プロやトップアマを指導する傍ら、東京大学ゴルフ部監督として初心者を教える経験も積んできた井上透コーチ。日頃のレッスンから導き出した、効率よく上達させるうえで重要なポイントとは?

PHOTO／Tsukasa Kobayashi

井上透

いのうえとおる。1973年生まれ、神奈川県出身。東大ゴルフ部監督歴10年。アメリカでゴルフ理論を学び、中嶋常幸、佐藤信人、穴井詩など多くのプロやトップアマ、ジュニアを指導。08年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。11年には早稲田大学大学院にて「韓国におけるプロゴルファーの強化・育成に関する研究」で最優秀論文賞を獲得

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  東大ゴルフ部監督・井上透が導き出した最速上達の第一歩は“片手打ち”「1球1球真剣にやるのではなく、ただ連続で打つだけでOKです」

  プロやトップアマを指導する傍ら、東京大学ゴルフ部監督として初心者を教える経験も積んできた井上透コーチ。日頃のレッスンから導き出した、効率よく上達させるうえで重要なポイントとは? PHOTO／Tsukasa Kobayashi 井上透　いのうえとおる。1973年生まれ、神奈川県出身。東大ゴルフ部監督歴10年。アメリカでゴルフ理論を学び、中嶋常幸、佐藤信人、穴井詩など多くのプロや……

東大生のゴルフは頭でっかち!

ゴルフの『バカの壁』は、『センスの壁』にあり。井上は語る。

「たとえばミスショットをしたとき、それがミスがどうかわからない人には教えづらい。これがゴルフの『バカの壁』です。レッスン中に『今少しカットに入ったからクラブをインサイドから下ろそう』と伝えたとき、『インサイドってどうやって下ろすんですか』というやり取りにも、その壁は存在します。これは初心者には起きること。それでも高度な運動技能者だとこういう質問はしません。しかし、指導者の仕事は、どんな練習やトレーニングをすれば、その質問は生まれなくなるのかを考えることなんです」

東大ゴルフ部は約6、7割が初心者。「幼少期に両親と1度ゴルフした学生も経験者に入っていることもある。数年に一度、90くらいで回る学生がいる感じです。入部理由は、今から何かスポーツがしたい、保護者の方が薦めている、など。運動神経はごく普通かあまりない感じ。一般的な男子をランダムに連れてきた感じです」

その“初心者集団”に、以前は「型」から教えていた。

「グリップの握り方やボールの位置など。今、積極的に教えることはやめました。その情報は自分で見つければいいし、うるさく指導しない。標準値は教えてもこだわることには意味がないんです」

現在は男子10人、女子2人の部員。「東大の監督になってよかったのは、言い方が悪いですけど、運動機能のない初心者という“検体”を指導できること。彼らの成長は僕の肥やしにもなるんです」

東大生はどうしても頭でっかちになりがちだという。

「彼らの学業的な才能はすごいです。だから、あまりにも詳しくゴルフを指導してしまうと、考えるゴルフになってしまう。すると実際にはショットが真っすぐ打てなくなったりします。運動の無意識化を使っていないからです。運動学習のゴールは、無意識的にボールを上手く打つこと。意識的に物事を覚えるというより無意識的にわかることを増やさなければならない。だから、少ない情報量の中で、瞬間的に力が発揮できるようなスウィングを身に付けないといけません。最初に『今、君たちにゴルフの才能はない』と言いますよ」

では、どうすればその壁は崩せるのか。スタートラインが肝心で、「連続片手打ち」に取り組む。

「1球1球慎重に考えながら打つような練習はさせません。最初に“当たらない”という悩みを抱えてほしくないのです。できるだけいい加減に打つように言うので、きちんと当てたいという気持ちすら発生しないこともいいんです」

東大生の初心者でも皆、運動特性は違う。「“タメ感”がある学生もいれば、“トップで止まれない”という学生もいる。コーチの役割は『プランナー』だと思っていて、今その人は何の技術が習得できていて、何ができていないのかを分別できること、各人の練習やトレーニングプランやドリルを作れることが大切です。1時間の練習の中で、〇番ででこういうショットをこういう意識で〇回打ってくださいと。練習メニューの構築のためにレッスンをしているんです」

第一段階こそ“片手打ち”

ゴルフでいう「運動学習」とは、クラブをどうやって上手く扱うかという幅を広げることだと井上。

「クラブという棒を振る競技であるゴルフは、動作感覚としていろいろな動き方を獲得しなければならない。『運動神経がないから』と言うと上達しない。そこから逃げてはダメ。皆クラブを自由自在に動かせる可能性は持っています。クラブを動かす感覚を強制的にでも植え付けるのが大事です」

これに最適なドリルが「連続片手打ち」なのだ。

「ゴルフの難しいところを2つ挙げろと言われたら、まず両手で打つこと。もう1つはアドレスして（構えて）打たなければいけないことです。これを第一段階（レベル1）で習得しようとすると、運動学習に邪魔が入る。子どもがすぐに上手くなるのは、アドレスやグリップを考えず適当に体を動かしているからなんです」

プロが取り入れる片手打ち練習は難しいイメージだが、井上の「連続片手打ち」は簡単なのだという。

「両手で打つ、きちんとアドレスするといった“レベル5”を最初に練習するのではなく、連続片手打ちという“レベル1”に取り組む。一般に考えられている段階とは逆なんです」

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  東大ゴルフ部監督・井上透が導き出した最速上達の第一歩は“片手打ち”「1球1球真剣にやるのではなく、ただ連続で打つだけでOKです」

  プロやトップアマを指導する傍ら、東京大学ゴルフ部監督として初心者を教える経験も積んできた井上透コーチ。日頃のレッスンから導き出した、効率よく上達させるうえで重要なポイントとは? PHOTO／Tsukasa Kobayashi 井上透　いのうえとおる。1973年生まれ、神奈川県出身。東大ゴルフ部監督歴10年。アメリカでゴルフ理論を学び、中嶋常幸、佐藤信人、穴井詩など多くのプロや……

週刊ゴルフダイジェスト2025年9月16日号より