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【ゴルフのお仕事】漫画原作者・かわさき健<前編>「ゴルフには正解も終わりもない。それが魅力です」

小誌人気連載漫画『オーイ! とんぼ』の原作者、かわさき健氏。父は『巨人の星』の作者でもある川崎のぼる氏だ。かつてプロゴルファーを目指したこともあるかわさき氏だが、漫画原作者としての道を選び歩んできた。その人生の選択、仕事への想いを聞くと、ゴルフ愛と人間愛が見えてきたのだ。

かわさき健 1967年生まれ、東京都出身。高1で本格的にゴルフを始め、矢板CCに研修生として入るもプロへの道は断念、漫画原作者としての道に進んだ。現在は熊本県在住、メンバーコース高遊原CCを中心に“週1程度ゴルファー”

  • 漫画『オーイ! とんぼ』の原作者、かわさき健氏。父は『巨人の星』の作者でもある川崎のぼる氏だ。かつてプロゴルファーを目指したこともあるかわさき氏だが、漫画原作者としての道を選び歩んできた。その人生の選択、仕事への想いを聞くと、ゴルフ愛と人間愛が見えてきたのだ。 かわさき健 1967年生まれ、東京都出身。高1で本格的にゴルフを始め、矢板CCに研修生として入るもプロへの道は断念、漫画原……

セベのゴルフ、岡本綾子さんの
スウィングに憧れ、後藤修理論で育った

かわさきは、いつもニコニコしている。そして、どんな質問をしても、真剣に考え答えてくれる。

まずは現在のハンディキャップなど、ゴルファーとしてのデータを聞くと、少し恥ずかしそうに、「先日の改定で2.3から4.1になりました。ベストスコアは試合で67、プライベートで66。ホールインワンは……そう言えるのかわからないですけど、一度だけ、沖縄のショートコースで貸しクラブを使って。だからその話題になったときは、ベン・ホーガンの『僕は試合でホールインワンしていない。なぜならピンを狙わないから』という話を出すことがあります」。

作品には作者の人柄がにじみ出てしまうものだ。人気ゴルフ漫画となった『オーイ! とんぼ』の原作者とは、どんな人物か。

運動が好きな少年だった。野球は小学生の時に少々、中学ではサッカー部に入った。中高時代は自転車が好きで、東京から伊豆を一周し、大島、三宅島に渡ったり、野宿しながら広島まで行ったりもした。「高校では山岳部にも入り、南アルプスの夏山に登ったり。冬山は一度だけですけど、とんでもない景色を見られるんですよ」

父に連れて行ってもらって始めたゴルフ。高校時代(明星学園)に運命的な出会いがあった。

「関東ジュニアで優勝するようなゴルフのすごく上手い“伴くん”(伴樹一)と同じクラスで仲良くなり、ゴルフの話をしているうちに『僕もやりたいな』と本格的に始め、一気にハマりました。サッカーなどの団体競技があまり得意ではなく、一人でできるものが性に合っていたのでピタッとハマったのかもしれません」

なかなか上手くなれなかったと言うが、半年間ほぼ独学で練習し、コースデビューは57・54。

「伴くんに勝ちたくて、僕はゴルフ部には入らなかった。実際は一緒に回ったことはなくて、僕が勝手にライバル視していました。親父の『巨人の星』の伴宙太みたいな名前でしょう。思えば、彼は突然、運命的に現れた気がします」

伴宙太は星飛雄馬と高校時代からの友人で、義に篤く涙もろい、後にライバルになるというキャラクターである。実は“伴くん”は、かわさきが研修生時代、海で溺れた子どもを助けようとして亡くなったのだという。

「突然の訃報が入り、葬儀に行って彼のお父さんが話をしてくれたんです。遺体はお子さんの手を離していなかったと。その時は号泣しました。実はこの春、ゴンじいが亡くなるときのワタルくんとのエピソードは、伴くんの話です。ゴルフは彼に一生敵わないままで終わってしまいました……」

まるで漫画のようなストーリーと思わず口にするような話。『オーイ! とんぼ』には、こういう「人間愛」が込められている。

憧れのプロはセベ・バレステロスやリー・トレビノ。彼らのゴルフが大好きだった。3番アイアン1本で遊びながらゴルフを覚え、球を曲げ倒して見る者をワクワクさせる――七色の球が打てるとんぼは、大好きなセベがモデルだ。プロになりたいと思ったきっかけを与えてくれたのもセベだ。

「スウィングで一番憧れたのは中嶋常幸さん。岡本綾子さんのスウィングも綺麗で大好きでしたし、僕のアイドル的存在でした。全然マネできませんでしたけど。僕のスウィングはカッコ悪い。でもいろいろな球は打てますよ。直ドラもときどきやったり、パットもカップを見ながら打ちます」

当時は雑誌の連続写真を1コマ1コマ真似してスウィングを作っていたという。

「雑誌では『チョイス』が好きでした。特集買いです。印象に残っているのは後藤修さんの『スウィングは川のように流れる』。あれを読んでしまったから、ゴルフが難しくなったかな(笑)。絶対カットは打ってはダメで。でも、初めてゴルフの理論があると理解したのが後藤修さんです」

日本で一番好きなコース、川奈ホテルGCで。「ドリームフォーサム」は「セベは絶対で、ゴルフを教えてくれた父も。もう一人を選ぶのは難しい。“伴くん”も研修生時代の仲間も多くいます。でも尊敬している岡本綾子さんにします」

しかし、かわさきの人生のレーンはプロゴルファーにはつながっていなかった。5回目のプロテストに落ち、これからの生き方を模索した時にふと浮かんだ漫画原作者という新しいレーン。もともと学芸会の脚本を書いたり、物語を考えることが好きだった。父の後押しもあり、初めて書いて投稿した作品が、ヤングマガジンの公募に採用されデビュー。しかし、連載ができるようになるまでには7年かかっている。

「父は、芽がなかなか出ないときも、僕の作品を読んで『これだけプロとして長くやっているオレの目から見ても、お前の原作は絶対面白い。将来、仮に先生と呼ばれるような立場になって、新しい作品はないですかと聞かれた時、今あるどの作品を見せても十分面白いと評価されると思う』と言ってくれて、その時は嬉しかったですね。僕がこの仕事でそこそこ食えるようになったときには、『もともとお前はこっちのほうが向いていると思っていたんだ』と言われたこともあります」

父のことを尊敬している、と言い切る。父の作品からの影響も隠さない。その大きな存在は、かわさきの作品の人間愛の1つだ。

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  • 漫画『オーイ! とんぼ』の原作者、かわさき健氏。父は『巨人の星』の作者でもある川崎のぼる氏だ。かつてプロゴルファーを目指したこともあるかわさき氏だが、漫画原作者としての道を選び歩んできた。その人生の選択、仕事への想いを聞くと、ゴルフ愛と人間愛が見えてきたのだ。 かわさき健 1967年生まれ、東京都出身。高1で本格的にゴルフを始め、矢板CCに研修生として入るもプロへの道は断念、漫画原……

週刊ゴルフダイジェスト2025年10月21日号より