらった。

「自分のスウィングを信じて、プレーを楽しんで。とにかくヒット、ヒット! しっかり体をねじって、パワーをためて、できる限りヒットしてください」(サンドラ)

「大事なのは楽しんでよく笑って、一生懸命練習すること。齊藤さんも同じ考えだよね」(メティ)

「ゴルフをしていると苦しくなったり悩むけど、楽しみながらやったほうが、いろいろなことが進むと。勝つためにも、メンタルにもトレーニングにも大事なんですよね」

クイーンたちは最後まで、仲間を応援したり、笑顔や感謝の気持ちを伝えていたという。

「私も、年齢は考えながらも、体をどう使ったらいいか、効率のよいスウィングを研究し、飛距離を追求していきたい。そしてジュニアたちにも伝えたいです。あきらめない喜びってあるんです」

齊藤の飛距離の探求は続く――。

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月18日号より