【キミこそ王子だ】Vol.312「OBは怖くない」抜群の“制球力”を持つ令和のハンカチ王子
雑巾王子こと武市悦宏プロが、全国の有望なジュニアゴルファーのもとを訪れ、大人ゴルファーにも役に立つゴルフのヒントを探る当連載。今回の王子候補は、埼玉県出身、川越市立霞ヶ関中学校2年の戸村空汰くんだ。今年「関東ジュニアゴルフ選手権」で優勝した逸材。彼の持ち味である「曲がらない球」の秘訣について武市が語る。
今回の王子候補
戸村 空汰くん
とむら・そうた ●主な戦歴/2023関東ジュニアゴルフ選手権優勝 ●ベストスコア 61(宍戸ヒルズ・東) ●トレーニング/毎日腹筋108回(36回×3セット) ●練習/毎日2時間、200球
ゴルフが大好きな両親の影響で、4歳からクラブを握った戸村空汰くん。練習場の所属プロに手ほどきを受け、小6のときにスコア61という快挙を達成。幼少期からゴルフと並行して水泳も習っていたが、「ゴルフのセンスあるかも!?」ということで、水泳をやめゴルフ一本に絞るとさらに才能が開花。中2の今年「関東ジュニアゴルフ選手権」を制し注目の選手となった。
「飛距離は出るほうではないですが、方向性には自信があります」
と自らが言うように、とにかく曲がらないのが武器。パーオンさせ、得意のパターでバーディを狙うスタイル。最近のジュニア選手では珍しくドローとフェードを打ち分けるのも得意。
「本当に曲がらないね。フェースローテーションさせず、狙った所に運ぶように打つ感じがいいよね。OBなんて怖くないでしょ」
「怖くないです」
「曲げないコツは何?」
「う~ん。自分ではよく分からないです」
返答に困り、ポケットからハンカチを取り出し汗を拭く空汰くん。
「いつもハンカチ持ち歩いてるの?」
「はい!」
「ラウンドのときも?」
「はい! 顔や手の汗を拭きます」
「ハンカチ王子じゃん(笑)。ボクが空汰くんのスウィングを見て感じたのは、とにかく力を逃がさないのが上手いな~と」
アマチュアは飛ばしたいという気持ちが強いので、力を出すことに注力しがちだ。もちろん、それもアリだが、方向性を重視したいなら、空汰くんのように力を逃がさないことに注力したスウィングを参考にするべき、と武市は考える。
「空汰くんは、ボールに近く構えるのが特徴。ほかにも、両つま先を内側に向け、右腰をちょっと引いたクローズの構えもそう。アドレスを見ただけで『力を逃がしたくない』意思が伝わってくる。さらに、左ひざを中央に寄せるようなバックスウィング、反対に右ひざを中央に寄せるようなダウンスウィングなど、常に内向きに力を使っているのがわかる。インパクトで叩きにいくようなアクションもなく、体を開かずクラブでボールを目標方向に向かって運ぶようなフォローを取る。どこにも無理に力を出している部分がないから軸も超安定。アプローチからドライバーまで、すべて同じ打ち方だからすべて狙った所に打てる」と解説。
「ありがとうございます」
必ず“はい!”と元気よく答えてくれる空汰くん。
「ハンカチといい、返事といい、きちんとしているね~」と感心する武市。
「関東ジュニアで優勝したから、次に狙うのは全国優勝だね。川越出身ってことは、日本ジュニアの開催地、東京ゴルフ倶楽部も、霞ヶ関カンツリー倶楽部も近くでしょ?」
「はい! 自転車でも行ける距離にあります(笑)」
全国制覇に向けても準備万端! きっと吉報が聞けるだろう、そう確信した武市であった。
週刊ゴルフダイジェスト2023年10月31日号より