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「アドレスが決まる」「手打ちが防げる」ゴルフに効く「ヒモトレ」実践編

ヒモを巻くだけで体が整うという驚きのトレーニング法「ヒモトレ」。ここからは、実際にヒモをどこにどう巻けばいいのか、どんな効果があるのか。具体的に教えてもらおう。

PHOTO/Tadashi Anezaki

語り手/小関 勲

こせき・いさお。73年山形県生まれ。ボディバランスボードの開発、制作、販売をきっかけに、多くの五輪選手、プロアスリートに接するなかで、体全体のバランスの重要性に気づき「ヒモトレ」を考案。中国武術「韓氏意拳」にも精通

聞き手/赤野公昭

あかの・きみあき。72年岡山県生まれ。日本古来の「禅」と欧米の最新理論を融合させた独自のメソッドで、プロゴルファーやプロ野球選手などを指導する。現在も禅の厳しい修行に励む

>>前編はこちら

安定感が高まる

小関 さて、ここで改めてヒモトレをやってみましょう。まずはゆっくり座ってください。腰やひざ、太ももあたりがキツく感じるでしょう。次に、僕が少し背中に手を当てるので立ってみてください。

赤野 ああ、ラクですね。

小関 実はヒモはこれくらいの感じなんです。僕が支えすぎると逆に立てなくなる。自分の姿勢や存在を少し大事にしながらだとラクになるんですね。情報が過剰に集まると全体性が消えますが、全体性を知らせるには、これくらいの接触でいいんです。

赤野 なるほど。小関さんが触った役割をヒモがする感じですね。

小関 「ここを意識して」と言うと、そこしか意識できなくて、全体の動きを感じられない。ヒモトレって自分の意識ではないんです。だからヒモは“やってる感”が出ないくらい、ゆるくていい。体の意識のズレていたものが、少しだけ修正されるんです。

赤野 ひざが痛いと思うと、長年の癖でそこだけを考えてしまう。我慢して無理している部分を自然の状態に戻そうと思ってもできません。でもヒモを巻くことで、たとえば足裏もあるんだと気づく。

小関 今までは痛みの度合いしか考えなかったのに別の視点にいく。それにゆるく巻くと、毎回、ヒモと体の接触は変わります。ヒモの動きが出るので、毎回新しい体になっていくんです。

赤野 ヒモを巻いたままスウィングしてみます。

小関 まず、構えが変わりました。安定感がみられます。

赤野 確かに……でも、ここで「ヒモを巻いたからいい結果を出さないと」の思いは捨てるべき。全体性のなかから自然な本来の自分の動きが生まれてくることが大事で、いきなり上手くなるのではない。疲れないことや、本来の自分のリズムが違うことを発見できるかもしれません。


赤野 力まない立ち方ってありますか? アマチュアには力んだアドレスの方が多い。たとえば「あの池に入れたくない」と思うと一生懸命立とうとしますし。

小関 プロはサッと構えていますよね。そもそも人間って止まらないんです。でも、止めようとするからおかしくなる。止まらないことを受け入れると、ちょうどよく立てます。自分の実感と実際はズレています。それをすり合わせることです。また、呼吸も立ち方で変わります。サッカー選手などには、呼吸が入る立ち方をするように言います。少し前傾して深呼吸しても呼吸は入りませんが、吸いながら体を戻していくと、お腹にストンと落ちるところが出てくる。次に後傾した状態で深呼吸するとこれも呼吸は入りませんが、また吸いながら体を戻してくるとストンと入るところがある。そこで走ったり動いたりしたらいいんです。

ゴルファーにオススメ「ヒモトレ」4選

【ヒモトレ1】へそ巻き

おへそ、もしくはウエストにゆるく巻く。体がまとまりやすくなる。プレーで下半身が浮いてしまう人にも効果的。腰痛持ちにもオススメ

【ヒモトレ2】脚巻き

お尻の下から前足の付け根に向かって巻く。しっかりめでOK。ウォーキングでも巻くといい。「押されているような感じで動けます」

【ヒモトレ3】タスキ掛け

ヒモをタスキにして、わきの下に10~20㎝たれる感じでゆるく巻く。見えない背中を自覚できる。姿勢が整う。肩こりにもオススメ

【ヒモトレ4】前後タスキ

後ろだけでなく前もクロスにする。腕だけで行っていた仕事が体でもまかなえるように。立つ・座るなどの動作もラクになる

効用1. アドレスが決まる
「脚巻き」をすると、アドレスが浮き気味の人は重心が下がる感じに、下半身を動かさないように踏ん張って固めようとする人はフッと浮く感じになる。「まさにちょうどいい感じで立てます」
効用2. 手で振らなくなる
「前後タスキ」で肩を大きく回すと、手で振るのではなくしっかり肩から回っている感じになる。「バランスが整うから。スウィング時にはヒモを2本組み合わせてもいいですよ」

巻くだけで本当に変わる!?
赤野氏の脚巻き体験を動画でチェック

「ヒモトレは『やらないこと』をしているんです」(小関)

赤野 自分で呼吸しながら感じるんですね。よく言われる重心の位置もズレがある?

小関 はい。僕は重心に関しては言いません。「ここが重心」と言った時点で、探し始めるから。人間は意識の動物です。でも意識が体の機能を制限してしまうこともある。

赤野 言葉と同じですね。

小関 「意識」を辞書で調べたら、現状に気づくということ。自分の感じていることを強化していくのではなく、気づいていくという位置づけにすると、意識は機能してきます。意識をはっきりさせようとすると不自由になってくる。

赤野 今、お話を聞いているときも、小関さんの言葉を理解しようとすると、周りの音が聞こえなくなり景色も見えなくなる。すごく部分的な聞き方です。調子の悪い選手も同じようになります。

小関 
何かに集中しすぎている。

赤野 「する」が強すぎます。ゴルファーが「バーディを取りたい」「絶対入れなきゃ」と考えだした瞬間に、結果と自分だけに集中し周りを排除するようになる。

小関 集中が先にあるのではなく、パフォーマンスが先に発揮できることが大事。子どもが集中して遊ぶような感覚です。

赤野 選手によっては、一所懸命ボールを打つし、上手くなるためのことばかりする。それだと練習のときは上手くいっても……本番では1球しか打てませんから。練習の自己満足に陥らないように、本番で自分の体がどう動いたか。

小関 自分らしいパフォーマンスが100%発揮できたか。それができないと本当の課題が見えてこない。勝つことを目標にしない。他と比較せず、評価を外に向けない。それは不安につながる。自分の課題を上手く表現できたかに価値を置く。それが結果を出すための一番の近道です。

赤野 ケガもしなくなる。僕も選手とそれを目指したいと思っています。それには頭のブロックがあるんですけれど。

100均のヒモでOK

ヒモは100円均一のお店で売っているものでもOK。ただ、平ヒモや皮ひも、ゴムヒモは向かない。オリジナルの公式ヒモもある

体感に言語をくっつけていく

赤野 小関さんは「体はグラデーションだ」と言う。言葉は0か1かになるけど、その間もあると。

小関 そうです。たとえば恐怖と好奇心はグラデーションの関係。能動的になれば好奇心になるし、受動的になれば恐怖になる。そうとらえると、自分の在り方を少し調整してあげると楽しくなれる。毒も少量だったら薬になるし、よいものでも摂りすぎたら毒になる。

赤野 部分が悪いのではなく、部分と全体がつながって、関係性がきちんとあればいい。ボールと周りの景色、風や自然がつながれば、最悪のミスはなくなる。

小関 1本の木も単独で生きてはいない。それだけを取り出すこともできるけど、土や太陽や鳥や、全部があっての木です。

赤野 なるほど。最近僕は「ING」が大事だと考えています。頭のブロックの外し方です。言葉で「TO DO」化すると上手くいかない。体が表現できないから。でも、「いま池が怖いと言っているよね」とINGの言葉にするとだんだん流れ出すんです。

小関 動きだすんですね。

赤野 これが体をチューニングする言葉の伝え方なのかと思っています。

小関 さすがです。メンタルからのアプローチが面白い。

赤野 でもこの方法を実践するようになったのは、体を知ってからなんです。体に合わせてあげる。

小関 昔は心構えが必要だったけど、今は体構えのほうが必要なんです。心は体全体を支配し変化させる力がありますが、筋肉や骨格や神経の機能の1つだと思うとコントロールしやすくなります。

赤野 本当にそう。体を整えるための言葉の使い方をトレーニングする必要があると思っています。

小関 僕らは意外と言語と体感を分離して使っているんです。言語化できない体感が伴い、そこに言葉がくっついていかないといけないんです。

赤野 それも全体性ですね。今日はとても面白い話を聞かせていただきました。心と体を整えるため、ゴルファーへのヒントにもなったのではないでしょうか。

体のどこに巻いてもOK。体本来の力を引き出そう。「自分でできて、自分でチェックもできる。ヒモトレはすごく主体的な経験です」(小関)

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月27日号より