一番の問題は「活動資金」 JGAが考える日本ゴルフの未来<前編>
週刊ゴルフダイジェスト
先日、日光カンツリーで開催された日本オープン。1927年に創始され、第1回大会はアマチュア12人、プロ5人の合計17名で争われた。今年で90回目を迎えるが、この日本オープンを主催するのが日本ゴルフ協会(JGA)。そのJGAが今、大変な局面を迎えているという。
PHOTO/ Tadashi Anezaki

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- 先日、日光カンツリーで開催された日本オープン。1927年に創始され、第1回大会はアマチュア12人、プロ5人の合計17名で争われた。今年で90回目を迎えるが、この日本オープンを主催するのが日本ゴルフ協会(JGA)。そのJGAが今、大変な局面を迎えているという。 PHOTO/ Tadashi Anezaki >>後編はこちら ……

公益財団法人日本ゴルフ協会
専務執行役
山中博史
——「日本アマチュアゴルフランキング」がグラファイトデザインとネーミングライツ契約をしたと8月に発表されました。
そして、日本ジュニアを高ゴ連(日本高等学校・中学校ゴルフ連盟)と共催し、タイトルスポンサーが付いたように、アマチュアの大会にも冠スポンサーが付くようにしたいと考えています。またナショナルオープンとナショナルチームにも新しいスポンサーに入っていただくなど、自分たちも最大限の自助努力をしているところです。日本オープンもマスターズの出場権を付与していただきましたが、円安もあってアジアのなかでも決して賞金は高いとは言えません。また、現在主催競技のエントリーフィーは3万円と高額になっていますが、それでもアマチュアの大会はエントリーフィーしか収入がないので、やればやるほどJGAは赤字なのです。
——なぜ全米ゴルフ協会(USGA)は財源が潤沢なのでしょうか?
間違いなく全米オープンの収入だと思います。テレビの放映権料やチケット収入は莫大ですし、大会グッズなどのマーチャンダイズも飛ぶように売れています。また根本的に日本と会員の構造が違います。JGAはゴルフ場が主な会員ですが、USGAは個人会員が中心なのです。またJGAのようなナショナルフェデレーションの主な役割の一つとしてゴルフ規則やオフィシャルハンディキャップの普及があります。特にハンディキャップ取得についてアメリカなどでは有料で発給し、かなりの収入になっていますが、日本ではJGAの加盟ゴルフ場の会員であれば無償となっています。にもかかわらず、まだまだクラブハンディキャップが主流で、全世界で統一されたワールドハンディキャップシステム(WHS)を取得している人が少ないのです。WHSがないとプレーできないゴルフ場もある欧米とは環境が違うんです。

ゴルフ規則やオフィシャルハンディキャップの普及もJGAの役割だが、日本ではJGAの加盟ゴルフ場の会員であれば無償。さらに依然としてクラブハンディキャップが主流となっている
——JGAの主な財源は?
JGAの財源は会員であるゴルフ場(約1500コース)や個人会員等から会費として約4億円、ナショナルオープン(日本オープン、日本女子オープン、日本シニアオープン、日本女子シニアオープン)の収入が13~14億円、国からの助成金、スポンサー収入、寄付金などで年間20~21億円となっています。
——しかし、寄付金だと財源が安定しませんね。
そうなんです。あくまでも寄付ですので。そこで、多くの地区連盟や県連盟でゴルファーから徴収している「ゴルフ振興協力金」をJGAに対しても協力してもらえないかという案が出ているのです。日本のゴルファーは年間に約8700万ラウンドしているので、1人あたりはわずかでもかなりの額になります。ただし、それが一部のゴルファーやJGAの赤字補填のためでは到底納得してもらえません。ゴルファーに協力してもらうならば、使い道を明確にしないといけません。具体的に「こういうことに使うので協力してほしい、これによって全てのゴルファーやゴルフ界にとって有益な事業を展開する」ということをしっかり示して納得していただかないといけません。
例えば「日本ゴルフ殿堂」。2010年に「日本プロゴルフ殿堂」として設立され、日本プロゴルフ協会(PGA)、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の3団体が日本のプロゴルフ界で偉業を達成した選手、プロゴルフ発展に貢献してこられた方々を顕彰してきました。これを今年の4月からJGAの新組織として「日本ゴルフ殿堂」を設立し、顕彰対象として、アマチュアゴルファーやコース設計者、メディア、ゴルフクラブのデザイナーらにも範囲を広げました。第1回顕彰式典は来年3月を予定しています。この「日本ゴルフ殿堂」と、現在は廣野GCの敷地内に建つ「JGAゴルフミュージアム」を一緒にしたいと考えていますが、それには莫大な資金が必要になります。日本のゴルフの歴史や貢献されてきた方を顕彰し後世に残すという活動も大切なゴルフ振興だと思っています。
——JGAとして大きな決断をしなければいけないところに来ているんですね。
JGAは一体何をするところなのか? 何が求められているのか? 誰のためにあるのか? そこをもう一度考えなければいけないと思っています。もしかしたらやらなくていいことをやっているかもしれないし、やるべきことができていないかもしれません。いずれにせよ公益法人、ナショナルフェデレーション、統括団体として皆さんの期待に沿うためには、人材と財源が必要なのです。ゴルフ界の発展のために受益者でもあるゴルファーの皆様にご協力を仰ぐことが必要になってきていると思います。
2010年に設立された「日本プロゴルフ殿堂」だが、4月からJGAの新組織として「日本ゴルフ殿堂」になった。この「日本ゴルフ殿堂」と、廣野GCの敷地内に建つ「JGAゴルフミュージアム」を一緒にする構想も出ているが……

週刊ゴルフダイジェスト2025年10月28日号より


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