余命宣告されたエージシューター<後編>「クラブはドライバー、5W、ウェッジ、パターがあればよか」
週刊ゴルフダイジェスト
鹿児島に、自身の年齢以下のスコアで回る「エージシュート」を2000回以上達成したスーパーシニアがいる。その人、92歳を迎えた赤﨑俊美さんは、最近余命宣告を受けたのだという。そんな彼の元をエージシューターを追い続けてきたゴルフライターが訪ねた――。
TEXT / Kenji Takahashi PHOTO/ Norimoto Asada、Kenji Takahashi

>>前編はこちら
- 鹿児島に、自身の年齢以下のスコアで回る「エージシュート」を2000回以上達成したスーパーシニアがいる。その人、92歳を迎えた赤﨑俊美さんは、最近余命宣告を受けたのだという。そんな彼の元をエージシューターを追い続けてきたゴルフライターが訪ねた――。 TEXT / Kenji Takahashi PHOTO/ Norimoto Asada、Kenji Takahashi 赤﨑俊美 87歳……
通算1472回で99歳の誕生日の朝、亡くなった熊本県人吉市の植杉乾蔵さんは、88歳のとき、階段の上から転落してきた人にぶつかって腰椎を骨折、病院で50日間ギプスに固定されたが、退院して5日後にプレーし、その3週間後には134ヤードをドライバーでホールインワンして、保険会社に「たぶん、日本最高齢のホールインワンでしょう」と称えられている。
横浜市の金子勝男さん(87)は、2年前に間質性肺炎を患って病院に家族全員が集められたが、病室に鉄アレイを持ち込み、ベッドの上で腕を鍛え続けてコースに復帰、昨年秋には500回目のエージシュートを達成している。皆さん、もう一度ゴルフをやりたいと、その一心で病魔を振り払って復活しているのである。
会う人皆が声をかけてくる
翌日、ゴールデンパームCCに、赤﨑さんは自分で車を運転して、スタートの1時間半前に現れた。クラブハウスに入るなり、会う人ごと皆が声をかけてくる。
「元気やったと?」
「ちょっと痩せたごたるね」
それらの声に、赤﨑さんはいちいち立ち止まって笑顔で応える。
「もうドライバーは130ヤードしか飛ばないし、ボギーオンがやっとですよ」
ゆっくりとティーイングエリアに向かう赤﨑さん。すでにひざは左右とも半月板が擦り減っていて、サポーターなしでは歩けないと言い、少しよろけ気味に歩く。だが、ティーアップしてアドレスに入った途端、表情は一変した。すっと立ち、よどみのないスウィングでドライバーを一閃すると、ボールは低い弧を描いてフェアウェイのど真ん中で弾んだ。乗用カートを自ら運転して第2打地点へ。ほとんどがセカンドオナーだから、躊躇なく5Wを抜き、2打目でグリーンそばに運んで、PWかAWで乗せて2パットのボギー。
「クラブはドライバー、5W、ウェッジとパターの4本があればよか。あとはお飾りですよ(笑)」
途中、ダボとトリがあったが、寄せワンのパーも4つ来たので、前半のインは44。はたから見る限り、この人が病魔に冒されている余命3カ月の92歳とはとても思えない。ボールの前に立つと、間髪を入れずサッと振り抜く。そのテンポのよいスウィングは15年前とまったく変わっていなかった。
ランチは生姜焼き定食をぺろりと平らげ、食欲も旺盛に映った。
ところが後半に入り、ドライバーの方向性にズレが出始めた。また3オン狙いの2打目もグリーン手前のバンカーに入るなどしてダボが続く。バンカーから出るときは同伴者に手を引っ張ってもらわないと斜面を上がれない。6番ホールを終わって、パーなし、ボギー3個、ダボ3個の9オーバー。
さすがに少し疲れが出たのかな、と心配したが、杞憂だった。
7番ホールのパー5はピンまで60ヤードの4打目をAWで1メートルにつけてパー。8番の池越え、128ヤードのパー3は、ドライバーでグリーン奥のカラーに乗せ、そこから上って下る40メートルのスライスラインを30センチに寄せて「お先に」のパー。もちろん、きちんとカップインして。最終ホールを“ダボった”ものの47でホールアウト。トータル91のスコアで、見事にエージシュートを達成した。
「さすがですね、2172回目!」
私が言うと赤﨑さんはすぐに手を振って打ち消した。
「いやいや。2174回目ですよ」
なんと、私に電話をくれてから、もし18ホールを歩けなかったら恥ずかしいからと、その後の1週間で2ラウンドし、両方でエージシュートを達成していたのだった。

今現在も“宝”を積み重ねる赤﨑さん。3月25日現在、赤﨑さんのエージシュートは通算2178回です
エージシュートは「人生の達人」の宝
過去、約100名のエージシューターを取材し、エージシュートを達成する秘訣を、私なりに得ている。5つの「K」が必要なのだ。「健康」「金」「家族の理解」「交友」「気持ち」――この5Kである。「あんた、明日もゴルフ? もう歳なんだから、いい加減にしたら」と奥さんに言われるようではエージシュートは無理。ゴルフ友だちにエージシューターがいると「あいつにできるのなら、オレも」となる。そして最後の「エージシュートを出したい」という気持ちがあると、前の4つはすべてクリアできる。
これらの5Kは、次のように言い換えられる。エージシュートはゴルフの達人なら誰でもできるわけではない。松山英樹はまだエージシュートは出せないのだ。では、どんな人なら出せるか。
健康で自己管理のできる「健康の達人」であり、お金を残すには若い頃に一生懸命仕事をした「仕事の達人」であり、「家庭生活の達人」で、「友だち作りの達人」であること。これらがそろった「人生の達人」にして初めて到達する境地がエージシュートなのだ――と。だから、余命宣告を受けてもなおゴルフに向き合うことができる。そんな赤﨑さんの後ろ姿を見ながら、ゴルフの持つ無限の力で、今回もぜひ復活してほしい、と願わずにはいられないのだった。
158センチの小柄な体から、切れのいいスウィングでドライバーショットを放つ
>>前編はこちら
- 鹿児島に、自身の年齢以下のスコアで回る「エージシュート」を2000回以上達成したスーパーシニアがいる。その人、92歳を迎えた赤﨑俊美さんは、最近余命宣告を受けたのだという。そんな彼の元をエージシューターを追い続けてきたゴルフライターが訪ねた――。 TEXT / Kenji Takahashi PHOTO/ Norimoto Asada、Kenji Takahashi 赤﨑俊美 87歳……
週刊ゴルフダイジェスト2026年4月14日号より


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
書籍・コミック
























