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【世界基準を追いかけろ!】Vol.105「若手躍進の背景にある“球を潰す能力”とは?」

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は、ジュニアゴルファーの実力向上の要因について、黒宮コーチが話してくれた。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 17歳の馬場咲希選手の快挙や、19歳の川﨑春花選手のメジャー優勝など、若い選手の活躍が目立っていますが、ジュニアゴルファーのレベルアップの背景に何があると思いますか?

黒宮 おそらく、コーチやトレーナーといった選手のサポート態勢ができてきたことが大きいと思います。10年前まではナショナルチームでさえ、ナショナルスポーツセンター施設(※1)を使えるという程度でした。2015年にガレスさん(※2)がヘッドコーチに就任して以降は、フィジカルトレーナーなどと連携して選手を育てる組織が機能し出したわけですよね。それ以降、体とスキルとがバランスよく繋がった選手が目立ってきたと思うんです。

GD ナショナルチームの育成プログラムのノウハウが、広くジュニアゴルファーに浸透してきたということですか。

黒宮 そうですね。

GD それまではフィジカルの部分にフォーカスされていなかったということですか。

黒宮 体の部分にフォーカスされなかったのではなくて、体と技術の連携ができていなかったんだと思います。

GD それはどうしてですか。

黒宮 以前は、飛距離よりも小技重視でやってきたものが、今は完全に飛距離重視に逆転したという事情がありますよね。


X プロの世界で距離設定が伸びている影響が、ジュニアにも出ているわけですか。

黒宮 今は飛ばないと無理です。さらに飛ばすだけでなく、“ボールを潰す能力”がないと厳しい。

X 飛ぶ方向に開発されているクラブとボールで、ボールを潰してグリーン上で止まる球を打てるかが重要ということですかね。

黒宮 そうですね。ですから僕は、ジュニアの子たちに球を潰す動きの習得をやらせます。その潰せる能力がついた後にスウィングの形を作っていくというような順序の教え方をしますね。特に中学生ぐらいからは、そういう教え方をしています。

GD 具体的にどう教えているんですか?

黒宮 スウィングで考えると、球を潰すには、インパクト時に体はカバー(上体が起きないように)しながら、ヘッドの軌道はシャローに下ろして、ある程度正面衝突をして球をとらえるという作業が必要になります。これが球を潰せる打ち方につながってきます。小さいときからその感覚を身に付けておきたいということですよね。そのために、ゴルフクラブじゃないものを振らせたり、バランスディスクの上に乗せて速く振らせたりとか。あとバランスボールを投げさせるとか、そういった体の使い方から覚えてもらいます。自分の思ったところにボールを投げられないのに、クラブで球を潰すように打つのは難しい。ですからまず体を上手く使うことから始めて、そのうえで道具を持ったときでも上手く体を使えるようにします。

GD 基本的な体の使い方から覚えることが、「体と技術の連携」の第一歩なのですね。

(※1)味の素ナショナルトレーニングセンター。日本初のトップレベル競技者用トレーニング施設として設置され、JOC及びJOC加盟競技団体に所属する選手・スタッフが専用で利用する。(※2)1971年生まれ。ツアープレーヤーを経て、オーストラリアナショナルチームコーチに就任。2015年から現在まで日本ゴルフ協会のナショナルチームのヘッドコーチを務めている。スポーツ科学に基づいた指導法で、畑岡奈紗、中島啓太など世界に通用する選手を育てた

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月4日号より