「どんな場面でも“よそいきなこと”をしない」恩師が語る古江彩佳の強さの秘密
おっとりしているように見えて、驚くべき爆発力を秘めている。米国女子ツアー参戦1年目にして初勝利を挙げた古江彩佳は、そんな強さを持っている。
「トラストゴルフ・スコットランド女子オープン」最終日、首位と4打差からスタートした古江は、ノーボギーの10バーディで圧巻の「62」をマーク。大会記録となる通算21アンダーまでスコアを伸ばし、見事な逆転劇を演じてみせた。
6月以降、2桁アンダーが3試合と好調を維持してきた古江。今季参戦16試合(スコットランド女子オープンまでの米女子ツアー)を振り返ると、単日5アンダー以上は5試合に上り、米国に渡る前の国内女子ツアー(昨シーズン)で見れば、参戦32試合中2桁アンダーは7試合、単日5アンダー以上は13試合と、その爆発力の高さがうかがえる。そういえばアマチュアとしてツアー初優勝した19年の富士通レディースでも、最終日に「67」で回り、逆転優勝を果たしている。
試合中は終始笑顔で、おっとりしているように見える古江。過去のインタビューでの「苦手なものがないのが強み」という発言や、周囲も認める安定度の高さなど、一見したところ、突出したものがないオールラウンダーに感じる人も多いかもしれない。しかしその実は、恩師であり、現在も古江の母校、滝川二高でゴルフ部監督を務める角谷真吾さんが舌を巻くほどの爆発力を秘めた選手である。
「あの子はハマったらすごいですからね。あれだけ爆発できるのは、やはり高い水準ですべてが安定しているからでしょう。ショットが安定していてパーオン率がすごい。パターはもともと上手いから、入り出したら止まらない。それらが嚙み合ってゾーンに入ってしまうと、ああいうことになるんですね」と角谷さん。なかでも高校時代から、ズバ抜けたメンタルの強さは印象深かったそう。
「とにかくいつも飄々(ひょうひょう)としていて、喜怒哀楽も絶対に出さない。激しく喜ばないし、激しく落ち込むこともありません。自分の考えがブレないから、どんな場面でも“よそいきなこと”をしないんですよ。それでいて集中力も高いし、オンオフがしっかり分られるのも、あの子ならではの強さです。普段の生活で楽しむときはハチャメチャに楽しんで盛り上げるのに、ゴルフになると、パッと自分の世界に入りますからね」
物事に動じないメンタルと芯の強さ、切り替えの上手さが、噛みあったときの“爆発力”につながるのだろう。
角谷さんは、渡米前の古江親子と会って渡米の理由を聞いたことがあったそう。「なんでアメリカ行くん? と聞いたら、『自分が一番ええ状態のときに行っておきたいし、若いときに行かんとアメリカなんて無理や』と言っていましたが、そのとおりだと思いましたね。お母さんとも話しましたが、『アメリカは移動が大変で、体力が心配だけど、未知の世界なので面白いことがいっぱいありそうです』って。料理も自炊しているそうですし、お母さんがマネジメントしているのも彼女にとってプラスになっているのかもしれません。渡米後の記事を見ていても、移動してすぐに練習しているようですが、アメリカでの転戦は移動に6時間なんて日常茶飯事でしょうし、そのあたりの体力や怪我しない体の強さもあると思いますね」
父親である芳浩さんを“ゴルフの師匠”と呼び、天真爛漫な母と二人三脚で挑戦するアメリカゴルフ旅。これからも、まだまだビッグなサプライズが届きそうな予感がする。
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月23・30日合併号より
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