鳩山CCで行われた関東ミッドアマの予選。前半38はいつもの谷繁ペースで、本人も「粘っているほうだと思う」とハーフターン時に話していた。ところが後半に落とし穴が。特に上がり2ホール、勝負強い谷繁らしからぬボギー、ボギーで40。トータル78で上がってくると、さすがに疲労困憊の様子。それでもしっかりスパイクを磨き上げている谷繁に声を掛けた。

PHOTO／Tadashi Anezaki　THANKS／立野クラシックGC

【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.20「課題のアプローチを最終調整!　増やした技術でいざ決戦へ」

強い者が勝つのではない
勝った者が強いんだ

編集担当　結果はいかがでしたか?

谷繁　前半38、後半40の78。正直、微妙です（※谷繁がホールアウトした時点では予選通過かどうか結果がわからなかった）。特に上がり2ホール、パー3とパー5でボギーを叩いたのは痛いです。回りながら、周囲の状況も見て「76」なら通りそうかな、「77」だと微妙だなと思っていました。それが結果は「78」。（通過の）可能性はあるかもしれませんが、僕としてはダメなラウンドでした。特に上がり2ホールのボギー、ボギー……はあ、下手だねえ……。

担当　調子自体はどうだったんですか?

谷繁　そんなに良くはなかったです。ドライバーはフケた球が多くて。でも、そんななかでもアプローチでパーを2つかな、拾えたし。バンカーからも拾えているし。アプローチでミスというミスは1つぐらい。随所にいいところは出てはいたんですが、ただ、ゴルフは18ホール回ってなんぼですからね。

担当　特に競技ではそれがすべて。

谷繁　ほんとにそうですね。厳しい。そして、ヒリヒリする。今日はさすがに消耗しました。

担当　青木コーチも、競技は1打1打の消耗が普通のラウンドとは比べ物にならないという話をしていました。

谷繁　粘れたところもあったんですけどね……。でも、今回は通過しないと意味がありませんから……。ただ、悪いばかりのラウンドというわけでもありませんでした。青木さんのレッスンで学んだ、コースの中で“最悪の場面を避ける”ことはできたと思います。ここにだけは行っちゃダメというところには（球は）行きませんでした、というか、そこに行かないようにできた。行っちゃいけない所がわかったし、そこを避ける技術がついた。アライメントのレッスンのおかげでもありますね。技術面、マネジメント面でスキルアップはあったのではないかと思います。

担当　逆に悪かった点は?　傷に塩を塗るようですみません!

谷繁　いえいえ、野球だって大敗・惜敗の後のインタビューだってありますから。悪かったことを振り返って次に生かすのはアスリートとして当然の作業。

担当　もしかして、丁寧に靴を磨きながら反省していたとか……?

谷繁　あははは。でも、どんな負けの後でも道具の手入れはします。プロ野球時代と同じこと。道具は悪くない。悪いのは使っているほう。だから、今日は僕が悪い。我流で固めてきた“手を使うスウィング”がどうしても出ちゃっていた。どうしても手でこねてしまったり。レッスンで何度も指摘されていたのに……。青木さんのおかげで引き出しの数がすごく増えたんですが、それをスコアと結びつけられなかったかな。

担当　どの引き出しを開けるかにはとっさの判断も求められるし、そのためには少し時間が足りなかったのかも……。

谷繁　そうかな、でも反省はするけど、言い訳はしたくないから。もう、下手なだけ。あと、アマチュアゴルフで、今回のような大会の予選では1打差だろうが10打差だろうが、負けは負けだから。野球でも1点差だろうが10点差だろうが1敗。「強い人が勝つんじゃない、勝った人が強いんだ」と言われるじゃない?　その通りだよね。僕は弱かった。出直しですね。

※

その後、大会を主催する関東ゴルフ連盟から出された結果は驚きのものだった。スコア「78」で8人が並んだが、マッチング・スコア方式（※タイスコアの選手がいた場合、後半9ホールのスコアで決まる。それでも同じなら残り6ホール、さらに同じなら残り3ホールで決まる）により、谷繁は24人通過の大会で25番目のスコア（順位は19位タイ）で予選敗退。つまり、上がりのボギー、ボギーが響いた形。もしこの2つのボギーのうち1つでも上がり3ホール以外であったならば「通過」できていたことになる……。谷繁は「たった1打で勝負が決まる。それが競技ゴルフ」と話していたが、図らずもそれが現実となってしまった。それも、驚くほどに悔しい形で。

しかし、谷繁は最後に「出直しですね」と言った。試合のヒリヒリ感を愛する男、谷繁元信。彼の姿をまた見たいではないか。「待ってるぞ、タニシゲ!」

週刊ゴルフダイジェスト2024年9月17日号より

CS放送のGAORAでは「谷繁元信×青木翔の勝つゴルフノート」がオンエア中