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【世界基準を追いかけろ!】Vol.98 “飛距離規制”で今後は技の引き出しが多い選手が有利になる!?

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は前回に引き続き、R&AとUSGAから提出された飛距離を抑制するための提案書について議論していく。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 「R&A/USGA研究トピック――関心のある分野」(※1)という報告書によると、両組織は飛距離抑制の研究や実験をしており、いずれはボールとドライバーのルールの改定がなされるようです。仮に報告書にある実験数値通りに改定がなされた場合、選手のタイプによって影響の度合いが違ってきますよね。

X ボールがディスタンス系からスピン系に開発がシフトすると思われるので、スピンコントロールの部分がポイントになってくるでしょうね。

目澤 真っすぐ遠くへ打てれば良かったものが、曲げて打つ技術も求められるようになりますよね。反発が出ないならフェースの開閉を上手く使えないといけないわけですから。

黒宮 総合的に上手い人が強くなるということになりますね。

X そうなると、タイガーが強いということでしょ。


目澤 この前タイガーが、バラタボールの時代のボールが一番曲げやすかったって言っていましたよね。バラタはアイアンショットでマットから打っても曲がりましたけど、今のボールは硬すぎて曲がらない、だから芝の上からしか打たないって。飛ばなくなれば、当然、技術的な優劣がすごく勝敗に影響してくるわけですから、そうなるとタイガーがもう一回勝つ可能性は出てくると思いますよね。

X 今のプロゴルフ界は、飛ばし屋有利、野球でいえば160キロ投げる投手がたくさん勝利数を稼げるような状況ですけど、もしあの数字通りの改定がなされたら、スピードはないけどダルビッシュみたいに何種類も変化球が投げられ
るタイプが有利な状況になるということですよ。

黒宮 アプローチ好きな人にとっては、あの“角溝”の時代のようにスピンで戻ってくると思ったら嬉しいでしょうね。30Yからバックスピンをかけられる時代がまた来たって感じで。

目澤 幹人の時代が戻ってきたって感じだよね。

GD 黒宮さん、そういうプレーヤーだったんですか。

目澤 ショートゲームがめちゃくちゃ上手かったですから。

黒宮 来年、プロテスト受けます(笑)。体を大学時代くらいの感じに戻して、角溝で30Yくらいバーンと振っても前に行かないあの感覚が戻ってきたら、自分でも戦えるチャンスが出てくるかもしれないですかね。

GD 飛ばし屋にとっては“暗黒の時代”が到来するという感じでしょうか。

黒宮 いや、そうでもない部分もあると思いますよ。振りちぎってもOBまで行かないから楽という面もあります。それに、例えば幡地隆寛プロぐらい、当たり前のように300Y飛ばしてくる選手になると、今のボールだと飛び過ぎて、ドッグレッグで突き抜けてしまうことが結構あるんですが、ボールが飛ばなくなれば、手加減しないでベストポジションに振っていけるというメリットもあると思いますね。

(※1)R&AとUSGAは2021年2月1日 に『R&A/USGA研究トピック――関心のある分野』として、用具規則の変更に向けての研究に関する文書を公表した。この中で、今後飛距離を減じる方向で、用具の仕様に関連するローカルルールと、ボールとクラブの仕様の見直しの可能性に関して言及している。主なテーマは『ボールのトータル飛距離規制』、『ドライバーのスプリング効果』、『ドライバーの慣性モーメント』

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導

X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月16日号より